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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
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ロザリオと銃2

 勇者一行の自己紹介と一加の取り扱い注意点(儀式以外で勇者と呼ばない、様付けしない。プレッシャーを与えない。過大な期待をしない。胸板の厚い戦士と言わない。等。ミニアドが説明。エクバが一加役で、ダメな見本をギユが実演した。約3分ほど)が終わると教会側の自己紹介。


 70代シスターがこの大教会の教皇。つまりはこの宗教のトップ。

 50代神父がこの国の運営トップ。(それでもこの中では中間管理職。だから気苦労の多い顔である。)

 40代神官が武力部隊『十字連団』の騎士団長。 武力のトップで真面目、堅物。

 20代黒髪シスターが教皇補佐候補。教皇の補佐役をこの年で任されることから優秀である。


 そして、もう1人20代の銀髪シスター。ウェーブのかかったその髪は胸まで伸びている。右にある艶ぼくろ。右耳には天秤の形をしたイヤリング。赤を基調とした修道服なのだが、補佐役シスターよりだぶついている印象がある。身長はギユと同じくらいだが、スレンダーなギユとは異なる体格。服装で分かりづらいはずの体つきをすでにエクバは見抜いていた。


「私が『勇者のロザリオ』を請け負いました。ラズ・オーバと申し上げます。ゆう・・・・イチカさん。」


 丁寧にお辞儀をするラズ。柔和な表情に一加は見とれていた。ミニアドが頼れる秘書なら、ラズは優しい女教師。一加はそうイメージした。


 同じく見惚れていたのはエクバ。首をかしげていたのはギユ。


「よろしくお願いしますね。」


「・・・・・・・。あ、こちらこそお願いします。ラズさん。」


 ラズのほほえみに見惚れて、ボーッとしている一加。ミニアドが無言でひじ打ちをすることで我に返る。


「ラズでいいわよ。イチカさん。」


「あ・・・はい。私もイチカで・・・・・」


「ええ。よろしくね。イチカ。」


 少しだけ硬さをぬいた言葉に一加も安堵を覚えた。


「あにょー。すいません。ラズの姉様はもしかして、オーバのヤドリギ出身ですか?」


 いつも通り緩い感じで、手を挙げて質問するギユ。


「ええ。そういうあなたもなのね。ギユ。」


「そうで~す。にゃー。縁ってあるもんだにゃー。」


「ただ。2年前にいろいろ会ってこの国のヤドリギ自体は潰れちゃったんだけどね。」


 少し寂しそうにするラズ。


「ああ。安心して、私のツテでこの教会関係の施設に移動してもらってるだけだから。」


 ラズの笑みに、ギユも脳内に2人の姉が浮かぶ。


 その隣のミニアドも同年代かつ、エクバ、ギユより落ち着いた性格に内心、大量のうれし涙を流していた。保護者枠、相談役の存在を待望していたミニアド。このときばかりは神に大変感謝していた。


 姐さんもうれしんだろうにゃ~。


 ミニアド自身は至って平素通りにいるつもりであったが、一瞬だけ歓喜で体が震えており、それを後ろにいたギユは見逃さなかった。


「ほら、クノンもご挨拶しなさい。」


 ラズは相変わらずムスっとしている銃持ち少女の方へ振り替える。


「クノン・オーバ。」


 ボソッと答えたクノン。外見葉かわいらしいクノンの睨むような目つきに一加はビクっとし、エクバは身を挺するように一加の前へ。


「失礼でごめんなさいね。私の妹になります。」


 クノンの頭を押さえるラズ。


「そして、勇者イチカにお願いがあります。」


 柔らかい表情から真剣な表情に改まるラズ。


「私の妹、クノン・オーバをこの旅への同行を許していただきたいのです。」


 


