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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
42/49

集い始める2

表に出ないはずの黒歴史

Q ガブリアルの好きな人界の飲み物は?

 気が付いたとき、私はベットの上だった。えーっと。確かギユが叫んだから、そうだ。それであのヤドカリもどきの脚に飛ばされて!って。戦いは?慌てて体を起こそうとすると、フラついてしまい、だれかに体を支えられた。


「無理はしないでください。」


 私を支えてくれたのは・・・・・誰?柔和な表情の女性だった。


「えっと?あなたは?それにあのヤドカリもどきは」


「落ち着いてください。私はエムニアと申します。イチカ様、ラズ様からミニアド様を見ているように頼まれました。体の具合はいかがです?痛みなどはありませんか?」


 エムニアと名乗った女性に支えてもらいながら、私はベットに横わたる。体に痛みや違和感は感じない。


「痛みはないわ。」


「そうですか。とはいえ、頭を打っているので、まだ横になっていてください。」


 ラズが頼んだってことを考えると彼女は乗り合わせた医者かこの船の船医なのだろうか?見た目でわかるのは、エクバの鼻の下は伸びきっているってこと。美人であるのは間違いない。


「さきほどの戦い自体はラズ様の指示により撤退することで難を逃れております。船の損傷はありますが、死者はおりません。イチカ様たちは先ほど警戒をといて、甲板で休憩しております。」


「撤退・・・・、そう。」


 皆無事であることはわかったので一安心。だけどラズが撤退を判断するということはなんらかの問題があったってことよね。


「詳細は分かりませんが、船を襲った大型魔物は、ダンジョンで、頭に主がいるなどを話しておりました。」


「!本当に?」


 あのヤドカリもどきが?・・・・・だとしたら、空中で叫んだ駄猫はそれを知らせるため?


「はい。その情報を得たことから、ラズ様は撤退の判断をしたと思われます。」


「なるほどねえ。」


 確かに今の状況ではダンジョン攻略はできない。相応の準備が必要ね。


「エムニアさん。船の進路は?」


「修理のために、直近の港へ向かっております。」


「そう。」


 船の行き先。ダンジョンだった魔物に対する策。海上での戦いに備えた装備品の調達。船団も必要よね。元々の予定も変更しないといけない。一度考え出すと止まらない。やるべきことが次々と浮かびあがる。


「いろいろ考えることがあると思いますが、船が着くまではまだ時間があります。ラズ様からはここでサボってしっかり休みなさいと言伝を預かっております。ですから、もう少しお休みください。私はミニアド様が目覚めたことをお伝えしてきます。」


 エムニアさんはそう言って立ち上がった。


「・・・・そうね。そうさせてもらうわ。」


 私は天井を見た後、目をつぶった。考えるのは港についてからにしましょう。




 目を瞑ったミニアド様を確認したことから、私は甲板にいるイチカ様、ラズ様のもとへ。


「ラズ様、イチカ様。ミニアド様が目覚めました。簡単にですが状況を説明し、まだ休んでもらっております。」


「そう。ありがと、エムニアさん。」


「ミニアドの様子は?」


「起き上がった際、ふらつきましたが、他に不調はないようです。」


「よかった。」


 不安でいっぱいの表情から安堵した表情へと変わるイチカ様。


「航路の方は?」


「あの1撃のせいで速度を出せないけど、夕方までにはつくみたい。」


 ラズ様とイチカ様は折れたマストを見上げる。 


 この船は帆船であり、そのうちの1本が先の戦闘で折れました。正しくは主と呼ばれる魔物の魔法攻撃によって破壊されたのです。


 私と同時に参戦したウー老師の攻撃で大型の魔物は苦痛の叫びをあげ動きを止めました。同時にラズ様が撤退の指示を出し、船は全速前進。これで大型魔物の脚の射程範囲から逃れ、このまま無事撤退かと誰もが思ったと思います。


 ですが、その矢先、水流がメインマストを破壊しました。水流の飛んできた方向に皆の視線が向くと、そこには槍を高く掲げた二足歩行の魔物。主と呼ばれた魔物の持つその槍に魔法陣が展開されると、大型魔物の脚にも魔法陣が展開され、さきほどの水流が2つ飛んできました。


「っち。逃がす気はないか。クノン!」


 ラズ様がなにかをつぶやくと、1つのマストの前に壁ができました。これでマストへの水流は防がれました。ですが、別の水流が船底へ向かっていきます。こちらが本命なのかもしれません。


 防ぎきれるかわかりませんが私は盾3つを操作し、水流の前へ。水流の大きさ自体は盾と同等なので3枚を重ねるように配置しました。


「お借りするよ。でえい!」


 上空の盾より飛び降りてきたウー老師は左手、左足で最前線の盾につかまり、右手を突き出す。右手からは大型魔物に放ったものより小さな光が放たれる。これにより水流は相殺されました。


