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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
34/49

熱く舞う4

 対抗戦はパンサーマスクがこの世界での初試合を記念から毎年行われている。キャンダ最大のお祭りでもあり、隣の街や国からだけでなく、海を越えてくる者もいる。


 日程は 1日目男性レスラーチーム戦、2日目女性レスラーチーム戦、3日目男女混合チーム戦 となっており、試合以外にも物販や参加選手の握手会、サイン会もある。


 今回の対戦団体は極闘衆ごくとうしゅう  

 

 パンサーマスクから伝えられたプロレスの教えを受けた者の中からヒールが集まった団体。世界発のプロレス団体『リボンの闘士』 現所属人数最大『スリー・シャンズ』 極東の団体『ザ・サン』に次ぐ4番目に歴史ある団体で、最も試合中では荒々しい団体でもある(あくまで試合や宣伝の際でのみだよ、本当だよ。)

    

 過激な戦いは酔客や冒険者、ある種の富豪にも受けがよく、それに応じるように試合内容での賭博も行われている。噂では裏試合もあるとかないとか。 


 以前ラズが参加した対抗戦の相手でもある。


 

 初日に一加たちの試合はないが、商品の売り子を手伝い。


 売っているものは選手のブロマイドやタオル、シャツ、レスラーのフィギュアなどなどで本日限定品、対抗戦限定品などもある


 ブロマイドについてはパンサーマスクがカメラをこの世界に持ち込んでいたため、それを参考にした魔法道具がこの街にはあり、宣伝ポスターだけでなく、街中では試合の中継映像も見ることができる。


 会場では試合参加者の握手会などもあるので、試合前でも人の入りは良くにぎやかである。


「お、帰ってきたにゃ~。」


 ギユが街中での宣伝から戻ってきたミニアドに気づく。


「うーん。やっぱり、いいねえ。イチカもそう思うよね」


「うん。似合ってる」


 ミニアドをまじまじと見るミニアドとほほ笑む一加。

 

「・・・・・恥ずかしい。」


 手に看板を持ったミニアドがボソッと一言。珍しくはずがしそうにしているミニアドに対して、冷やかしの笑みへと変わるエクバと困った顔をする一加


「お、ごくろうさん。」


「・・・・・・・」


 ねぎらいの言葉をかけたバンバニーアを無言で見つめるミニアド。


「なんだい。その目と顔は?まさか、その顔で街中を歩いていたわけではないよね。どうなんだいカカナ、ランアン?」


「大丈夫です。笑顔で宣伝してました。」


「副社長に言われたとおり、投げキッスもしてました。かわいかったより妖艶でした。」


 試合欠場のため同じく宣伝に参加していたカカナとランアン。2人はチャイナドレス姿だった。そして、ミニアドもいつもの服装からチャイナドレス姿だ。ポニーテールも解いた頭にお団子髪飾りをつけ、アイシャドーもしている。


「どうして、こんなことに。ってこんな気持ちだったわね。」


 ミニアドは販売作業に戻った一加を見つめてつぶやく。



 朝食後


「勇者様がこれだけ頑張ってるんだ。あんただってなにかしてあげないとね。ほれ」


 そう言われてバンバニーアからチャイナドレスと宣伝の看板を渡される。


「これは?」


「なに看板をもって笑顔でアピールするだけさ。あんたの見た目なら野郎どもに投げキッスの1つや2つつでも十分効果はあるだろ。カカナやランアンたちもいるんだ、お手本にしな。頼んだよ。」


