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転生者選定NO.  作者: 鈴明明書房
21/49

転生も金次第

 大企業のトップが亡くなりました。トップの親族が新たにトップに就きました。経営不振倒産しました。


 誰もが聞いたことのある話よね。


 この場合、なにが原因で大企業は倒産したのか。人は誹謗中傷を口にしながら、原因を特定していく。


 トップが優秀すぎたのか。新たなトップには荷が重たかったのか。新体制が上手くいかなかったのか。この状況を想定した引継ぎがなかったのか。etc.etc.


 だけどね、生きている人には知りえない原因が1つあるのよ。


 っと。ちょうど、この原因が分かる機会が訪れたわ。


 え?私は誰かって?


 説明する必要はないんだけど・・・・ああ、運の良い方ね。レキルア様に使える四大天使筆頭、ガブリアルよ。これで失礼するわね。




「ほらほら。静粛に静粛に。少しでも騒ぎ立てれば、速攻死ぬことになるよ。」


 低めのテンションの声が空間に響き渡る。服装と言葉の雰囲気が一致していない。一致しているのは言葉の重さと空気の重さ。


 そう。緑色バニガール(18禁に近い)の姿をしたウリアルから出ている威圧感とその口から出た言葉は一致している。この威圧感はこの場の人々の声を失わすには問題なかった。


「自分は死んだはずだ。って思っていると思うけど、そのとおりだから。ここは死後の世界。」


 百次の前にいる100人の死者。いきなり見知らぬ場所に見知らぬ隣人。騒ぎ立てるなっと言っても無理な状況である。


 百次にとって大人数が一斉に選定するのは一番最初のとき以来である。


「うるせえ。」

「なに言ってんだ。あいつ。」

「ここから出せええ。」


 死後の世界と聞いて、騒ぎ立てる人物がでるのはいつものことだが、この人数がいれば波紋のように周囲に伝達し騒々しさが増す。百次はだいぶ慣れたこの光景をぼけーっと見ている。


「おーい。話を聞けよー。」


「お前に聞いてねえ。」

「なにが目的だ。」

「うるせえ。」


 状況に混乱し騒ぎ立てた原点のもとへウリアルの斧が命中。その人物たちはこの場から消えていった。この状況に悲鳴が響く。が


「もう一度言うけど、騒ぎ立てると速攻に死ぬことになるよ。」


 ウリアルの重い一言にピシャっとこの場は静まりかえる。


「はーい、はーい。これから行われること説明するよー。ここにいる人の命運を分ける説明だよー。説明は1回だけだから。聞き逃しても誰も助けないよー。ちゃんと聞いてねえ。」


 紫色バニーガールのラファアルがマイクを持った右手を振る。


「これから、皆様にオークションに参加してもらいます。」


 赤色バニーガールのミカアルの言葉に場は静かにざわめいた。言葉だけではないその大きな山の揺れに目がいった男達もいる。百次も目の端で捉えていた。


「景品は1つ。異世界転生の権利。死んだあなたたちの中から1名だけ、自我と記憶を持って異世界での新な人生を歩むことになります。」


 黒色バニーガールのガブリアルが淡々と説明していく。ミカアルや一加より小さいが揺れる山を目の端でとらえながら、百次はミカアルの説明に耳を傾ける。


 


 レキルアに従う天使4人がそろって百次のサポートに入るのは、大人数を同時に選定するときのみであり、その回数は少ない。


 「オークションにはバニーガール!」


 と叫んだラファアルのごり押しにより衣装がバニーガールとなったこの選定。百次はその2つの接点が思いつかないが、鼻先数センチメートルまで顔を寄せられたため、押し負けたのだ。


 衣装のきわどさに心揺られたわけではな・・・・・・・い。ラファアルに押し負けた。あの熱意に押し切られた。


 ウキウキでバニーガール抵抗なく衣装を着替えたラファアル。ニコニコとしながら着替えたミカアル。

淡々と着替えたウリアル。着替えたあとも眉間にしわがよっていたガブリアル。


 ガブリアルの冷たい視線に耐えがたく、百次はラファアルの押しの強さを話したが、信を得られることはなかった。





「・・・・・となります。」


「転生については分かったねえ。さてここからが本題。オークションと言っても死んだ自分たちに死んだ金があるのか?って思ってるよねえ?」


 ミカアルが転生について説明をし、ラファアルの言葉に対象者たちは同意を示す言葉を吐く。


「この場にいるあんたらは各界有数の金持ち。あんたがたが一生、それこそ、ここに来るまで築き上げた資産を消費してもらう。ひひっ。」


 ウリアルの言葉に対象者たちは騒めきたつ。


「家族や、引き継がれた会社に残った資産。それを総動員して権利を買い取ってもらうよー。この選定の条件は『転生を金で買える者』。転生のために残した、残ったものを犠牲にできる人物。」


