転生も金次第2.5
「ははっ。いい顔。いい顔。」
1人でモニターを見ている女性の高笑いが室内に響き渡る。室内にモニターは10台、大型デスクにパソコン。
「やっほー。私だよ~。」
ノックとともにお気楽な声が響く。
「どうぞ~。入って。入って~。」
女性が返事とともに、ドアを開けて入ってきたのは紫色のバニーガール。
「入るよ~ん。」
「やあ。お疲れさーん。」
バニーガール衣装のことを気にすることなく対応する女性。バニーガールのラファアルは女性の前に立ち、女性と目を合わせる。
「「どうだった。オークション?」」
2人が息ぴったしに互いを指さす。
「「最高だった。」」
そして、2人は笑いあう。
「いやー。借金6000億ってのは正直。予想の上だったなあ。すっごいね~、本当の金持ちって。」
「その後の、負債6000億の事実を知った顔も良かったね~。」
「うん。うん。」
「レルキア様は金で買うやり方はしないし、オークション形式ってのも初めてだったけど、いいアイディアだよ。」
「いや~どうも。褒められるってうれしいねえ。」
頭をかいて素直に喜ぶ女性。
「あれ?また、悩んでいるの?百次は?」
「そうそう。百次君もいい顔だったよ。」
女性が見てたパソコンの画像に百次が写っていた。椅子に座り、悩んでいる表情の百次。それを見る女性の表情は愉悦で満ちていた。
「百次君の仕事は100人選んで終わりだけど、これくらい悩んでいるなら条件としては合格でしょう。」
「うん。うん。聖女のときのアイディアもよかったけど、今回も十分だよ。おっと、私はもういくよ。これからも頑張ってね。舞奈」
「ありがとう、ラファアル。私は今、労働の喜びを感じてるから、問題ないよ。」
黒色ストレート、気怠そうな顔つき、白い肌、スレンダー
黒色パーカ、青色短パン姿の女性。
彼女の名は 水池舞奈
レキルアの管理する第5世界の住人だった女性 享年19歳
彼女も百次と同じく転生を目指すもの。
転生条件
100の選定条件の作成
条件は百次、転生者への苦悩、試練、困難、不条理があるもの。
この部屋は生前の彼女の住んでたアパートを模した1室。彼女の事務所兼自宅であるが、百次の部屋の倍は広い。
舞奈は百次が行う選定の条件を制作している。百次本人に、転生者に試練となる条件を。
条件内容は基本的には彼女の思い付きであるが、レキルアから方針を指定される場合もある。
百次が最初に選定した条件について、舞奈はレキルアから、これからやること理解しやすい条件で作成するように指定されていた。
結果、舞奈が考えたのは
条件NO.1 100人の中から1人選ぶ。
世界、種族、男女、年齢、性格、主義、主張、仕事、生き方、死に方に関係なく100人を一斉に集め、百次は1人1人を直接見て、話して選ぶこと。下は1歳の赤ちゃん、上は1200歳のエルフまでいる状況で百次は知ることとなった。
自分が選ばなかった人はどういう末路を送るのか。
1歳だろうと、1200歳だろうと、善人だろうと、会社社長だろうと、犯罪者だろうと、消えて終わり。
泣け叫ぼうと、命ごいをしようと、ごますりをしようと、襲い掛かろうと、達観してようと消えて終わり。
これを後99回繰り返す。
だがこれを行わないと転生もできない。自分の転生を望み、他者を振るいにかける、このことに百次は苦しむことになる。
そんな条件を作成した舞奈。彼女は百次と異なり苦しむことはなかった。
選定の状況をパソコン越しで見ている舞奈(あくまで選定を行う空間だけである。百次のプライベートまでは見ていない)。無論、百次はそのことを知らない。
舞奈は百次の悩む姿を見ると心躍った。転生候補者の見苦しい様を笑った。生前感じたことのなかった生きてる実感を感じていた。
今はウリアルの消された対象者、ミカアルにオイタをした猫人の末路、いい人ぶった辞退組の無様さ、借金の実態を知った転生者の顔、この条件の選定に立ち会った百次の挙動すべてを脳内で再現し、味わっていた。
『おおおおおい。』
「ひゃ。びっくり~。」
舞奈は百次の絶叫で現実に戻される。パソコン内の百次はパソコンの前で理解できない挙動をとっていた。
百次は一加のストーキングをしていたんだろう。
舞奈は百次と一加の関係を知っている、一加の映っているモニターに目を向ける。
「あらら~。一加ちゃんも大変だねえ。」
一加の状況に舞奈は口元が緩んだ。