 意見を言う間もなく押し切られ、入れ替わりにカカナとランアンがミニアドの前へ。


「今日はよろしくお願いします。ミニアドさん。」


「早速着替えましょう。」


 手に取ったチャイナドレスを見つめるミニアド。先代勇者の知識よりこの世界に持たされたドレス。着た事はないが、見聞きしたことはある。


「なんで私なのかしら。」


 カカナは周囲を見渡してから小声で答える


「試合に出るラズ姐さんとイチカを除くと、背の高さとスタイルを考えるとミニアドさんだなっって副社長が言ってました。」


 ギユ、クノン、エクバはこのドレスの対象外。


「クノンたちには売り子を手伝ってもらうつもりなんで、ミニアドさんは宣伝のほうで協力お願いします。本来なら試合に出る私たちがいうのもなんですが。」


 丁寧にお辞儀するランアン。そう言われると反論はできないミニアド。


 着替え終わった後、対象外組にいじられ、ミニアドはため息とともに街中へ向かった。根が真面目なミニアドは、一加の努力に応じるように、街中で投げキッス、ウィンクを交えて宣伝した。


 この宣伝でチャイナドレス姿のミニアドフィギュア『幻の宣伝レディ微笑みバージョン』が販売決定(本人未承認)。その後、2か月売り上げ1位だったこと、2日目のドレス『幻の宣伝レディ投げキッスバージョン』を3か月後に販売したことなどを含め、ミニアドがそのことを知るのはだいぶ先の話である。


 夕方となり、試合開始となる。熱狂が試合会場をより一層熱くし、声援がリングをも揺らすのを一加は肌で感じ取る。


 初日の参加者にはカウラスやダンバルも参戦していた。


 カウラスは4試合目、魔法効果ロープデスマッチのシングル戦に参戦。


 ロープに触れると、

  炎で焼かれる 瞬間氷結でロープに捕まる 感電で体が痺れる ラッキーなにもおきない

  体が重くて立てない 出血 小指を角にぶつけた痛み  

 などの効果がランダムで起き、ロープをどう扱うかが鍵となる試合である。


 満足なロープワークができないと思われた中、カウラスも相手も全く気にしていない。むしろ積極的にロープを活用していた。

 1時間を超える試合はカウラスのコーナー頂上からのパワーボムで決着がついた。


 売り子作業を離れた一加たちも試合観戦しており、戦いや使命と離れた日常を楽しんだ。


 一加も生のプロレス観戦に当初は迫力に興奮したが、終盤には明日のことで不安となった。



 2日目 ついに一加の試合日


 1試合目 アイドル兼業のカミュラの新曲発表から始まる。

 特殊ルールのない試合をカミュラは額を深く切りながらも、フランケンシュタイナーからのフォールで勝利

 試合後も額にタオルを巻いて1曲歌い、リングを去った。



 2試合目 本日、最重量級同士の試合

 一定時間ごとにキャンバス表面が 氷、石、熱版、粘着素材、油などに変化するキャンバスチェンジマッチ

 40分に及ぶ試合は場外で肋骨6本、右腕が折れた状態のバビットが執念で相手を拘束し、両者リング

アウトを狙うも、逃れられて敗退。 



 3試合目 悩める青年のお目当て、ヒューンを含む大人達3対3のタッグ戦。

 金網リングインカーズマッチ

 リングに入ると身体に異常をきたし、時間とともに悪化。リングから出るとその状態の解除。金網で囲まれているため場外乱闘は不可能のため、どこまで悪化状態で戦い、どのタイミングで交代するのかが試合の見どころ。

 対戦前のくじ引きにより各自の異常は

 ヒューン・感度増大  サニアル・視力低下 レオマスク・金網恐怖症

 相手は思考力判断力低下、疲労増大、動作緩慢

となる。

 試合終盤、感度爆発したヒューンに男性陣、エクバを含む一部の女性陣は大興奮。そこから相次いで異状最大のまま戦う状況となる。

 サニアルは盲目状態のまま疲労増大の相手を組み伏せる。レオマスクは動作緩慢となった相手と金網を突き破ってリングアウト。だが思考力判断力をなくした相手がリング内で暴走、敵味方ともにKOさせ、極闘衆側の勝利となった。



