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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
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討伐戦

表に出ないはずの黒歴史設定

Q 転生を辞退した5人の英雄の秘密とか

「全軍前進!」


「前進!」


「前進!」


 指揮官の指示より、8000人の部隊が南へ進軍。


「ふああ」


 その行軍に圧倒されているのが一加。月円王国の兵士の訓練とかは見たことはある。だが、このような部隊の進軍を直接見る機会はなかった。ましてや、一緒に行動することになるなんて、この世界に来る前のころには微塵も思いもしなかった。


 王国での修行中で数十人。以前の海上戦でも数百人。桁が1つ違う。


「私たちも行くわよ」


「あ、うん」


 馬にまたがるミニアドに促され、一加達も馬を進ませる。進ませる。進……ま


「進まない?なんで?あれ?」


 一加の馬だけが進まなかった。一応、王国で乗る練習もしていたので、乗れないわけではない。

焦りがプラスになることなく、馬は一行に動き出しそうにない。あくびまでしている。


 涙目となって、焦る一加。


「どうした?行きなさいよ」


一加から手綱を取り引っ張るエクバ。だが馬は動じない。むしろ、バカにした表情でエクバを見る


「進まないと撃つわよ」


馬に銃をつきつけるクノン。だが馬は動じない。むしろ、バカにした表情でクノンを見る。


「私が乗ったときは素直でしたが?あら?よしよし」


 エムニアが近づくと馬は表情が変わった。だらけ切っていた顔つきがキリっとし、その顔をエムニアにちかづけてる。


 エムニアが顔をなでると、二ヤついているのが誰にでもわかった。


 この馬は人を選んでいる。しかもスケベ馬。この馬の顔にイラっときたエクバとクノンは非戦闘時には珍しく息のあった同時攻撃が首に決まった。


「イチカ様。私の馬と変わりましょう」


「うん。お願い。きゃああ」


 馬は乗り主が変わると分かったとたん、一加を振り落とそうとする。


 「「このスケベ馬が!!」」


 クノンとエクバの蹴りが馬の腹を左右から挟み込んだ。2人は駄馬と罵りたいところだが、この馬のスペックは高いということは知っていたことと、あくまで一加が乗っていることから、ほんの少しだけ言葉を選んだ。この馬のスペックが高い。それだけは確かである。この馬の性格が下種であることも確かである。


「どうなるのかしら」


 出足で躓いている一加を見て不安となるミニアドであった。



 一加達と行動をともにする部隊は帝国ポセイダの兵。月円王国の港町サンパと結びつく港ウロロを領地に持つ帝国ポセイダ。ポセイダでは最近になって厄介ごとがでてきた。


 それはカルト集団の存在。

 

 『背徳』


 その集団を説明するにはこの言葉1つで十分であった。殺傷、暴食、強奪、姦淫等々その集団に属する人はそれらを隠すことなく溺れていた。


 約4か月前に生まれ、異様な速さで規模を拡大しつづけている集団。


 以前から存在する魔王を崇拝する魔主教団とも異なる新たな集団であり、その拡大スピードは比較にならないほど早く、行動的であった。


 現在、判明しているのは1人の麗しい女性がその集団の中心的存在。


 その名は『ディーナ・スーン』


 どこからか現れた彼女の言葉と美貌は1つの集落を虜にし、村を取り込み、地域を取り込み。1か月も立たないうちに500人規模の集団となる。


 帝国はその異常さを聞き、即座に対応を決める。魔主教団でないが、魔王に関する可能性を考慮した上での判断だ。


 『ディーナ・スーン』討伐。このために帝国軍約1,500人の部隊が動いた。


 500人規模とはいえ、戦力となりそうな存在がいないことと。統率された3倍の人数。これで早期解決を図った形である。


 だがこれは失敗に終わる。


 誤算は3つ

 

 その1つは魔物の存在。集団の拠点の村へ向かってた部隊は、突如魔物の部隊の奇襲を受ける。それも後方の支援部隊を狙ってきたのだ。


 部隊と判断したのは魔物が武装されたオークやオーガ、種族不明の全身鎧のもの、ゴーレムっぽいものであったこと、その中に指揮官らしき存在がいたことからだ。


 拠点周辺には魔物がいない。カルト集団の奇襲に警戒していた部隊は脳裏にはなかった魔物。それも統率された魔物の部隊に。だが、流石に鍛えられた帝国の部隊はこれを200人に満たない損害で切り抜ける。


 これは指揮官が十分に優秀だから。だけではない、敵の斥候でもあったからと指揮官は判断した。


 魔物のいない地域での魔物との遭遇。魔物部隊の統率が取れていること。奇襲をかけてきたこと。真っ先に後方支援部隊が狙われたこと。まだ、カルト集団自体と接触できてないこと。これらを考慮し、指揮官は情報を国へ伝達しつつ、進軍させた。


