なんだか、ヒロインが設定より貧しい気がしますわ。
一度知った相手の現在を見られる魔法を使って、謹慎期間中の今ヒロインであるソランジュの様子を見ているのですけれど。
なんだか、ソランジュが設定より貧しい気がしますわ。裕福な家庭ではないのはそうなんですけれど、中流家庭通り越して普通に貧乏過ぎますわ。
パン屋が悪い噂を流されて、一日に一つもパンが売れない日もありますわ。これは一大事ですわ。
「ねえ、ルーセル。貴方にも今私の魔法であのパン屋の様子見えますわよね?どう思います?」
「やっぱり、これはちょっと悪意を感じますね。パン屋の目の前で悪口を言っているこの男、誰かに頼まれてやっている気がします」
「そうですわよね。…あの人気店のパン屋の仕業かしら」
「おそらくは」
ルーセルのこの間くれたブレスレットに掛かった魔法を使って、念話をする。ルーセルから見ても、やはりこのソランジュの店の様子はおかしいらしい。
「…そんな妨害にあっているのでしたら、私が少し助け舟を出しても許されますわよね?」
ルーセルに聞けば、ルーセルも同意してくれた。
「もちろんです、義姉上。でも、具体的にはどうなさいますか?」
「そうねぇ…あの妨害にあっているパン屋のパンを買い占めようかしら」
「…たしかに、そうすればパン屋としてはかなり助かるとは思います。でも、そのパンはどうします?」
「孤児院に寄贈しますわ」
「え」
きょとんとするルーセル。その発想はなかったらしい。
「孤児院への寄贈。ノブレスオブリージュの一環として行えば、言い訳も立ちますし。孤児院の子供たちの忌憚なき評判が広まれば、自然と客足も戻りますわ」
「…なるほど。さすがは義姉上です。でも、その時には流石に義父上と義母上の許可のもと、護衛を付けて行きましょうね」
「もちろんですわ。ルーセルも来てくださるの?」
「それこそもちろんです。乗りかかった船ですから。僕もお小遣いから半分出しますよ」
「助かりますわ、ありがとう」
私がそう言えば、ルーセルは微笑む。
「義姉上のそういうところが、僕は…」
「…なにかしら?」
「…いえ。義姉上、謹慎があけたら即購入しに行きましょうね」
「ええ。少しでも助けになれたら嬉しいですわ」
「おそらくは大いに助かりますよ」
そしてしばらくして、謹慎期間が終わりましたわ。