 いよいよ、一加の試合の番となる。


「はあ。」


 控室から第4試合を見ていた一加はため息をつく。


 なんでプロレス試合をすることに?試合に負けたら、『リボンの闘士』側の負け越し決定。この衣装やぱり恥ずかしい。人多すぎ。あんなに怪我している。


 思考はまとまらず、ドンドン深みに堕ちていき、体が冷えていくのがわかる。


「はい。いったん考えるのはやめ。」


 ラズが肩をたたき我に返る一加。


「ラズ・・・・・・私・・・・・」


「悩んでも試合をすることは変わらない。今まで戦ってきたみたいに精一杯やればいい。」


「うん。」


 今までの戦いは全て、世界を救うためにつながる戦い。本来なら世界のほうが重いはずだが、今はこの試合のほうが重く感じる。まだ顔の晴れない一加を見て、ラズは一加の正面に移動し、一加の顔を両手ではさむ。


「今日は足をひっぱってもいい。活躍しなくてもいい。」


「でも・・・・・・」


 ここまで鍛えてくれたカカナやランアン、バンバニーアさんに申し訳ない気持ちになる。うつむきそうになる顔をラズの両手が無理やり真正面に保つ。


「ただ、最後まで胸を張って戦うこと。私たちの世界のプロレスはそれだけで、私や『リボンの闘士』の皆、対戦相手、お客のためになる。」


 胸を張って戦う。正直それだけでも厳しい。周りの目が気になる。周囲の期待がプレッシャーとなる。


「ミニアドは大勢の前に立つことになれるためって言ってたけど、イチカはもう大勢の前戦っているでしょ。カカナやランアンを助けたときにね」


 言われるとそうだが、人数が違う、10人とは比較にならない人数だ。


「人数が違うって考えたでしょ。じゃあ、イチカは全員の目を感じ取れる?カカナたちのときは10人の目を感じてた?気にしてた?」


 あのときの戦いを脳裏で思い出す。


「あのときは守ることに集中というか、精一杯だったから、気にしている余裕はなかった。」


「でしょ。あのときのイチカはそうだった。一生懸命戦っていた。なら今日も一生懸命になればいい。あなたはそれができる。」


「一生懸命・・・・・・」


  同じようなことをエクバやミニアドにも言われたことがある。ただ、足を引っ張らないように頑張っているだけなんだけど、それを2人は認めてくれていた。・・・・・・それだけならできるかも。


「って偉そうに言うけど、私だってたった3試合しかしたことないんだから。当たって砕けろよ。まあ、イチカの爆発力なら、相手が砕けるわ。イチカはそういわれて嬉しくはないか。」


 舌を伸ばすラズ。気遣っていることはわかる。だから


「ううん。ありがとう。」


 やっと少しだけ笑顔を見せた一加。自分も頑張ろうと決意を新たにする。


「ま、私もいるんだから、大船に乗ったつもりでいなよ。」


 両手を離し手に力を入れるラズ。


「うん。頼りにしている。」


 そう。ラズもいるんだ。たぶん、最初は緊張でだめだめかもしれないけど、最後まで頑張ろう。


「姐さん、イチカさん。準備いいですか。」


 部屋にカカナが入ってくる。


「いいよ。な、イチカ。」


「はい。」


 2人は立ち上がり戦闘態勢に。


「おお、イチカさんもいい表情ですね。頑張ってください。っとそうだ、これが次の試合のルールです。」


 カカナがメモ帳を2人に渡す。試合ルールは直前に知らせるようになっている。


「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ。」


 それを見て一加は驚愕し、固まる。


(無理。無理。無理。無理。)


 決意が消し飛ぶ一加。その一加を見て


(・・・・・これはダメかも。)


 流石にラズも行先不安になった。メモ帳を見ていないカカナも2人の様子を見て、ルールに目を通す。


「あ。ああ。」


 カカナも2人の表情に納得はした。





















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