 魔物の出現とカルト集団。嫌な予感を心の奥底に隠しながら指揮官は進んだ。


 魔物を警戒し進んだ先に、魔物がいる理由の答えが判明。


 カルト集団の拠点とされた村のすぐ真横に砦型のダンジョンがあった。


 城壁で囲まれたそのダンジョン内には魔物が整然と並んでいる。砦型のダンジョンにいる魔物は主のもと統率とれた軍団である。個の強さより集団としての強さを持っており、歴代の勇者も国軍の力を借りて攻略している。


 高所からダンジョンを偵察していた斥候班の隊長はさらに厄介なことに気付く。それはダンジョンの中央の櫓に2人の存在。


 1人は他とは異なる種類の魔物、おそらくはダンジョン主。その主はもう1人の女性に跪いていた。


 噂で流れていた人着の女性。『ディーナ・スーン』にだ。遠目でだが、確信する。砦内の一角には魔物ではない人間がおよそ500人ほどいるのも確認している。


「これは主すら従っている?」


 魔物の軍にカルト集団が捕らわれた。そうも思ったが、人の様子に怯えはなく、ディーナは魔物にも笑顔を向けていた。


 これが誤算のもう1つ。


 隊長は戦慄した。ダンジョンの統率された魔物もそうだが、それ以上にさも当然に魔物も虜に従えているディーナの存在に。


「ダンジョンの形状は記憶したな、もど!」


「ぐあ!」


 斥候の1人の喉元に矢が突き刺さる。矢の飛んできた方向に目を向けると放ったのは1人の女性だった。この距離で気づいた?しかもこの勢力カルト集団の手の者?しかし、集団に飲み込まれた地域は平穏な集落や農村。猟師の強さではない。冒険者か?


「あれは、『閃響(せんきょう)』で、があああ!あ」


 口を射抜かれ、さらに心臓を撃たれた。やられた兵が言った『閃響』という2つ名は少しだけ聞いたことがある。帝国内で活動する冒険者。2つ名があるということは実力者。集団に取り込まれたのは彼女だけではないかも。いやないと考えるべきだ。戦うことのない者の集まりと思われた集団の危険性がよりました。


「撤退!」


 隊長は斥候班の生き残り1名とともに本隊へ走り出す。ばれたのか、ばれていたのかは不明。逃げれているのも罠なのかも知れない。本体への道案内役をさせられているのかも知れない


 それらを考慮しても、この情報を伝えるべきと隊長は判断した。もうこの部隊でも対応できない、戦力増強が必要だ。


 斥候班の2人は本体に合流することはできた。もちろんこれが罠かもとは伝えてだ。


それを聞いた指揮官の判断は撤退。反対意見もあったが、指揮官権限をもって即座に撤退を決意。


 指揮官は『閃響』ナナナと面識をもっていたことがこの判断につながる。


 決して、そのカルト集団に属する人物ではない。ダンジョンの魔物と協力する人物ではない。

そう簡単に洗脳されたりする人物でもない。


 そんな人物を服従させたディーナ・スーン。


 恐ろしい。


 指揮官は魔物以上に彼女を恐れた。半端な戦力は取り込まれると考えたほうがいい。自分たちも危うい。このカルト集団の相手は常識的な戦いではダメだ。


 撤退を始めた部隊。指揮官はどこで敵と接触するかを既に思考を進めていた。


 それは敵にいる『閃響』がいるためだ。彼女は風切り音を操作して矢を飛ばすことができる。無音はもちろん、音を響かせてこれで遠方に状況を伝えることもできるのだ。


 自分たちのことは既にばれている。



 だが、その行く手は魔物の部隊に阻まれる。それだけではない。数名だが魔物以外の存在もいた。


 その部隊を指揮していた者と隣にいる魔導士、赤いバトルアックス持ちも指揮官は見たことがある。


「『火烈(かれつ)』と『潤爆(じゅんばく)』!それに『断刻鬼(だんこくき)

 

 戦士としても指揮官としても優秀な『火烈』サバランダと、問題も多いが帝国の冒険者では随一の女魔導士『潤爆』トットヘル。有角族の大ベテラン冒険者『断刻鬼』ヌマール。他の者も冒険者なのだろう。


「突撃!1人でもいい、この状況を帝国に伝えるんだ!」

 

 魔物と帝国軍は衝突。


 トットヘルの爆破により部隊は中心から分断。そこから戦いは一方的となっていく。後方からも魔物の部隊。トットヘルを含む魔物、冒険者の魔法によって地面が隆起し、騎兵は軒並み転倒。ナナナの矢は的確に上位階級者を射殺。サバランダ、ヌマールの強さは並みの兵では相手にならない。


 帝国軍の壊滅により戦いは終結した。


 

