表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
33/49

熱く舞う3

 翌日早速訓練が始まる。


 訓練内容は

 ランニング、腕立て、スクワット、ブリッジ、受け身、投げ、極め、関節、などなど


 剣と魔法から離れて一からの身体作り。2週間後に向けての徹底的なレスラー技術の叩き込み。


 一加の指導担当はカカナとランアン。2人の気質なのか、ミニアドになにか言われたのかは不明だが、それは厳しく、容赦はなかった。


 初日。基礎訓練だけだったが、汗だくでふらふらになりながらも一加はやりつづけ、終了時は、検索を終えて戻ってきたクノンとエクバに運ばれていた。 ラズも終了時はリングの上に横わたっていた。


 2日目 終了時、一加はやつれていた。ラズ、前日よりは終了時に余裕があった。


 3日目 一加、訓練内容増加。ラズ、スパーリング実施。


 4日目 一加、スパーリング実施。夜、放心状態の一加は膝を抱え、星を見上げていた。その両脇でエクバ、クノンが無言で付き添っていた。ラズは連続スパーリング。その夜、ラズはライクを除く対抗戦参加者と酒の飲み比べをし、打ち勝っていた。


 5日目 ダンジョン発見。それにそなえてミニアドたちは準備。それに参加できるのはないかと甘い希望を持った一加であったが訓練はいつもどおり。ラズはライクとスパーリング。終始押されっぱなしであり、一加も目を丸くする。


 6日目 ダンジョン攻略 ダンジョン主は火炎を吐くハンマーを持ったゼブラミノタウロス。


 劣勢となったゼブラミノタウロスが渾身の薙ぎ払いを放つ。その一撃を一加が剣で受け止め、気合いとともに押し返す。その隙を逃さず、クノンの銃撃が目を潰し、仲間の一斉攻撃。最後はエクバが脳天叩き割った。


 7日目 訓練後、一加のコスチュームを試着。 ボディラインが丸わかりとなるコスチュームに真っ赤な顔をする一加。そのコスチューム案には協力者エクバと書かれていた。

 

 そのまま異名・リングネームを皆で考える


 ギユ案    幸運を舞い上がらせる白鳥  ビック・ラック・スワン

 エクバ案   胸板熱き戦士        ハイニュー・レイブ

 クノン案   仮面天使          マスカレイド・ヴァルキリー

 ラズ案    白い勇気          バ・ムーク

 ミニアド案  白美鳥           ヴィヴィレア 


 カカラ、ランアンなども加わわり、飲みながらの協議結果。


   純白の闘鳥 『マスカレイド・レイブ』


 に決定。


 8日目 一加、対抗戦参加者と連続スパーリング。 凶器攻撃初体験。


「8日でここまでできるようになるなんて、才能あるなあ。副社長が目をつけるだけあるよ。」


 ランアンが一加とカミュラのスパーを見てつぶやく。まだ慣れておらず、押されっぱなしとはいえ必死で戦う一加。


「これも勇者の力?ミニアドさん」


「そうとも言えるわね。」


 カカナの質問に頷くミニアド。今日は予定のないミニアドたちも一加の訓練を覗いていた。一加はチョップの打ち合い中


「ある程度の訓練で戦える『安定性』 逆境を跳ねのける『爆発力』 短期間での圧倒的な『成長性』 これらが勇者の持つ基本的な力。ここまで戦えるのは成長性と安定性のおかげだね。」


 エクバが指折りながら勇者の力を数える。一加は後ろを取られ、しばし耐えていたが、バックドロップを喰らう。一瞬苦痛を見せるもすぐ戦いに集中した表情となる。初めてスパーリングをしたときは痛みで動きが止まっていたので、確かに成長はしている。


「ま、どれも誰もが持っている力。ただちょっと優れているだけよ。」


「「ちょっと?あれが?」」


 ミニアドの言葉が腑に落ちないランアンとカカナ。フォールされるも2カウントで脱出する一加。


「そ。ちょっとだけ。だから『勇者の力』という言葉に驕ることがないよう。努力しなきゃいけないの。」


「勇者でも努力は必要なのか。お、抑え込んだ。」


 一加がカミュラをフォール。2人の胸がぶつかりつぶれる状況となりエクバは鼻の下を伸ばす。


「世知辛いなあ。カミュラ返せるよ。」


 ランアンの言葉でカミュラはフォールを跳ね飛ばす。

 

 ミニアドは説明を省いたが勇者の力にはまだ補足がある。


 『安定性』『爆発力』『成長性』それらは個人によって差がある。一加は今までの傾向から『爆発力』が優れた勇者だとミニアドは判断している。


 それともう1つ、勇者には力がある。それは『奇跡』。

 説明のできない現象を起こす力。勇者の強い望みや意志が起こす力。絶望を覆す希望の力 


 これこそ勇者にしかない力。そう簡単に起きるものではないが、奇跡としか言えない現象を歴代の勇者も起こしている。


 ただ、指針としては奇跡を起こさず、世界を救うのが理想とミニアドは教わっている。



 9日目 一加、女性レスラートップのライクとスパーリング。体格はややライクが大きいくらいだが、一加はやられぱなしだった。


「にゃー。やっぱ、つよい~。これはもう旅の仲間にスカウトしたらどうですか~、姐さん。」


 ギユのなにも考えていない提案をミニアドは検討する。


 プロレスとはいえ、一加を終始攻め立てていたライク。他の人とのスパーリングも見たが、最重量のバビットをドロップキックで吹き飛ばす。ラズにジャイアントスイングをかける。単純な打撃で一加がぐらつく。などなど体格に見合わぬパワーを持ってもいる。