 ラズの言葉に一加はミニアドに目を送る。全くもって想定外の提案であった。


「えーっと。どうすればいい・・・・・。」


 ミニアドも困惑した表情をしている。


「姉さんはイチカ、あなたに聞いてるんだけど。」


「は、はい。」


 クノンのキツイ言葉に一加はびくつきながら答える。そのせいか、声が甲高い。


「クノン!こちらからの突然なお願いなんだから、戸惑ってるんでしょう。」


「・・・・・・・。」


 ラズの言葉にクノンも口を閉ざす。


「妹が申し訳ありません。」


「・・・・ラズは私やエクバのように役目持ちだから、この旅は宿命です。死ぬことも考えに入れての旅になります。この危険な旅に妹さんが同行する理由はありませんが。」


「じゃあ。なんで役目持ちではない猫は一緒にいるんだよ。勇者のペット?」


 クノンはギユを見る。


「にゃ、わた・・・・なんでもないでーしゅ。」


 反論するつもりが、クノンのきっつい睨みにギユは縮こまりながら、エクバの後ろにいる一加の後ろへ

隠れる。


「たまよ・・・・・コホン。」


 非情にはなれないが、囮、捨て駒、弾除け、とかげのしっぽきり、等の考え自体は脳裏からは離れていないミニアド。


「え。今・・・・・弾除けって言おうとした?」


「ギユは死ぬことになってもお宝やお金を集めたい命知らずのバカです。それと私たちよりは斥候の技術を持っています。」 


 ギユを無視して話を勧めるミニアド。ギユの問題点は諦めている。ギユの斥候としての力は認めている。


 だがギユはその言葉に気付かず、後ろで騒ぎ立てるので、空気を読んだエクバが抑え込んでいる。ギユはペット発言について否定もないことについても騒ぎわてていた。一加はギユ対エクバ、ミニアド対クノンをハラハラしながら見ている。


「それに一加が必要とした存在だからです。互いに死ぬことも受け入れて旅に出ています。」


 クノンをまっすぐ見据えるミニアド。一加が思うであろうことは全て伝えたつもりであり、一加もうんうんと頷いている。その一加の行動が気に入らないのか、クノンは一加を目に捉える。


「・・・・・あなたの意見を聞きたいんだけど。」


「えーっと。その、ミニアドの言ったとおりで、この旅は危険で、私も皆の命を守りきれる自信なくて・・・・・。それでもギユはその私を勇者としてじゃなくて、只の人として見てくれて。・・・・・」


 クノンの迫力に押し負け、一加はもう泣きそうである。最後の勇気をふりしぼり質問する。ミニアドの後ろからだが。


「あの逆にクノンはなんで一緒にいきゅたいの?」


 噛んだ。


 顔が真っ赤になる。

 

 魔王退治なんて関わらないほうが絶対に安全だ。一加はそう思う。自分が勇者ではなかったら、絶対に行くことはない。


「・・・・・・唯一の家族を守るのに理由がいるのかよ。」


「・・・・そうね。」


 クノンの言葉に一加は顔を俯かせて頷く。今までで一番重い言葉に騒ぎ立てていたギユも静まりかえる。


「・・・・ラズは、いいの?」


 ミニアドはラズを見る。死なせたくない人がいるから自分も危険な道を進む。死なせたくないから安全な場所にいてほしい。どっちも間違っているとは言えない。


「イチカたちに会う前まで、何度も説得はしたんですけどね。」

 

 諦めを含んだ笑みのラズ。


「それに・・・・・・」


「・・・・・ダメって言っても結局着いてきそうね。性格的にも。」


 ミニアドがクノンを見て呆れた表情になる。


「ええ。」


 ミニアドとラズはお互いに静かにほほ笑んだ。


「ラズ。確認します。死ぬ覚悟と死ぬ姉を見る覚悟はありますか?私たちの旅は一呼吸の間に、隣の誰かが死ぬ旅。誰かが死んだことを認識しても、次の瞬間には違うことを考える旅。死んでも止まることのできない旅。イチカのために死ねって言われる旅。イチカのために自分を姉を犠牲にしろと言われる旅。あなたの姉を守りたいという思いと現実が一致しない旅。それでも行きますか。」


 真剣な表情となったミニアドは、考えうる旅の内容を告げる。今告げたことがないとは言い切れない旅である。これから先必ず起きることである。ミニアドはそう考えて旅を進めている。


「お互いに覚悟はできてます。」


 聞かれた訳でないが、答えるラズ。


「ある。だけど、そうさせない。」


 ライフルをミニアドに突き立てるクノンの目は真っ直ぐ力強かった。


「イチカ。あとはあなたが決断しなさい。」


 ミニアドは一加のほうへ振り替える。


「断るならはっきり断る。その際はいかなる手段を持ってもクノン・オーバは行かせない。」


 そして、今度はクノンのほうを見る。断った際はとことん冷血冷酷冷徹でいく。その決心を伝えるその目にクノンも背筋に冷や汗を感じた。


 このチームのリーダーは一加。ミニアドがこの旅を始める前から言い続けていることである。


 実際の旅の計画などはミニアドが考えており、一加のために意見や情報を出したりするが、最終決定権は一加にある。


 これからも仲間が増えて、意見が分かれるかもしれない。現在、具体案を出しているミニアドがいなくなるかもしれない。


 そんな状況を考えて、優柔不断気味(異世界、魔王退治という、重い役目のせいでもあるだろうが)な一加には決断力をつけてもらわない。


 ミニアドに見つめられる一加も泣きそうな顔から真剣な顔つきへ。ミニアドの意図は分かっている。クノンの参入は自分が決めないといけない。


 

 このころ、百次は1000人の中から100人を選定しつつ、ラファアルからバニーガール衣装につて熱く、熱く語られていた。


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