 カルト集団と砦型ダンジョン、魔物と軍の戦いの結末。これらは全て帝国に伝わった。伝わったのだ。


 約1500名のうち生存し帝国に帰還できたのはわずか8名。約500名が捕縛、残りは指揮官を含め戦死。


 生存者の8名のうち2名は砦型ダンジョンを偵察している斥候班の隊長と生き残った1人。


 最悪を想定していた指揮官はこの2人を部隊とは別ルートで進ませていた。自分たちを囮にしても情報伝達を優先していたのである。そのため、戦いの状況についても、遠目から見ており、伝達することができた。


 他の5名は運よく戦場を切り抜くことが出来た者達。彼ら最大の戦果は冒険者1名を捕獲したことだ。これは戦死した指揮官の最期の成果でもある。


 カルト集団に属した者は元に戻れるのか?この判断基準となり、戦術に影響するであろうとの読みからだ。

 

 指揮官をはじめ戦死した者たちは命を対価に情報を残した。これは事実。

 

 皇帝は戦死者の戦果を評価し、武官は生存者を称賛した。そんな中、指揮官を無能と断じた内政官はその場で首を撥ねられた。




 1500名の部隊の壊滅。帝国の中枢はその事実を受け止め、新たな対応に動き出すが、頭を抱えることになる。下手な戦力はカルト集団に取り込まれる可能性が高い。だが、数がないとダンジョンの魔物と戦うこともできない。


 ここで皇帝の強運が光る。

 

 勇者一行が港町ウロロについたとの情報が入ったのだ。


 即座に帝都ケンカムに勇者一行を招き入れ、協力を依頼。討伐計画の話し合いへと至る。


 結果 


 一加とエムニア、ラズがダンジョン主とディーナの討伐。


 帝国 名将『ポセイダの激流』ランツエル及び軍師『無銘』サーレン率いる帝国軍8000人はダンジョンの魔物軍の掃討


 最優先事項は ディーナ・スーンの始末。主な方針はこのようになった。


 5日で計画や準備を整え、出陣となった。この早さは帝国の強みでもある。


 ポセイダ軍の特別部隊として一加は戦に参戦することとなる。歴代の勇者も通った道だが、いずれよりも早い時期である。


 一加は自分たちと違い、戦いとは程遠い世界にいた。このことを彼女の行動や思考から理解していたミニアド。


 月円王国での魔物退治から数か月。精神的に少しづつ、この世界の情勢に適応してきている。それが一加にとって幸せなのかは分からない。


 この戦いで人は今まで以上に死ぬ。こらからそういった戦いは増していく。死には慣れてもらわないといけない。


そして、今回の最大目標ディーナ・スーンの殺害。


 彼女の正体は判然としていない部分もあるが、人間。魔王の一味とも考えたが、噂と入ってきた情報から魔王とも関係ないのは確かだ。目的が魔王の軍勢とは一致していない。


 人間だとしても行動は異常。すくなくとも自分たちの理解に外にある行動だ。

 

 また、捕獲された冒険者は帝国の魔導士の魔法やラズの祈りなどを使用しても元に戻ることはなかった。欲にまみれ、倫理感のない存在。ディーナ・スーンを崇拝する存在。それらから変わることはなく、ディーナの教えのすばらしさを説く伝道師で体現者のままだった。


 そして、一加の知らぬ間に始末された。これを知っているのはミニアドとラズとエムニアの3名のみ。


 魔王軍の行動がより一層増してくる今後に備えると今のうちに決着をつけたいのは間違いではない。魔物と人間双方を取り込んで拡大していくとなると一番の脅威になる可能性もある。

 

 そうなる前に始末する。

 

 一加やエクバなどには『デイーナ・スーン』の始末が最優先目標と言っているが、実際のところは、ダンジョンの魔物もカルト集団の一員も全てを殲滅が目的である。


 ディーナ・スーンの存在とここまでについて話を聞くと、それが一番妥当とミニアドには思えた。


 勇者一行は世界の平穏のために戦っている。そのための魔王討伐である。

 平穏のためならば、この世界の住人だって殺すことだってある。非難がでるであろう殲滅にも関わることはある。


 なるべくなら、光ある道を進みたいが、そう行くとは思わない。理不尽、不条理、非道非情も必要になる。

 

 明確な殺人は一加にどのような影響を及ぼすか、それは今の段階ではわからない。だけど、乗り越えてもらわないといけない。


 すべての責は平穏になった後に負えばいい。自分が負えばいい。そのための指針だ。


 ミニアドはいつ来るかわからない平穏を想いながら、出陣前夜を迎えていた。 



このとき、百次は 大英雄の資料に連日目を通して、候補をしぼりにしぼりこんでいた。


A ロンウォー 晩年は痛風と胃潰瘍になやんでいた。

  三治    表裏問わずの世界大会ででるも 食中毒で試合欠場が多い。

  自来也  平時はジャケット着こなし、ジャズバーに足を運ぶが、似合わないと同僚に言われる。

  レドー  好物だった妻の手作りカレー(甘口)が再現できなかった。

  シオン  酔った勢いで同僚と百合本・ BL本を作り、姫様にばれ、年2回は献上していた。

  

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