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第27話 赤い子

 食事を終え、満腹の三人は街中を散策している。日野は先程から辺りをキョロキョロと見回し、赤みがかった髪の子供を探していた。何故だか気になってしょうがない。会ったこともなければ、話したこともない、今日初めて見た子供のことが頭から離れないのはどうしてだろうか。


「さっきから何探してるんだ。ちゃんと前見て歩け」

「あ、ごめん。グレン、あのね……」


 訝しげに見つめてくるグレンに、先程見た子供のことを話そうとした時、近くの道から突然何かが飛び出してきた。グレンとハルが日野を庇うように前に出ると、目の前には息を切らせている赤みがかった髪の子供がいた。服の中に何かを抱え、膝に片手をつき息を整えている。


「なんだ、子供か」

「この子!?」


 目の前に現れたのは、日野がずっと探していた子供だった。子供は出てきた道を振り返ると、何かに気付いたのか逃げるように走り出す。


「待って!」


 そう呼び止めるが、止まってはくれない。日野は咄嗟にその小さな後ろ姿を追いかけた。


「ショウちゃん!?」

「あの馬鹿……」


 走り去っていく日野の背中を見て、グレンが頭を抱えて溜め息をつく。しかし、先程から日野の様子がおかしいことには気が付いていた。何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回していたが、あの子供を探していたのか?


 とにかく、一人にしたらまた変な奴に絡まれかねない。グレンがハルと一緒に日野を追いかけようとした時、子供が出てきたのと同じ道から薄汚れた服を着た男が二人飛び出してきた。


「チッ、逃げ足の速いガキだ」

「兄貴、あんなの追いつけないよ」


 気弱そうな男が、兄貴と呼んだ男にもうやめようと提案するが、うるせえと一蹴されてしまった。ギャアギャアと言い合いを続けながら、二人の男は子供を追って走っていく。


「あの子、あいつらから逃げてたんだ」

「みたいだな。とにかく追うぞ」


 二人の男の姿を見て人々がヒソヒソと囁く街の中、グレンとハルも走り出した。




◆◆◆




 日野は息を切らせながら、街中を逃げ回る子供を追っている。ここ数日間の旅で多少は体力が付いたかと思っていた。しかし、少し走っただけで呼吸が荒くなり、足がもつれそうになる。


 ずっと探していた姿を見て思わず追いかけてしまったが、子供の足が速過ぎて追いつくことが出来ないでいた。普段からもっと運動をしていれば良かったと後悔しながら乱れた呼吸を整えようと立ち止まった時、一瞬、子供から目を離してしまった。


「……あれ?」


 いない。しまった、また見失った。辺りをキョロキョロと見回すが、人混みに紛れたのか、どこかに隠れたのか、その姿は見当たらなかった。しかし、何故か近くにいるような気がして、息を整え辺りを探し出す。


「なんだろ……この何かに引き寄せられる感じ……近くにいるの? それに、この感覚……どこかで……」


 ブツブツと呟きながら、ふと目についた路地を見ると、小さな後ろ姿があった。肩で大きく息をしてフラフラと歩いている。


「……いた」


 一体何故あの子が気になるのだろう。ドクドクと高鳴る心音を抑えるように左胸に手を当てると、日野はその路地へと入っていった。

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