9 飛竜戦終了? まだまだ2日目は終わらない。
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城塞都市を覆い尽くすほどの飛竜の群れ。一頭一頭がランクBの凶悪な魔物。口からは風魔法のブレスを吐き。身体を覆い尽くす硬いウロコ。
生半可な剣や弓矢では傷一つ付ける事の出来ない5メートルを超える魔物。竜種。通常なら先ず避難を考える所だ。
しかし、今回、運が良いのか悪いのか御使い様が居て、新兵器を用意して下さり戦うすべを手に入れた。
その上、冒険者ランクS級のパーティーが居て、尚且つ、王国騎士団総長まで居ると来た。出来過ぎだろう。
それにダメダメと思われていた、勇者が活躍しているだと。訳が分からん。一体何が起こっているのだ。
そんな中、苦戦を強いられているは、わが陣営だけらしい。
一番人数が居て、気心も知れた部下もいると言うのに、なんという体たらく。この戦況をどうにかする方法は無いものか。
何か考えねば敗北は必至。じり貧である。
飛竜のブレスが兵士の腕を切り飛ばす。血ふぶきを上げって転がる腕。腹をブレスにえぐられ倒れ伏す兵士。
目を覆うような、凄惨な情景が繰り広げられていた。
が、転がる腕を傷口に当て、ポーションを口に含ませると、次の瞬間光輝き、ちぎれていたはずの腕を、ぐるぐる回している兵士。腹をえぐられた兵士も、ポーションを口に含ませると何事も無かったように立ち上がり、戦線に復帰する。
訳も分からないほどの効果が有る。ポーション。
相当なスキルか技量がなければ突き刺さるはずもない飛竜に矢の攻撃が入る。昨日今日使い始めたばかりの者が攻撃してもダメージを与えられる武器。新兵器クロウスル棒(本当の名前はクロスボウガン)。
飛竜のブレスを受けても壊れない頑丈な盾。
そんな理不尽なものが有っても、押されている戦況。
追い詰められて居ると、唐突に掛けられる声。
「僕も戦いに参加しても良いかな?だめですか。」
いつの間にか横に立っていた御使い様が、まるで場違いな緊張感の無い声で話し掛けて来る。
何言ってんの、この切羽詰まった状況が見えないのか⁉って顔をしていたとしても仕方ないだろう。御使い様が悪いと思う。
助けてくれる気が有るなら、早く助けてくれよ。
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勇者にお株を奪われてしまった僕は、北門をすごすごと離れ、別の活躍の場所を求め城壁の上をさまよい歩いた。
クロさんの所へ行けば世間話に花が咲き。クロさんは戦いながら僕の話相手をしていた。余裕しゃくしゃくです。
僕の出番は無さそうですね。そこを離れた。
次はシルバーさんの所です。
相変わらず腕に当たるシルバーさんの巨乳は柔らかくて素敵です。ご馳走様。
別の戦いがしたくなって困るので。そこを離れた。
次はギランさんの所です。
ギランさんが意外と多芸だと知りました。
左手で盾を持ち人を守り。右手でボウガンを持って攻撃しています。偶にポーションで人を回復する余裕まで有ります。お陰で前線を維持できています。
ここも僕の出番は無さそうですね。そこを離れた。
やってまいりました。ガバナス第一騎士団長の所へ。
ここなら僕の出番は有りそうです。
何故なら、かなり切羽詰まった状態です。これなら僕が手を出しても怒られないよね。
「僕も戦いに参加しても良いかな?だめですか。」
と、思って声を掛けたのですが、ムッとした顔をされてしまいました。
えっ?こんな悲惨な状態でも、手出し無用なの?
自分たちだけで解決したいなんて。どんだけプライドが高いんだよ。
まずいです。活躍の場が無くて、本当に主人公の座を勇者に奪われそうです。まあ、これが現実ってやつよね。ふっ。
せっかく魔の森を伐採して(環境破壊とも言う)手に入れた丸太の出番が(僕、同様)有りません。ガ~ン!
『クスクス、マスターはいらない子ですね。残念さん。』
『やかましいは、勇者の調査は終わったのかよ。鑑定さん。』
『・・・。』
『畜生、突っ込む為だけに出てくんな。泣くぞ。』
でも、手を貸さないと本気で全滅しそうな状況です。
しょうがないので、本業の商人として手を貸しましょうか。
しょうがない、ああ、しょうがないったら。しょうがない。
投げやり。
はい、投げ遣りだけに、投げ槍を出しましょう。
まあ、要するにここが危機的状況になっているのは、ガバナスさんが攻撃に参加して無いからなんですね。と、言う訳で。
投適用の槍を出してガバナスさんに渡して、自分も一本取り出し、こうやるんだよ。と、どさくさに紛れて一番強そうな飛竜に向けて投げつけます。八つ当たり。一撃必殺。
爆散する頭、飛竜は錐揉みしながら、地響きを上げて地面に激突します。
あっ。ちょっとスッキリしました。
ガバナスさん用に投げ槍を沢山出します。自分用もチョットだけ出します。ストレス解消用です。
ニマニマした顔していると、背後に圧迫感を感じました。ビビって後ろを振り返ると、手を差し出している、ガバナスさんの部下の脳筋が、ズラリと並んで居ました。
あんた達盾役でしょ。と、言う言葉は無言の圧力に負けて僕の口からは出ませんでした。
脳筋どもが、ヒャッハーしている間、槍と矢を出すだけの簡単なお仕事です・・・・・・ぐっすん。
防御のほとんどが攻撃に回つたお陰で、瞬く間に戦況は安定し、飛竜の群れは倒されて行くのであった・・・・・・。
こいつらに防衛戦は向いてない様です。攻撃専門にした方が活躍しますね。そう悟った僕でした。攻撃は最大の防御である。
それから、小一時間ほどの間に、ほとんどの飛竜を倒す事が出来た。少しは逃げ去ったが。
終わってみれば三時間ちょいの飛竜の群れとの戦いでした。
周りでは勝どきを上げたり、抱き合って命が有る喜びをかみしめたりしています。
そんな中、山の方を睨みつけて居る者が五人。
クロさん、シルバーさん、ギランさん、勇者、僕。
僕の頭の中ではお約束の危機感知スキルがうるさく鳴っています。
飛竜の群れとの戦いは終わりです。
さあ、最終決戦の始まりです。
ボスとその取り巻きとの決戦。
?・・・・・・。
のはずが、取り巻きが居ません。
えっ?まさか、本当に蟲毒よろしく。食っちゃったの!
げっ、なんかマジっぽい。
禍々しい黒いオーラを出してるボスが、一匹こちらに向かって来ます。
30メートルは有りそうな真っ黒な飛竜です。邪竜ぽいですが。クロさんに修正されました。邪竜はこんもんじゃない。これは只の邪飛竜だとの事です。
さあ、ボス戦の始まりです。
2日目はまだまだ終わらない。
ありがとうございました。