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謹慎処分が解かれましたわ

「義母上、そろそろ義姉上を解放してあげてください」


「ダメよ。第一王子殿下にあんなことをするなんて…」


「義姉上も、初めての王子様に浮かれてしまわれたのでしょう。少し羽目を外してしまったのも、仕方がありません」


「…うーん」


「それに、無事婚約は決まったのでしょう?問題はないはずです」


ドアの外でそんなやりとりが聞こえる。いいわ、ルーセル。その調子よ。奴隷として主人を助けるのは当然よね!


「幸い、婚約は無事に決まったけれど。今回の悪戯はやっぱり目に余るわ。ミシュはいつもあんなに良い子なのに、どうしたのかしら」


「…個人的には色々と癪ですが、義姉上はそれだけ第一王子殿下を好きになったのでしょう。多分、好きな子はいじめたいってやつです」


「…まあ。なるほど、そういうことだったのね?気付かなかったわ!」


全然そんなんじゃないけど、流れが変わった!よくやったわ、ルーセル!


「さすがはルーセルね。お姉様をよく見ているだけあるわ」


「だって、あの優しい可憐な義姉上がそんなことをする理由はそれくらいしかありません」


「それもそうよね。よかった、ミシュは第一王子殿下を好きなのね。政略結婚とはいえ、やはり愛は必要だもの」


「義母上と義父上を見ていると、つくづくそう思いますね」


「いやだ、照れるわ。ふふ、ミシュやルーセルのことだって愛しているのよ?」


お母様はお父様関連になると甘くなる。そしてルーセルの誘導に上手く乗ってくれた。これは勝った!


「でも、それならミシュに愛情の伝え方を教えてあげないとね」


「…義母上、それなら僕にお任せください」


「ルーセルに?」


「ええ、僕が存分に義姉上に愛情を伝えます。そうすれば、それを受けた義姉上も愛情の伝え方が分かると思います」


「そうねぇ…なら、お願いしようかしら」


よしよし、なんだかよくわからないけど謹慎処分は解かれそうですわ。ルーセルナイス!


「では、義姉上を解放していただけますか?」


「あと一日反省したらね」


「一日ですか」


「反省を促すためよ。ルーセルもお姉様に会いたくて寂しいとは思うけど、我慢してね」


「…はい、義母上」


ということであと一日で解放されることになりましたわ。ラッキー!













「じゃあ、今日で謹慎処分は解くけれどもう第一王子殿下に悪戯はしちゃダメよ?」


「気をつけます」


やらないとは言っていないので嘘ではない。


「愛情表現の仕方を、きちんとルーセルから教わるのよ」


「わかりましたわ、お母様」


まあ、悪役令嬢の私がそんなもの知ったところで意味がない。そもそも愛情表現の仕方くらい分かる。第一王子であるシルヴェストルを婚約者という立場でからかうのが楽しいだけである。


しかしそんなことを正直に言う訳にはいかないので、聞き分けのいい子みたいに振る舞う。


あとで隠れてからかうなり、おもちゃがダメなら言葉でからかうのも良いだろう。


「…でもね、ミシュ。恋って素敵なモノよ?お父様とお母様の間を結ぶのも恋、そして愛。お母様はお父様と一緒になれて本当に幸せ。だから、第一王子殿下へのその気持ちを忘れないで。きっと、大切な大切な宝物になるわ」


お母様はルーセルの適当に言ったことを間に受けているらしいですわ。その方が助かるからいいのですけれど、ちょろすぎてちょっとだけ心配になりますわ。


とはいえ、返事は。


「もちろんですわ、お母様。私、第一王子殿下への今の気持ちを大切にしますわ」


「いい子ね、ミシュ」


嘘ではない。シルヴェストルをからかいたいという今の気持ちを大切にするのだから。


「じゃあ、とりあえずお夕飯にしましょうか」


「はい、お母様」


さて、これから何をして楽しもう?そう思っているとルーセルに話しかけられた。


「義姉上」


「ルーセル。貴方お母様に謹慎終了の交渉をしてくれていたわよね?ありがとう」


にっこり笑って頭を撫でれば、ルーセルの顔が真っ赤になる。


「こちらこそありがとうございます…あの、謹慎終了おめでとうございます」


「ええ、本当にありがとう。ルーセルのおかげよ」


「いえ、そんな…あの、義姉上にプレゼントがあって」


「なにかしら?」


「僕の手作りの、パワーストーンのブレスレットです」


そう言って綺麗にラッピングされたプレゼントを私に貢ぐルーセル。奴隷として健気で大変結構。


「あら、ありがとう。嬉しいわ」


「えっと、実はそれには魔法がかけてあって」


「あら、どんな?」


「離れた場所にいる人と念話出来る魔法です。僕は魔法は得意なので、多分問題無く使えるはずです」


「まあ、便利。でも、どうして?」


ルーセルはちょっとだけ照れた様子で白状する。


「謹慎期間中、義姉上に会えず寂しかったので。もしまたしばらく会えないようなことが起こっても、義姉上とお話したくて…」


なんて健気で可愛い奴隷だろう。


「いい子、いい子ね。またこういう事があったら、これを使うわ。私も貴方に会えなくて寂しかったもの」


「義姉上…!」


「大好きよ、ルーセル」


「僕も義姉上が大好きです!」


「ふふ、あらあら。すっかり仲良し姉弟ね」


私達の様子を見守っていたお母様は、すごく嬉しそうにニコニコしていた。

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