 今日一の笑顔で、狂気が見える笑顔でラファアルは両手を掲げる。


「使った資産が消えるけではありません。会社なら経営が少し悪化して、使用された分の資産が減るわけです。周りからみたら自然とこれは仕方ないと思うように減っていきます。」


「なーに。搾り取る相手が家族や元の部下になるだけだよ。」


 ミカアルの柔らかい声の後、ウリアルのトーンがより低く聞こえる。そのためウリアルの言葉の邪悪さが増す。


 親の脛かじりじゃなく、子の脛かじりみたいなもんか。しかも死んだあとだから、ゾンビに脛をかじられるている状況。かじるだけで済まないよなあ。そのままウィルスとか呪いとが感染してゆくゆくはゾンビになりそう。百次はそう考えながら、目の前のゾン・・・対象者を見ていた。


「私たちは運命を決めることはできませんが、運を操作することはできます。」


 ガブリアルは淡々と説明しているが、これが神や天使の力の一端。



 


 天使たちの説明を聞いて目つきが変わる対象者。

 

 チャンスが恵んできたと考える者。残された者を犠牲にするその言葉に悩む者。いまだ眉唾なものと考えている者。ミカアルの山、ガブリアルのくびれ、ウリアルの腰つき、ラファアルの美脚を凝視している者。他の対象者をチラ見する者、じっと睨む者。


「さて、まずはこの段階で参加の意志を決断してもらいます。」


 ガブリアルの言葉が戸惑う対象者。まだまだ不明点があるのに、既に選定が始まっている。もっと説明があると思った対象者たち。だが目の前いるのは丁寧に説明をしてくれる人ではない。選定ができればいいだけの天使たちである。そんなことを知っている人物は百次だけだが。


「よーく考えてと言いたいところだけどー、時間がないからー。すぐ決断してねー。」


「おやおや。なんか戸惑っているねえ。大丈夫かよ。ひひっ。」


「ここにいるのは仮でもなく各界で莫大な資産を築き上げた人たち。その決断力が死んでなくなるとは思いませんが。」


 急かすラファアル。貶しているウリアル。ほめるようで貶しているミカアル。


「やるぜ。」「やります。」「早く進めろ。」


 3人の言葉に火が付いた対象者たち。


「さっさとしろ。この、のろまど、がああ。」


 火が炎となった1人はウリアルの斧で消えた。


「やる気はあるのはいいけど、騒ぎすぎるとこうなるのは忘れんなよー。」


 対象者は息をのみ、落ち着きを取り戻す。


「では参加する方は紫色のバニーガールの前に。辞退の方は赤色のバニーガールのもとへ。それぞれ移動してください。」


 元気いっぱい手を振るラファアルと胸の前で小さく手を振るミカアル。


 対象者100名中、参加者72名 辞退者20名、それ以前にリタイア8名


「だあああああああ。」


 1人の猫人の男がウリアルによって吹き飛ばされた。


「ダ・メ・だ・よ~。バニーガールへのお・さ・わ・り・は。っと。」


 飛ばされた猫人は移動する際、ミカアルのお尻をしっぽで触っていた。明らかに偶然ではない動きをウリアルが見逃さない。百次もパソコンで確かめたが、確かに故意の動きと表情だった。よくミカアルが我慢したもの・・・・できてないな。


「が。」


 ウリアルは吹き飛ばされ倒れこんだ猫人のつま先を斧で切り落とす。


「あ。」


 ウリアルは吹き飛ばされ倒れこんだ猫人の足首を斧で切り落とす。


「あ。」


 ウリアルは吹き飛ばされ倒れこんだ猫人の膝を斧で切り落とす。


「おいたはダメよ。」


「ひい。すいません。すいません。つい。あああああ。ああ、あ、あ、あああ。」


 斧が徐々に上半身に迫りくる状況で、にっこりほほ笑んでいるミカアルはゆっくりゆっくりと猫人の心臓に剣を突き刺す。その気になればすぐに魂を消し去れるその剣で。微笑んでいるが醸し出す空気はマイナス。


