人に見せられないような内容のメールを間違えて上司に送ってしまった
「加藤、さっき届いたメールなんだが⋯⋯」
ん? 部長にメールなんかしてないぞ? 何の話だ?
「あれ、送る相手間違えてるぞ」
送る相手⋯⋯? もしかして、あのメールか!?
人に見せられないような内容の、あのメールか!? あれを間違えて部長に送っちまったのか!? どうしよう⋯⋯
「あの⋯⋯」
「なんだ」
「出来れば、見なかったことに⋯⋯」
「なんで?」
なんで?
もしかして、あのメールじゃないのか?
普通あんなの間違えて送ったら見なかったことにしてほしいもんな。部長がそう思わないってことは、また別の件か? 取引先とのメールか? いやでも、さっき届いたって言ったよな。
「それにしてもお前、あんなことやってたんだなぁ。全然知らなかったわ」
やっぱアレじゃん!
「すみません⋯⋯」
どうしよう。早く逃げたい。もう仕事辞めようかな。
「いや、謝るようなことじゃないだろ。どう見ても送る相手間違えただけだったし」
優しい!
けど、見られた時点で終わりなんだよな、こっちとしては。
「で、あのメールの話なんだが⋯⋯よかったら私も混ぜてくれないか?」
えっ!?
マジで言ってんの!?
「いろいろ教えてほしいんだ」
「いや、ちょっと、その⋯⋯」
さすがにそれは⋯⋯
「頼む! 先輩としていろいろ教えてくれ!」
先輩て。
「すいません、ちょっとお腹痛いんでトイレ行ってきます」
「大丈夫か? ゆっくり行ってこいよ」
「ありがとうございます」
そのまま俺は会社を出た。
部長から掛かってくる電話を全て無視し、遠いところへ逃げた。
宛先:部長
件名:俺だよ俺、久しぶり〜!
本文:久しぶり〜! どう? 元気してる?
俺は元気だよー!
リスクなしで始められる投資があるんだけど、よかったら一緒にやらない? 俺それでバンバン儲けてんだよね〜!
ていうかいきなりごめんな! 興味なかったらスルーして!