 前衛として、エクバとは違うタイプとして活躍するイメージが沸いている。


  ・・・・・アリかしら?本人の意志にもよるけど、チョウドとバンバニーアの2人にも話を通さないといけないわね。


 「私はリングの上でしか強くない。すまないがその考えは諦めてほしい。」


 「え、あ、そんな、この子の思い付きなんで気にしないでください。」 


 思考を巡らせていたミニアドにリングから降りてきたライクは先のアイディアへ回答を述べる。聞かれているとは思っていなかったミニアドは慌てて首を振る。


「あにゃー、姐さん~、振られちゃいましたね~。」


 ギユはあっけらかんとしていた。


 10日目 タッグチームとしての訓練。カカナ、ランアン、ライクに「かみ合ってない」とダメだし。


 11日目 ツープラトン訓練。ライクより「昨日よりはよくなっている」と言葉に、うれしそうな表情をしていた一加。


 12日目 タッグとして息があってきたように見える。


 13日目 対抗戦前の総仕上げ。たった13日の訓練だが、勇者の成長性は一加の身体能力をワンランクあげていた。それをミニアドは目で実感する。


 ライクも


 「初日とはもう身体、技術ともに別人。勇者の力は恐ろしい・・・いやこれは本人に失礼か。本人の努力が結んだ結果か。」


 と感想を述べていた。


 肉体面は向上した。では精神面は?


 訓練では徹底的に厳しく指導するようにカカナとランアンにお願いした。放心状態になっているときもあったが、逃げ出さず訓練はこなしている。月円王国での訓練も泣きそうな顔で最後までこなしていたから、根性や責任感はある。


 問題は人前での度胸。見られる立ち場での戦い。こればかりは試合にならないとわからない。


 試合会場を熱狂させろ、とまでは言わないが、最後まで堂々と胸を張っていてほしい。少なくともこの経験を次に生かせればいい。 


 訓練を終えて明日のコスチュームをじっと見ている一加。まだ恥ずかしいようだ。


 エクバとクノンが一加を励ましている。・・・・エクバは違うか?


 エクバは度胸をつけてもらうためにあのコスチュームにしてもらったと言っていたが、どうも信じられない。


「あとはなるようにしかならないわ。」


 肩をたたかれ振り向くミニアド。


「ラズ。」


「私もいるから安心しなさいよ。」


 今度はほっぺを突っついてくる。本来のラズはこういうこともちょくちょくしてきて、それに活発である。だから現在の恰好や落ち着いた雰囲気は過去の彼女をする人物には違和感しかないのだろう。


「そうね。頼りにしているわ。」


 頬を突っつかれながらも動じないミニアド。ラズには本当に精神的に助けらている。だから素直にこの言葉がでる。自分も気が楽にもなる。


「どうして、こんなことに。ってイチカはずっと思っているんでしょうね。」


 イチカのため。今後のため。そのためにイチカには無茶ぶりをしている。いや、今に始まったことではない。この世界に召喚したときから、イチカには世界を救えと無理難題を吹っかけている。


 それがこの世界のためとはいえだ。本来なら争いとは無縁だった生活を送ってきた子に押し付けている。


 ときおり見せる、イチカの遠くを見つめる表情。この表情が自分の胸を苦しめる。


 帰りたいと口に出さない言葉が。故郷を懐かしむ表情が。自分のしていることを重く重く感じさせる。


「そうでしょうね。自分の立場を理解している、してしまっている。そして、応じようと向き合ってる、努めている。」


 こに世界のために。そのためぬイチカは歯を食いしばってこの旅を歩んでいる。


「プロレスは想像してなかったみたいだけどね。」


「私も王国にいたときは想像してなかったわ。」


 魔物との戦い。クエスト挑戦。剣や魔法の訓練。ダンジョン攻略。魔王軍との戦い。これらは想像していた。このどこかで度胸をつける、見られる立場を認識することはあるのはわかっていたが、そのためにプロレスの試合とは思っていなかった。


 バンバニーアに乗せられたところはあるが、人前に立つ機会はそうはない。これがプラスになることを祈るしかない。


「・・・・・精神面も積み重ねていくしかないわ。一回一回、一段一段、一歩一歩。イチカには経験をつんでもらうしかない。でしょ。」


 考えを理解してくれていたラズ。


「そうね。そうよね。」


 ラズのいうとおりだ。精神面も積み重ねて、経験を積んでいくしかない。


「明日は一観客として楽しみなさい。考えてばっかりのあなたは息抜きが必要ね。美人が台無しよ。」


 今度は頭をつっついてくるラズ。少し困った表情をしたが動じないミニアド。


「そうさせてもらうわ。あと試合が終わったら、イチカにも息抜きが必要ね。」


「あら、私には?」


「あなたはいつも、適度に力を抜いたり休んだりしているでしょ。」


 ラズはここのメンバーと訓練後毎晩、楽しく酒を飲んでいる。


「正解。それも見習いなさいな。」


 ミニアドを指さし不適に笑うラズ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