「あああああ・・・・・・・・。」


 猫人の姿は消え去った。場が凍り付く。


「あらあら。こまったわねえ。」


 普段のゆったりとした表情に戻るミカアル。


「はーい。悪い子はこうなっちゃうから気をつけてねー。」


 空気を換えようとラファアルが手を振る。


 対象者100名中、参加者71名、辞退者20名、それ以前にリタイア9名。 



「みなさんは本当によろしいのですか?」


 ミカアルのぎま・・・・・慈愛に満ちたに瞳が辞退者を見つめる。


「息子に負担は掛けられんよ。」「社員にも家族がいるし。」「そこまでして生きたいとは・・・」


 対象者の中で善良の部類に入る人たち。物語ならこういう人たちが選ばれるのかもしれない。だがここは現実で、人々の思う神はいない。


「未練はないのう。」「満足している。」「次を思う人生はわしの生き方に反する。」


 こちらは悟ったり、満足している人たち。かっけえー。自分も次はこうゆう生き方ができるだろうか?それとも現時点で次の人生を求めている自分には無理なのだろうか?百次は尊敬の念を胸に秘め見ていた。


「そ、そうだね。」「あ、ああ。俺は参加者みたいに我欲だけで行きたくはない。」「そうだ。そうだ。」


 そんな中、その場にいることに違和感がある対象者。どこか言葉もぎこちない。


「そうですか。では皆さんを本来行くべきところへ送り出します。」


「なっ・・・・・。」「ちょっと待って待って。」「そうだ。そうだ。」


 ミカアルの言葉に噛みついてきたのは違和感のある対象者たち。その違和感組はそろいもそろって焦りをみせていた。


「・・・・なにか?」


「なにか?じゃないだろ。普通こういうときは俺らの中から選ぶんじゃあねえのか?」

「俺たちは、向こうの強欲のやつらとは違う。」

「そうだ。そうだ。」


 良心、満足感から辞退した対象者たちとは異なり、打算、計算で辞退していた違和感組は命の危機に本音を暴露する。


 「あなたがたの言う普通の意味がわかりませんね。」


 ミカアルは困った表情をして首を傾ける。・・・嘘だ。あの口元はわかっている。


「家族を社員を犠牲にすることはできない、この条件が人の良心に反する。それが善良な人。転生するべきは我欲まみれの醜悪な人ではなく・・・・・」


 ガブリアルが参加者を蔑む目で見る。


「自分たちのような善良な人であるべき。と言いたいのね」


「ああ。」「善行が報われる。それがあるべき世界だ。」「そうだ。そうだ。」 


 ガブリアルは違和感組に微笑む。自分たちの意図を理解してくれた天使に違和感組は安堵の表情を浮かべる。自分たちへの正当な評価が


「ですが。今回の条件は『転生を金で買える者』。故に転生できるチャンスを掴んでいるのは参加する意志をもった彼ら。辞退を選んだあなたたちではありません。それなのに騒ぎたてる、あなたたちは見るに堪ええません。」


 ガブリアルは違和感組を見下す。


「ひひっ。打算、計算も無意味、無意味。あんたら、フィクションの見すぎだよ~。」


 ウリアルは下卑た笑みを浮かべる。


「も~。ちゃんと話は聞いてねえって、私は言ったのに~。」


 ラファルが頬をプンプン膨らませる。


「そういうことになるので、こちらの方には退席していただきます。」


 ミカアルが両腕をひろげると、光が辞退者を包む。


「ちょっ、なら。そっちに変える。」「俺もだ。まだ死ぬ気はない。どけっ。」「そうだ。そうだ。」


 自分が終わると直感した違和感組が光から逃れようと走り出す。


「もう遅いよ。決断したんだから。」


 その前ににっこり笑顔のウリアル。その細い手に握られる背丈と同じ大きさの斧の刃が光る。


「うわああああ。」「ひいい。」「ああ。」


 凶悪な悪魔、もとい凶悪な天使が行先に仁王立ちされたことにより、先頭の男が転び、他の違和感組も巻き込まれ転んだ。


「どけっ。」「天使がそんなことするのかよ。」「そ、そうだ。そうだ。」


 恐怖に顔を引きつかせる違和感組


「そんなことするのも天使。」


 喜々とした笑顔のウリアルは斧を振り回し違和感組を消し去る。


「さ、次いってみよ~。」


 一仕事を終え、ウリアルがすっきりした表情で、この選定作業を先に進めた。










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