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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
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ドラゴン転生する

 戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。戦った。

 

 目的のため。誇りのため。欲求のため。同胞のため。怒りのため。憎しみのため。血のため。未来のため。


 目の前にあるもの。土と草からなる青い大地。清涼なる水が流れる河。雲1つない青い空。雄たけびをあげ迫りくる人間。


 歩んできた道のりにできあがったもの。屍からなる赤い大地。熱き血が荒れ狂う河。死臭と煙だたよう空。歓喜をあげ付き従う同胞。


 作り上げた光景を振り返ることなく見る。これが達成するまで止まる気はなかった。


 


 同胞を従える1匹の個体は我慢できなかった。人に。この世界に。この世界を受け入れる種族に。 


 だから、戦いを始めた。たった1匹で始めた戦い。それは共感する同胞をひきよせ、1匹から集団、集団から軍団にとなる。その結果、戦いを戦争へと昇華させた。


 元々他より高い力をもつ生物の中でも、さらに際立つ力を持った個体。1匹で戦い始めた当初から、それは戦いではなく蹂躙だった。


 強大な肉体は見た目に変わらず圧倒的強靭さを備えている。吠えれば1000里先まで大地は揺れ、その目、耳、鼻は人には感知できない世界を見据える。牙と額の角は簡単に人の胴体に風穴をあけ、爪は人を綺麗に切断する。その翼は天を自由に舞い、尾はひとなぎで複数の人を肉片にする。知性は高く言葉を理解し魔法を使える。

 

 その種の名はドラゴン。ドラゴンは数こそ他の生物より少ないが能力は他を圧倒していた。その力から生物の頂点に君臨していた。


 そう、確かに頂点だった。いや、今で生物としての強さは頂点かもしれない。だが時代が進むとその強さを凌駕する個が現れる。


 エルフ、ドワーフ、猫人、狼人、犬人、ゴブリン、オーク、人間等々。


 そこから、ドラゴンも変わっていた、人の集落で暮らすもの、人里より遠くで静かに暮らすもの。野生の本能を忘れ、争いを遠ざける生き方を選ぶものがでてきたのだ。


 この流れにより、ドラゴンは他の生物となんら違いのない存在となった。圧倒的でもない、絶対的でもない。死ぬことも殺されることもある他の生物と一緒の存在に。それは進化なのか退化なのかはわからない。


 大半のドラゴンはその流れを受け入れた。戦いにも疲れたせいのかも知れない。


 その中で誰よりも強固にこの流れに反発した個体。生まれたときにはすでにその流れとなって何百年も経ているのだが、それでもその個体はその流れを否定した。


 自分達は絶対的な力を持っている。それを生かさずどうする。誇りにせずどうする。埋もれさせてどうする。


 それが納得いかない。我慢できない。そして、もう1つ我慢できないもの。


 人間。


 他の生物より特段目立つ特性のない生物。強いてあげるなら数だけが多いくらい。ただそれだけ。だがその生物からドラゴンを凌駕する存在が現れた。それが気に入らない。


 エルフやドワーフなどはドラゴンよりも優れた部分がある、そこが極端なやつが同胞を倒せたのだろう。だが人間のどこにドラゴンを超えた部分がある?


 人に負けたドラゴンはドラゴンの中でも極端に劣った個体なんだろう。雑魚はどの生物にもいる。

その個体は人を蹂躙することでその考えを強固にした。


 人間と共存派の有志のドラゴンと戦争となり、一か月。数多のドラゴンと人の屍の上に最後の戦いが始まった。


 この戦争のはじまりの個体に対峙するもの。たった1人の人間とそれと手を取った1匹のドラゴン。

ドラゴンが戦い始めて2か月。その総時間のうち1パーセントの半分にも満たない時間で決着はついた。


 最期まで自分の考えを変えず、始まりの個体は死んだ。




「やっぱ生で見ると迫力違うなー。」


「ふふ。そうですね。」


「で、これを現実に人間が倒すんでしょ。はー。」


「ええ。今のところは突出した個人の力の部分が大きいですが・・・・・」


 人の会話が聞こえ、始まりの個体は気が付く。


 (ここは何処だ?我はいったい。)