「クノン!」


 ラズ様の叫びと同時に1発の銃声が響き渡りました。クノン様の狙撃は槍を弾き飛ばし、主の第三波は防がれました。さらに2発目の銃声が主の肩に当たりました。これで攻撃は止み、今度こそ船は撤退することができました。


 

「ミニアド殿の様態はどうじゃった?」


 ウー老師が私たちの元へ。


「不調はないようでしたが、到着まで休んでもらいました。」


「そうか。そうか。一安心じゃのう。のうイチカ殿。」


「は、はい。」


 先の戦闘ぶりからウー老師に少し委縮しているイチカ様。ラズ様は少し考え込んだ後、私たちのほうへ改まる。


「エムニアさん。老師。間も無く船は港につきます。私たちはそこであの魔物を倒す算段を立てるんですが、お二人にも、協力してほしいんです。報酬のほうも用意しますから。」




 港につき、私たちとウーじいちゃん、そしてエムニアちゃんで宿をとる。来賓2名がいることからいつもよりちょい高のお宿。そこから夕食とこれからの方針会議。


 店の端に陣って取、改めて私たちの自己紹介。それから、マイアイドル・イチカが勇者であること。魔王退治のこと。そして、あの魔物がダンジョンであり、避けて通れないこと。それらを包み隠さずにミニアドが説明した。


 ダンジョンであること話したのは、エムニアちゃんがどう考えても来界者だったから。マントの下の服装にあの棺桶じゃない、浮かぶ盾。それらが異彩を放っているのは私でもわかる。この世界に来たときのイチカみたいに何かが違うのを感じていた。


 説明を受けたウーじいちゃんの反応を見て、ミニアドが質問する。


「もしかしてですが、老師様も来界者・・・イチカやエムニアさんのように異なる世界から来たのでは?」


「・・・・・そうなるのう。」


 ウーじいちゃんが頷いた。来界者が3人もいるなんてレアなケースだね。


「そうですか。・・・・・」


 ミニアドはまた考え込む。この世界に召喚されたイチカ以外の来界者は・・・ううん、勇者であっても、元の世界に帰る手段を気にしている場合が多い。だけど勇者以外の来界者を元の世界に戻す手段はこの世界にはない。


 帰る方法を問われても力になれないことをミニアドは考えているのかもしれない。


「安心しなされ、元の世界に返してくれなんて儂は言わんよ。」


「私もこの世界で生きていくつもりです。」


 ウーじいちゃんもエムニアちゃんも達観しているなあ。


「そうですか。少し話が逸れましたが、あのダンジョンを放置しておくことはできません。あの魔物と討伐に改めて協力をお願いします。」


「お、お願いします。」


 ミニアドが改めて頭を下げる。隣で成り行きを見守っていたイチカも慌てて頭を下げる。いんやあ、かわいいねえ。


「わかりました。」


 二つ返事で答えてくれたエムニアちゃん。


「ふむ。」


 逆に少し考えこんだのはウーじいちゃん。その目線はミニアドではなくイチカだ。あのお胸じゃなく顔を見ているが、なにを考えているのか分からない。顔を見るのはわかるけど、なぜあの胸をみない?私はそっちのほうが疑問だ。

 

「老師様?」


「少しよろしいかのう?」


「報酬などですか?」


「いやいや、儂もその旅に同行してもよいかのう?」


 ウーじいちゃんの質問は以外なものだった。



「そうですか。少し話が逸れましたが、あのダンジョンを放置しておくことはできません。あの魔物と討伐に改めて協力をお願いします。」


「お、お願いします。」


 ミニアド殿が頭をさげ、それにつられてイチカ殿が頭を下げる。


 勇者 イチカ・ツクモ 

 

 この世界に召喚された勇者と呼ばれる存在。儂とおそらくエムニア殿とは異なる経緯でこの世界にきた者。名前や容姿からして日本人と思われる。たぶん儂のいた世界に似たような世界から呼ばれたのだろう。


 似た世界や平行世界とやら世界はいろいろある。とWEBマンガが好きな弟子や死後にあったあの天使たちが言っていた。


 恐らく儂が転生したのはこの子のためだろう。神を名乗った青年が儂にしてほしかったのはこの子を助けてほしかったのでは?自分では助けることをできないから、転生を利用して、あの青年の願いはそれでは?


 根拠は?と言われれば1つだけ。イチカ殿は儂が助けた弟子に似ていること。年齢も雰囲気も異なるが、顔立ちが似ている。ただそれだけ。それだけだが、神を名乗った青年やイチカ殿を見ているとそんな風に思ってしまう。


「老師様?」


 儂が考え込んでいたことから、ミニアド殿が気になったようだ。


「少しよろしいかのう?」


「報酬などですか?」


 この流れではそうなってしまうか。


「いやいや、儂もその旅に同行してもよいかのう?」


「はい?あ、いえ。」


 冷静に思えたミニアド殿は抜けた声を出した。この質問は全く想定していなかったようだ。イチカ殿やエムニア殿も目を丸くしている。


「老師。それはなんのため?」


「なにか目的があったほうがいい思ってのう。ラズ殿。儂とて多少の刺激はほしいいんじゃよ。」 


 と元の世界にいた戦い好きの彼のような理由を述べる。儂は神を名乗った青年のおかげで第二の余生を送れることになった。それなら彼の希望に答えることくらいはしたい。まあ、外れているのかもしれんが、世界が平穏になれば多少は答えたってことで勘弁してほしい。


