八歳になりましたわ!
「ミシュお嬢様!さすがです!また魔法が上手くなりましたね!」
「ふふん、当たり前ですわ!」
私、ミシュリーヌ・マチルド・プロスペールは八歳になりましたわ!完璧にこの身体を使いこなせるようになりましたのよ!
さらに!家庭教師の先生曰く〝瑠璃色の花束を君に〟の舞台となる貴族の学園の生徒レベルの教養を、魔法学と貴族としてのマナー以外は既に習得済みとお墨付きをいただきましたの!神童だと褒め称えられましたわ!…まあ、前世高校生でしたし当たり前なのですが。ちょっとしたズルをした気分ですわ。
教養はほぼオーケーをもらったので、手先が器用になるよう文字の練習やお絵かき、刺繍なども頑張りましたのよ!ちなみに何故か文字も日本語に見えますわ。中世ヨーロッパの世界観に近いとはいえ、所詮は日本の同人ゲームだからかしら?ということで、手先も器用な方ですわ!
「ミシュお嬢様はリゼットの誇りです!」
「ええ、私を崇め奉りなさい!」
「はい!」
見て!この悪役令嬢ムーブ!最高に悪役令嬢していませんこと!?私はやっぱり演技の天才ですわ!うふふ!
ちなみにさっきから私に付いて回るこの子はリゼット。私の使用人…私専属の侍女ですの。といっても、最近道端で飢えて死にかけているのを拾ってきた孤児ですわ。貧しい両親から口減らしに捨てられたとか。孤児とはいえ、人間を拾って飼うなんてまさに人を人とも思わぬ悪役令嬢ですわ!この子のおかげでさらに演技に磨きがかかりましたのよ!うふふ!
ただまあ、そんなわけでまだまだ未熟な侍女ですけれど。とはいえ私より五つも年上で、忠誠心だけはありますからすぐに仕事も覚えるでしょうね。
「ミシュお嬢様のご年齢で中級魔法をマスターする貴族のご令嬢は、そうはいません!リゼットは心からミシュお嬢様を尊敬します!」
「ふふん!その心に免じてご褒美を差し上げますわ!手を出しなさい」
「はい!」
私は素直に手を差し出すリゼットに、イチゴ味の飴玉を一つ渡す。
「これからも私を持ち上げることに励むのですわ!」
「はい、ミシュお嬢様!」
ぎゅーっと飴玉を握りしめて胸の前に寄せるリゼット。いつも私がご褒美に飴玉をあげるだけで喜ぶ、可愛い可愛い私の侍女。ああ、こんなにも侍女に崇拝される私はまさに完璧な悪役令嬢…!
ちなみにさっきからリゼットが褒めてくる魔法。私、マナーと魔法学以外は全て家庭教師の先生からオーケーをもらっていますでしょう?なので特別な用事がない限りは、マナーレッスンと魔法学の授業、手先を器用にする訓練以外には特にやることがないんですの。自主的に他の分野の教養の復習もしてはいますけどね。うっかり忘れると苦労するので。
なので私、魔法学をめちゃくちゃに頑張っていますわ。その結果、魔法学の方も同世代と比べれば…という程度ですけれど、まあ魔法学でも優秀と言われていますわ。
「…とはいえ。中級魔法までを習得済みなので、今日から上級魔法のレッスンが始まりましたけれど全然上手くいきませんでしたわ」
「そんな、この歳で中級魔法をマスターした時点でミシュお嬢様はすごいです!元気出してください!」
「…ふふ。私としたことが、弱音を吐くなんてらしくないですわね。努力あるのみですわ!リゼット、特訓に付き合いなさい!」
「はい!」
ちなみに、魔法は魔力を用いるので貴族の間では魔力の強さこそステータス。そんな中で私は、生まれ持った潜在魔力がものすごく多いのですわ!特訓してさらに魔力を伸ばし、魔法も習得すればまた完璧で最高な悪役令嬢に近付きますわ!
なお、リゼットのような平民達は生活魔法という最低限の便利な魔法さえ使えれば十分なのでリゼットを特訓に付き合わせても意味はありませんわ。でも、何かにつけて侍女を使い倒す方が悪役令嬢っぽいでしょう?私やっぱり名演技ですわ!
「ミシュ、魔法学の復習かい?お前は偉いね」
「お父様、お母様!ありがとうございます!」
「ラウル様。私達の可愛いミシュは本当に優秀な上に勤勉ですわね。私鼻が高いです。きっとラウル様に似たのね」
「ああ、マチルド。私達の愛の結晶は本当に尊い子だ。これもマチルドの愛を一身に受けたからこそだろう」
「もう。お父様もお母様も褒め過ぎですわ。照れてしまいます」
この方々が私の今世のお父様とお母様。
お父様はラウル・オダ・プロスペール。公爵位を賜っておりますの。銀髪に赤い瞳ですわ。キツいお顔立ちの美形ですわ。
お母様はマチルド・ローザ・プロスペール。もちろん公爵夫人ですわね。金髪に青の瞳のおっとりした見た目の方ですわ。
ちなみに私は完全にお父様に似ているので、銀髪に赤い瞳のキツめの顔立ちですわ。今は子供なのでまだ可愛らしさが勝ちますけれど、大人になるとかなりキツめの美人になりましてよ。美人になれるのが確定しているのはいいですわね。美貌を保つ努力は惜しむつもりはないですけれど。
それと、リゼットは緑の髪と緑の瞳ですわ。その見た目のせいで乳母と一緒にいると親子みたいですのよ。乳母との仲も良好ですから、いいのですけれど。