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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
36/49

熱く舞う6

 先発の2匹の豹はゆっくり中央へ歩き、真正面から対峙する。


 2匹の初手は一致し、リング中央での手四つでの力比べが始まる


「はあああああああああああああああああ。」


「っつしゃあああああああああああああああ。」


 咆哮が響く。前回の試合を見た観客は思い出す。前回と同じ始まり方であることに。そしてそれだけで興奮を隠せない。


 互角に見えた力比べだが、徐々にキューティーパンサーが押していく。


「ちっ。」


 ダーティーパンサーは切り返し、キューティーパンサーをロープへ振る。そこから自らもロープへ飛び、反動を利用し、右腕でのラリアットへ。


ドン!


 キューティーパンサーも右腕でのラリアットで迎え撃ち、その衝突でリングが揺れる。2匹は再度ロープへ飛び、ラリアットでぶつかりあう。


 ドン!ドン!ドン!


 5度目の衝突と思われたところで、ダーティーパンサーは身をかがめて、ラリアットを回避。回避運動と同時に体を捩じりながらキュ-ティーパンサーの後頭部めがけてひじ打ち。


 当たる!


 マスカレイド・レイブとディアボローニャは対照的な表情でその一撃を見守る。

 

 ガシッ!


 キューティーパンサーは振り返ることなく、その一撃を左腕で止めていた。


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 観客の大絶叫が会場を覆った。



≪力比べ、ラリアット、ひじ打ち。互角にぶつかり合う2匹の豹。会場も大興奮。この流れをどう見ますか、マシャカルさん。≫


≪互いの現状をさぐるための様子見ですね。≫


≪なるほど!では様子見の終わった今、次はこの試合の必須条件、服剥ぎに入ると。≫


≪正確にはそれも手段に入ってくるですね。≫


《?それはどういった意味なんでしょうか?≫


≪この試合は服を全て剥がれた方の負けなので相手もそれに抵抗してくる。ならどうするのが一番速いか。それは相手を反撃できない状況までもっていく。腕、足を外す、折る。それかKOする。≫


≪では試合終盤まで服剥ぎはないと?≫


≪それも違います。腕や足はともかく、胴体となるとそれはプレッシャーになる。剥がれされた部位によよっては服を押さえないといけない、見られる部分が出てくる。そこを考えてしまうのは試合へ集中できない状態にもなる。だから胴体を狙うことはありえます。≫


≪そうなるとこの戦いのポイントは?≫


≪相手の攻撃意図を見切ることになります。相手が弱らせにきているのか?それとも服を剥ぎにきているのか?その見極めですね。≫


≪なるほど。と、リング内では両陣営選手を交代。豹同士の戦いから猛牛と猛禽の戦いと移行します≫


 リング内にはドンと立つディアボローニャと背筋が曲がっているマスカレイド・レイブ。キューティーパンサーの一喝で背筋を伸ばした。


≪マスカレイド・レイブは緊張していますね≫


≪この対抗戦が初試合ですからね≫


≪私も含めどのレスラーも通る道。だけどそれを理由に目の前の猛牛。2本角の悪鬼は手加減などしない。この緊張を乗り越えれるか?新人の最初の難関ですね。≫


≪大きくはばたく鳥となるか、飛べることを知らない雛鳥として終わるか。さあ。どうなる、マスカレイド・レイブ≫




 ゆっくり2人の間隔が狭まっていく。ディアボローニャは一歩一歩、マスカレイドに歩みよっていく。


 なにもしていないのに肩の上下が大きい。呼吸も大きい。体が冷える。心臓の音が大きく聞こえる。相手が大きく見える。


 2本の角。牛のような角。あれ最近、ダンジョンでも牛の魔物と戦った。あの魔物よりも大きく見える。ううん、余計なことを考えてる場合じゃない


 赤コーナーの前でマスカレイド・レイブとディアボローニャが対峙。


 ≪さあ、両名が対峙した。先に動いたのは猛牛≫


 パアアン!!


 ディアボローニャのビンタがマスカレイド・レイブの右頬にヒット。


 ジーンと響く痛みでビンタに気づくマスカレイド・レイブ。


 (あれ?反応できなかった。)


 パアン!