「でも、すっごい危険な旅ですし、命を落とすかもしれない旅なんですよ。」


 巻き込みたくないとその瞳がそう言っている。儂の見た目は地面に落ちた枯れ木じゃからかもしれんが、優しい子である。あと危険と言うなら、イチカ殿たちにあってもそうであろうと思うが、そういうことは言われ言い合っておると思われるので言葉にはしない。


「この世界に来る前も修羅場は潜ってきておるからそこはもう慣れっこじゃ。それに余生も十分満喫しておってのう。イチカ殿。」


 一度死んだ経験もあるから、今更死ぬのが怖いと思わぬ。


「おっと死に場所を探しているわけではないぞ。我が流派『永闘拳』の拳は弱き者たちのためにとなっておるんじゃ。元の世界の弟子たちに指さされる行為はできんでのう。」


 違う世界で新しい余生を過ごせても変えれぬものはある。


「弟子たち・・・」


 ミニアド殿は考え込む。彼女が旅の方針を決めているようなのはこれまでの様子から判断できた。


「どうじゃの?ミニアド殿。イチカ殿。ちょっとした弾除けとか雑用要員だと思ってくれればいいんじゃよ。」


 イチカ殿の目線はミニアド殿のほうへ。イチカ殿は判断に困り、ミニアド殿はイチカ殿の困った顔に困った顔をしている。ミニアドの様子から勇者であるイチカ殿に判断してほしいんじゃろう。勇者としての判断力は決断力を鍛えているのかもしれない。大変じゃのう。


「失礼ですが、老師様の流派は剣なども教えれますか?」


「無手ほどではないが、教えれはするのう。」


 剣術馬鹿と呼ばれた弟子との稽古を思い出す。


「いいの?」


「・・・・・そんなことあると思う?」


 ?何か不都合でもあるのだろうか?エクバ殿とミニアド殿の会話にイチカ殿も心なしか恥ずかしそうにしている。


「なにか、不都合でも?」


「えっと。」


「じっちゃんは知らないと思うけど、勇者、姉さんの血筋をこの世界に残ると後の魔王が倒せなくなるんだにゃ。だからじっちゃんと姉さんがぐなあ!」


「デリカシー」


 どうやらギユ殿のしっぽをクノン殿が引っ張ったようだ。ミニアド殿とイチカ殿も先ほどとは違う意味で困った顔をしている。なるほどのう。道理で勇者一行は女性しかいないのか。


「そんなつもりはないっと言っても信じられないかのう?」


「こう言うと変かもしれませんが、老師様の人柄から心配していません。」


 ミニアド殿は改まって答えた。


「そうそう。イチカにはモモ君という帰りを待っている彼氏がいるんだから、そんな心配ないって。それに帰るまでの間はこの私が相手するから、他の男に現ぷあああああ。がっ!」


「エクバ!やめてえええ。」


 エクバ殿の口を慌てて塞ぐイチカ殿。クノン殿、ミニアド殿の鋭い一撃がエクバ殿をとらえた。


 彼氏・・・・・死後の世界・・・・・・異世界転移・・・・神を名乗った青年。彼氏はあの青年なのだろうか?勇者を召還した魔法に巻き込まれて彼は死んだと考えることができる。儂の想像だが、可能性がないと言い切れない。イチカ殿には話せないのう。


「また!話はそれましたが、私としては老師様に私たちへの指導をお願いしたいわけです。」

 

 語彙を強めてミニアド殿が話を戻す。なるほどのう。儂を指導者として招きたいのか。確かにあの船での戦いを見てても、イチカ殿はまだまだ成長途中にも達していない、基礎すらおろそかに思える。実践で鍛え上げる方針だったのだろうか?儂の基準じゃ、それすらも危ういと思う。


「儂でよければかまわんよ。」


・・・・あの青年はこれが狙いだったのかもしれない。勇者を鍛えるのは初めてだが、楽しみではある。表情には出さないようにするが。


「そうですか。ありがとうございます。あとはイチカあなたのほうは?」


 ミニアド殿がイチカ殿のほうを振り向く。最終決定権はやはりイチカ殿にあるのか。


「えっと。いろいろとおしえてく、ください。お願いします。」


 イチカ殿が再び頭を下げた。


「いやいや、こちらこそよろしくお願いしますのう。イチカ殿。」


A 1位 エムニアのいた世界の最高級ウバ 

     香りがね

  2位 イチカのいる世界のふんわりミルミル

     癒されるのはこれね

  3位 バルララのいた世界のカボチャティー

     甘いのが飲みたいときはこれ。

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