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第14話 双子の兄弟と青い本

 - 二年前 -



「アル、その本は何?」


 ここはとある街の端にある広場。緩やかに吹く風に、深緑色の髪がサラサラと靡いていた。髪の色、目の色、顔や体格まで瓜二つ。着ている服も全く同じ双子の兄弟は、ふかふかとした青い芝生の上に、仲良く並んで座っていた。


 綺麗でしょ? と言いながら、アルバートはハロルドへ本を手渡した。深く濃い青色の表紙。真ん中には菱の形をした金色の装飾があり、その中に小ぶりの黄色い宝石が付いていた。


「なんか、目みたいで気持ち悪い」

「中身も凄いんだ。開いてみてよ」


 アルバートに促され、ハロルドは表紙を開いた。本をパラパラとめくると、見たこともない呪文のような文字がびっしりと書かれてあった。


「変なの。アルはなんて書いてあるか読めるの?」

「うん。ちょっとだけ」


 アルバートはハロルドの膝の上の本へ手を伸ばし、更にページをめくった。そして、あるページで手を止めた。


「異なる世界を行き来する者、その眼は金色に染まり、全てを破壊する力を手に入れる。呼び出し方……」

「なんか怖いね」

「うん。でも、このページしか読めないんだ」


 そう言って、アルバートは眉を八の字にして笑った。ハロルドは、ふぅんと言いながら、またパラパラとページをめくっていった。


「ね、パパとママに訊いたら分かるかな?」

「訊いてみたよ。街のおじさんやおばさんにも。でも、みんな読めないって言うんだ」

「変なの。本屋さんにあったの?」

「ううん。この前、一緒に隣街へ行ったろ? あの街で会ったお兄ちゃんに貰ったんだ」

「お兄ちゃん?」

「うん。背が高くて、とっても綺麗な人だった。髪の毛は真っ白だったけど、お隣の家のお兄ちゃんくらいの歳の人だったと思うよ。街で迷子になっちゃった時にぶつかって、お兄ちゃんがこの本を落としたんだ。宝石がキラキラしてて、綺麗だなーって思って見ていたら、もういらないからって僕にくれたんだ」

「そういえば、アル迷子になってたね。ちゃんとママと手を繋がないからだよ」


 コラっ、とハロルドがママの真似をした。アルバートは肩を竦めてへへっと笑う。じゃれあう二人の間にそよそよと柔らかい風が吹き、穏やかな時間が過ぎていった。ぽかぽかと暖かい太陽の下で、いつしか二人は眠りについていった。




 ──ドカンッ


 突然、街中に爆音が響いた。その余りにも大きな音に、アルとハルはハッと目を覚ました。驚いて辺りを見渡すと、街の中心の方から煙が立ち昇り、人々の悲鳴が聞こえてきた。建物がガラガラと崩れる音がして、遠くからでも崩壊していく街の様子が見えた。


「なに? 街が……」

「ハル、行ってみよう」


 アルバートは青い本を抱えると、ハロルドの手を握り、街の中心部へと向かって走り出した。

 一体何が起こっているのか。街の中心へ近づくにつれ、混乱して逃げ回る街の人々と次々にぶつかってしまう。


「うわっ」


 アルバートが何かにつまづいて転んでしまった。その拍子に、着ていた服が赤く染まった。鼻につく鉄のような匂い──血だ。

 恐る恐るつまづいた方を振り返ると、人が倒れていた。身体中が何かに引き裂かれ、その傷口から溢れた血は地面に広がっていた。


「ひっ……」

「アル! 大丈夫!? ……パパとママを探さなくちゃ」


 ハロルドはアルバートの手を引いて立ち上がらせた。今度は弟が兄の手を引いて、再び走り出した。

 帰ろう。二人の家へ。パパとママのところへ。

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