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第10話 一緒に旅をしたい

 ハルに手を引かれ、街中を歩く。後ろからはグレンが、そして少し離れてアイザックがついて来ていた。だが、アイザックの周りがやけに騒がしい。日野は歩きながら振り返ると、グレンに尋ねた。


「あの、あれって……」

「前見て歩けよ。またぶつかるぞ」


 そう言うと、グレンの歩幅が少し大きくなった。日野の隣に並ぶと、今度は歩幅を小さくして、速度を合わせて歩いた。


「あの見た目だろ。どこいっても人気者なんだよ」

「ザック先生、モテモテなんだよ。ね? アル」


 ハルが肩に乗せたアルに同意を求めた。クルクルと肩の上を回って、アルは返事をしたようだ。ハルは、よしよしとアルの頭を撫でる。


 後ろを歩くアイザックの周りには、代わる代わる街の人たちが話しかけに来ていた。中には患者であろう老人や若い男性もいたが、近づいて来る人間は圧倒的に女性が多かった。


 グレンがおじさんと呼んでいるので割と歳上なのだろうが、見た目に関してはそんなに歳の差を感じなかった。長身で、端正な顔立ち。風にそよぐ黒髪に、白衣姿。女性人気が高いのも頷けた。


「確かに、白衣は萌えポイントなのかもしれませんけど……」

「男にも女にも好かれて、人気者は辛いだろうな」


 グレンは振り返り、なかなかこちらに来られずに困っているアイザックを見てクククと笑った。そして少し歩いたところで、着いたぞと言って足を止めた。日野とハルも足を止めると、そこには服屋があった。


 扉を開けるとガランと音がして、店内には色とりどりの洋服やバッグが並んでいた。


「適当に選んでこいよ。あと、歩くことが多いから動きやすいのにしろよ」


 手をハラハラと振りながらそう言うと、グレンは入り口のソファーにドカッと腰掛け、欠伸をした。


「あの、歩くことが多いって……」

「あれ? お姉ちゃんグレンから聞いてないの?」


 ハルが日野を見上げたと同時に、再びガランと音がした。


「連れて行く、らしいですよ。日野さん」


 振り返ると、にっこりと笑いながら、アイザックが扉を開けて立っていた。彼は店内に入ると、いやいや疲れましたと言いながら大きく伸びをした。


「グレンやハルと一緒にこの世界を回ってみるのも面白いかもしれませんよ。日野さんが良ければ、ですが」

「一緒にいこうよ、お姉ちゃん」


 いつの間にかそんな話になっていたのか。この二人と一緒に旅を……なんだか騒がしい毎日になりそうだという事だけは想像出来た。しかし、日野は元々住んでいた土地から動いたことが殆どない。旅などしたこともないし、大丈夫なのだろうか? チラリとグレンを見やると、視線がぶつかった。


「考えとけよ、買い物が終わったら街を出るからな」

「旅に出るか、留まるか。どちらを選んでも良いですからね」


 どうするべきか。本当に大丈夫なのか。迷いもあることはあるが、次々に起こる非日常な展開に日野の胸は無意識に高鳴っていた。


 それから、ハルとアイザックが日野の服を選び出し、数着の服と、一緒に大きめのリュックも買った。彼らの好みでスカートが多くなり、動きやすいのにしろと言っただろうがとグレンが眉間にシワを寄せていたが、今回の買い物はアイザックが代金を支払ったため、それ以上は何も言わなかった。服屋を出ると、日野は一人で日用品や下着の買い物を済ませた。


 三人に待ってもらっている間、ずっと考えていた。このまま旅に出るのか、それともこの街に留まるのか。どちらを選んでもいいとアイザックは言ってくれたが、自分がこの世界に来た理由も気になっていた。


 この街の人々は、日野が元いた世界のことや青い本については知らないと答えた。しかし、旅に出れば何か情報が掴めるかもしれない。日野は店の扉を開けると、外で待っていた三人に声をかけた。


「あの、私……一緒に旅をしたいです」


 その答えに、グレンがフッと笑った。隣では、ハルがわいわいと手をあげて喜んでいる。


「そうと決まれば、ご飯でも食べて、一度病院へ帰りましょうか」


 アイザックに促され、四人は飯屋へと向かった。太陽はそろそろ真上まで昇ろうとしている。燦々と降り注ぐ光が、四人を照らしていた。

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