 さらに反対から打たれる。


(か、体がう、うごかない。)


 今のビンタは見えていたが、極度の緊張で体が動かない。


「?なんだ?ヤル気あんのか?」


 動けない鳥に対して、猛牛、ディアボローニャも戸惑った。


 一発目のビンタのあと、やり返してくると思ったがなんの反応もない。この試合が初戦とは聞いていたが、ここまで動けないとは思っていなかった。まだうちの見習いのほうがなんらかの反応を示す。闘志も気迫も感じられない。


 ダーティパンサーを過去に破ったキューティーパンサーの相棒。未知の新人だが、対抗戦にでるからにはなにかあるはずとダーティパンサーと警戒していた。だが


ドン!


 連発のローキックが決まるも、痛がって終わり。反撃がない。防御もない。反応もワンテンポ遅い。マスカレイド・レイブの様子に観客たちも唖然としていた。


「まあ。いいか。」


 拍子抜けだったマスカレイド・レイブに呆れるも、容赦はしないディアボローニャ。今度は頭を抱ええて腹部に膝蹴りを入れる。そこから組んで多少抵抗はあったがフロントスープレックスを決める。


「あっ。くうーーーーーーーーーーーーー」


 受け身はとっているが痛みで悶絶するマスカレイド・レイブ。さらにボディスラム×3 マスカレイド・レイブはふらつきながらも立ち上がる。


(根性と体力はあると、それよりも使命感?)


 ディアボローニャは認識を改める。そして、肉体的ダメージには耐えられるなら精神的なほうは?思考を前へ進めた。


「それじゃあっと」


 ディアボローニャは右腕のアームカバーをつかみ、そのまま破く。大映像板に映るマスカレイド・レイブの布面積が92パーセントに変わる。


≪あーーーーーーーーっと。服剥ぎの犠牲者第1号はマスカレイド・レイブ。右腕のアームカバーが剥がされたあああああああああああああああ」


≪このままだと、一方的になるかもしれませんね≫


 目に涙が浮かぶマスカレイド・レイブ。ディアボローニャも試合で涙を浮かべることに戸惑うが、それも一瞬、追撃を加えようとする。が


「はい、失礼。」


 キューティーパンサーの声に反応したディアボローニャは赤コーナーへ目を向ける。


「なっ。が。」


 ディアボローニャはコーナーを越えて飛んできたドロップキックに吹き飛ばされた。


 ≪おおおっとキューティーパンサーのドロップキックが決まったあああああ。ノータッチでの攻撃は反則だぞおおお。≫


≪だけど、この試合のレフリーがレフリー。リボンの闘志側が先にレフリーの特性をうまく利用しましたね。≫


≪おっと、ダーティパンサーがキューティーパンサーに襲いかかるうううううう≫


「パンサーーーーーーーーーーーーー!」


「あなたも後!」


 キューティーパンサーがローリングソバットでダーティパンサーを蹴り飛ばした。


≪決まったーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。ダーティーパンサーはディアボローニャが覆いかぶさるーーーー。さあ、追撃のチャンスだ。が、しかし≫


 キューティーパンサーは追撃することなく、マスカレイド・レイブのほうへ振り替える。


「うん。よく耐えた。」


「ごめんなさい。私、やっぱり」


 受け身はとれたが痛みがとれない、肩で息をしている。思うように体が動かない。初めて魔物と戦ったときのようだ。


「まだ緊張する?恥ずかしい?それともアームカバー取れて、裸が浮かんじゃった?」


 無言でうなずく。どれもだ。


「そ。ならこれとどっちが恥ずかしい?」


「え!」


 マスカレイド・レイブの目の前でキューティーパンサーは自らコスチュームーム胸部を破いた。キューティーパンサーの布面積が87パーセントになる


「姉さん?」


「ラズ?」


「おお。」


「にゃああ?」


 クノンたちも目を丸くする。


≪あああっとなんだあああああ≫


「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」


 実況と客が大絶叫。ちなみにこの大映像版には瞬間でモザイクをかける技術はない。


「ええ。あぷ」


 驚いておどついたマスカレイド・レイブを抱き寄せ、胸部を隠すキューティーパンサー。ダーティーパンサーとディアボローニャも唖然として硬直している。


 この場で動じていないのはキューティーパンサーとレフリーのフランのみ


「これで、私のほうが恥ずかしい恰好ね。」


「そうだけど、だから前隠して、ああでもどうやって。」


「はい。まずは落ち着いて深呼吸。吸って吐いて、吸って吐いて。ほら吸ってはいて。そうそう。」


 さらに強く抱きしめられ、キューティパンサーに流されるまま深呼吸。数回したのち、キューティーパンサーは片腕で胸を隠し、マスカレイド・レイブを離す。目の前の状況にまた焦りだすマスカレイド・レイブ


