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怒りの日 "Dies irae"

 円井悠太は中学1年生のある日までクラスの人気者だと思っていた。強いて言えば笑いを取る天才とまでは言わないけどクラスのムードメーカーだという自負はあったし、それはクラスメイトも感じていたはず。そんな栄光の日々は中学2年生の時に吹き飛んだ。


 それは事故だった。


 悠太は怒鳴った。

「お前が忘れ物するせいであの国語のおばさんが機嫌悪いんだよ」学校来なくても卒業出来んだぜ、と言うところまでは流石に自制した。

 そうやって言葉で小突き回しているうちに忘れ物くんがヒョロッとした体格なのに拳を握り締めて一歩悠太の方へ踏み出してきた。生意気だ。悠太は思わず腕を突き出して忘れ物くんを防ごうとした。それだけのはずだった。なのに忘れ物くんは後ろによろめいてそのまま倒れ込んだ。

 その先には晴香を失ってからもおかしな行動を繰り返しているオカル子こと九重天花が席に座って本を読んでいた。周りの騒動なんて我関せず。オカル子らしい無視と悠太は思っていた。

 そして机や椅子が大きな音を立てた。クラスは一瞬のうちにうるさく感じるぐらいの静けさで満たされた後に女子生徒のか細い声が響いた。オカル子の声だった。

「痛い」


 天花は窓側の壁と忘れ物くんに挟まれていた。須賀くんは大慌てで天花からすぐ離れた。

「ごめん、九重さん。怪我してない?」

 椅子から立ち上がりながら首を横に振る天花。クラス委員長の女子が駆け寄った。

「大丈夫、九重さん?」


 大慌てで謝ろうとした悠太。でも言葉を発する事が出来なかった。先を越されたせいだった。

「円井、あんた、何をしてんのよ」

 九重さんが怪我をしてないか確認するや否やクラス委員長は円井を睨みつけて怒鳴った。

「先生を呼んでくる」

そう言うと廊下近くにいた女子生徒二人が連れ立って廊下を駆け出していた。

「俺は何もしてない。須賀が勝手に転んだんだよ」

 委員長はその体からとは思えない大声で怒鳴った。

「嘘付き。私もみんなも見ていたんだから。九重さんと須賀くんに謝れっ!」

 しばらくして職員室から先生が飛んで来た。委員長は先生に涙ながらに悠太の罪を告げ激しく責めた。

「押してなんかいません。須賀くんが殴りかかってきて」

「須賀くんをいじめていたのは円井くんです。そして須賀くんが思い余って詰め寄ってそれを円井くんが突き飛ばしたんです。先生、円井くんこそ謝るべきです」

 悠太はクラスメイトからの白い目を感じた。

「面倒を起こした厄介者」認定を受賞しておめでとう、円井くんという訳だ。


 こうして円井はクラスで浮いた存在となった。委員長からは「円井ってカッコばかりで謝らない。中身がないし今や存在感もない空気くん」と言われて徹底的に嫌われた。そしてこの委員長の「空気くん」は円井に対する陰口が出る時に笑いながら言われるようになった。

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