中堅おじさん、すぐ死ぬ ~おねがいだから死なないで~
物語の中に現れる微妙な存在。
それが中堅おじさん。
主人公やヒロイン、悪役に名わき役。
そんな目立つ存在に交じって、裏で頑張る中堅おじさん。
ある時は重要キャラの側近として。
ある時は英雄キャラの配下として。
ある時は悪の組織の幹部として。
彼らは物語の中で微妙な役割を課せられ、微妙に現れて数少ないセリフをしゃべり、微妙な影響を与えて行く。
一作品に付き、一人くらいはいるかもしれない。
いてもそれほど意識しないし、いなくなっても気にならない。
そんな微妙な存在。
私は中堅おじさんが大好きだったりします。
読み手としてではなく、書き手として。
すごく便利なんですよ、中堅オジサン。
主人公ができなかったことを代わりにやってくれたり、整合性をとるために裏で奔走してくれたり、ストーリーを進める際のつなぎ役になってくれたり。
ふとしたはずみでヒントを出して主人公を助けたり、あるいは逆にお邪魔キャラになってくれる。
ここぞという時に緊張感を出したい時は、だいたい中堅おじさんを犠牲にしたりします。
自分でやっていて何ですが……酷い。
それなりに存在感はあると思う。
愛されている存在でもあると思う。
でも死んだところで困らない。
物語の終盤になると、特に。
腹に爆弾を抱えてにやりと笑い、自爆して敵に大打撃を与える。
あるいは宇宙戦艦にただ一人残って敵に特攻を仕掛ける。
もしくはラスボスの恐怖を演出するために一撃でやられる。
彼らの死にざまは実に多種多様。
かげろうのように儚いその生きざま。
彼らは私に感銘を与えると同時に、都合よく扱えるキャラクターミームとして私の中に転生した。
死んでも、死んでも、生き返る。
別の物語の別の登場人物として。
私が新しい物語を作るたびに産声を上げる彼らは、私の気まぐれによって命を落とす。
さんざん苦労して物語を成立させるために奔走したというのに、ハッピーエンドを迎えることは稀。
そんな風に彼らをぞんざいに扱う私ですが、他の方の作品で中堅おじさんをお見掛けしますと、どうしても死んでほしくないと思ってしまうのです。
なんででしょうか。
中堅おじさんの出番は少ないですが、彼らはストーリーの裏で奔走し、あらゆる手段を尽くして主人公たちを支えているはずなのです。
ストーリーの表面をなぞるだけでは分からない彼らの生きざま。
どんなに想像力を巡らせたとしても、私には彼らの人生のすべてを想像することができない。
敵として現れた時は、どんなに力を尽くしても決して敵わないと知りつつも、主人公たちの目的を阻もうと立ちふさがって儚く散っていく。
時には卑怯で計算高い小者として。時には愚直でまっすぐな戦士として。時には狡猾な裏切り者として。
死ぬことで役割を全うした彼らには、間違いなく叶えたかった願いや、守りたかったものがあるはずです。
彼らの全てを描いていたら、物語が破綻してしまう。
だからこそ他の登場人物の陰に隠れて、少ない出番で散っていくしかない。
そんな彼らが物語の最後まで生き残っている姿を見ると、なんだかとっても感慨深く思うのです。
いや……だってさ。
中堅オジサンが生き残るのって、デスゲームで生存するよりも難しくない?
もちろん、話の内容にもよるんだろうけど。
バトル系で出てくるオジサンって高確率で死ぬじゃん?
もし……自分が悪の組織の幹部とかに転生したら、どうやって生き残るか必死に考えると思う。
魔王軍の幹部とかでも同じかなぁ。勇者が来たらどうしようって死ぬほど悩むと思う。
主人公サイドの中堅オジサンだったとしても、ふとしたはずみで死ぬんじゃないかって不安になるはず。
物語に登場する中堅オジサン。
別に必ず死ぬわけじゃないけども、損な役割が多い気がする。
そんな彼らにスポットが当たったらなと思う今日この頃。
でも……さして出番のない人にスポットが当たるのって……だいたい死ぬときだよね。
出番が増えたら増えたで死亡率が跳ね上がる。
できれば目立たないまま話が終わって欲しい。
でも出番が増えないまま話が終わるのも寂しい。
そんなジレンマ。