「ど、どうするの、このままだと。」


「どうするもなにも戦うしかないでしょ。もしこれが魔物との闘いだったら、怪我をしたからって闘いを辞める?服が脱げたからって闘いを辞める?」


 質問に対してマスカレイド・レイブは首を横に振る。魔物にこっちの状況は関係ない。


「そうでしょ。あなたはそういう立場だし、その自覚や責任感もあるし、立ち向かう勇気もある。じゃあね。もし魔物との闘いで負傷で動けなくなった私や戦えない小さい子がいたらどうする?」


 顔を下に向けたマスカレイド・レイブ。目を閉じ少しだけ考える


「私が戦う。」


 決意を込めた顔になるマスカレイド・レイブ。キューティーパンサーも微笑む。


「でしょう。あなたはそれもできる。その勇気もある。だから今は戦いなさい。」


「うん。」


「それとね。あなたが戦えない状況になったら私やエクバ、クノンが助ける。いつもそうでしょ?」


 初めての魔物と戦ったときもそうだった。動けなかった私をエクバやミニアド、王国兵が助けてくれた。今だって1人で戦いぬいたことはない。仲間がいるから戦えている。


「うん。」


「あなたは1人じゃない。それを思い出して。そして、今は私が助ける。」


 1人じゃない。この言葉が脳内で響く。抱かれたおかげかもしれないが体が熱くなってきた。体の中を血が巡る。周囲が鮮明になってくる。そしてこちらに向ってくる姿に気づく。


「!しゃがんで。」


 ≪後方からダーティーパンサーとディアボローニャ強襲だあああ。これは試合、のんびり会話をしている暇はなああああああああい≫


 ダーティーパンサーはキューティーパンサーに向けてドロップキックを放ってきた。


「はああああああああああ」


 キューティーパンサーがしゃがみ、同時にマスカレイド・レイブはその場で飛び上がり、ドロップキックで迎え撃つ。


 ≪マスカレイド・レイブ大ジャーーーンプ!ドロップキックのぶつかり合いーーーーーーーー。≫

 

 ドロップキック同士のぶつかりあいはマスカレイド・レイブが打ち勝った


≪闘鳥が黒豹を弾き飛ばし、空に舞いあがうううううううううう≫


 ドロップキックの反動を利用して、コーナー上空へ舞い上がるマスカレイド・レイブ


≪おおおおっと。今度はディアボローニャのドロップキックがマスカレイド・レイブへ襲いかかるうううううううううううう≫


 落下してくるマスカレイド・レイブに向かってディアボローニャはドロップキック!落下中のため身動きできないので当たる。だれもがそう思った。


 だが、マスカレイド・レイブはコーナー上部からの三角飛びでドロップキックをかわしながら、フライングクロスチョップでディアボローニャを迎撃する。


≪なんと!コーナーを足場にしてフライングクロスチョッーーーーーーーーーーーップ。マスカレイド・レイブ覚醒-------------------≫


≪お見事!『無重力』レオマスクのようです≫


 着地したマスカレイド・レイブはそのまま赤コーナーまで下がる。そして、立ち上がるダーティパンサーたちを警戒しながら、両脚のサイハイソックスを剥ぎ取る。マスカレイド・レイブの布面積が70パーセントまで下がる。


「「「おおおお」」」」


 その動作だけでも盛り上がる男性客。


≪おおっと、今度はマスカレイド・レイブが自らの服をはぎ取る。なんだ、これは流行っているのか?

あっとソックスをキューティーパンサーに手渡す。これは?≫


「巻いて隠して。」


「ありがと。」


 サイハイソックスを受け取ったキューティパンサーはリングを出て、胸にソックスを巻きだす。


≪なんというチーム愛、ですがルールでは剥ぎ取った服の再装着は禁止されているぞ≫


≪いえ、ルールでは『相手に剥ぎ取られた服の再装着は不可』となっていますので。違反にはならないと思います。ただ数字を減らすだけのようですね。≫























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