 徐々に意識が明瞭となり、五感も周囲の状況を認知し始める。屍の重なる赤い大地ではない。自分を満足させる人間の血の匂いがしない。人の悲鳴もしない。


「お、気が付いた。」


「では始めましょうか。」


 意識がはっきりし、個体の目の前に神を演じる百次と天使の1人ミカアルが映る。


「なんだ、貴様はあああああああああ。」


 個体は吠え上がる。百次もミカアルも個体からしたらただの人間にしか見えない。その人間が気安く話しかけてくることに我慢ならなかった。すぐさま殺そうと右腕を振り上げようとする。だが全身に重圧がかかっており、全く持ち上がらない。


「なんだこれはああああああああああ。」


 自分の体が動かない。この個体には初めての経験であった。


「こうなると思い、動きは制限しています。」


 ミカアルが告げる。言葉は丁寧だがその眼は冷たいものであった。これが始まりの個体のプライドに触った。


「人間ごときが、我になにをするうううううううううう。」


 始まりの個体は全身の筋肉、魔力をフル稼働させ立ち上がろうとする。先ほどとは違い、徐々にだが体が立ち上がってる。


「流石、『眠らぬ赤龍』の異名を持つだけはありますね。並みのドラゴンなら動けぬはずなのですが。」


「これ、やばい?」


「いえいえ。安心してください。」


 動揺する百次とは異なりミカアルは至って落ち着いている。


「舐めるなあああああ。人間ごときが。」


 個体はブレスを放つため口を大きく開く。ミカアルは個体の前に移動し、右手を振ると始まりの個体の口は塞がり、床にひれ伏す。


「ね。」


 ミカアルは百次に微笑む。


「特に口元は強くしときました。これでだいぶ静かになるでしょう。」


 地に伏せる個体を見つめるミカアル。百次は気づかないでいるが、その口もとにはうっすらと蔑む笑みが浮かんでいる。個体は血走る眼で睨むもそれが精いっぱいだった。


「さて、冷静にこっちの話を聞いてくれるといいんだけど。」


 百次の言葉なぞ耳に入らず、始まりの個体は体を動かそうとあがいていた。


「まだ、無理そうだね。」


 感心した表情で始まりの個体を見る百次。


「そのようですね。」


 ミカアルが再度右手を振る。それと同時に始まりの個体は力を入れることすらできなくなった。体と心が一致しない、そのように始まりの個体は感じた。そして、この女のほうはただの人間とは違う生物なのではと考える。


「1時間ほど放置すれば精神のほうも疲れるでしょう。待っている間にお茶でもどうです。」 


「ああ。はい。」


 なにが起きたか分からなく怪訝な顔をする百次。その様子を全く気にせず、奥へと足を向けるミカアル。この間もバルララもは動かぬ体を動かそうと心を暴れさせたていた。


 2時間後、百次はバルララの前にしゃがむ。1時間では収まらなかったが2時間も心だけでも暴れ続ければさすがのバルララも精神は疲弊する。ただ、動かなくなったとはいえ、バルララはかろうじて動く目で百次をにらんでいる。そして、その威圧感は、次の瞬間にはかみ殺される、そう思わすには十分の恐怖を百次に与えた。


(今すぐ、一加の胸に飛びこみたい。あの胸に、あの体に逃げたい。)


 涼しいい顔をして臆面にも出さない、できるだけだが。


「えーと。『眠らぬ赤龍』ことバルララ。君、もう死んでいるから。」


 百次の言葉を聞いて、始まりの個体、バルララは目を見開く。


(死んだ?我が?)


 自分が負けるとも死ぬとも微塵も考えたことのないバルララ。


「で、君は信じないと思うから、これ見て。」


 この反応を予想はしていた百次は机のパソコンをいじり、画面をバルララに向ける。バルララには未知数の物体だったが、その物体から目に入るには確かに自分の姿だった。



 


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