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「もういい」
僕は陽子に言った。
自分でも少し、声が震えてるのが分かった。
陽子は頷いて、キーボードを叩き始めた。
エデンを内部から、少しずつ破壊するウィルスを忍び込ませているのだと思う。
「オッケー。帰ろう」
陽子が端末とノートパソコンを切り離す。
僕たちはエデンの施設を後にして、隠れ家へと戻った。
隠れ家に着いた僕たちは、お互いにシャワーを浴びて、リラックスできる格好に着替えた。
2人でソファーに座る。
僕は帰り道からずっと、一言も喋らなかった。
エデンに「役立たず」の烙印を押されたのが、重く心に、のしかかってた。
自分の存在そのものを否定された気がした。
「セティくん」
陽子が言った。
真面目な顔をしてる。
「エデンがセティくんを『無価値』だって言ってたけど、私は全然、そうは思わない」
「………」
「セティくんは優しくて、良い人だよ。あなたと知り合えて、本当に良かったと思ってる。もしも、セティくんが居なかったら、毎日がきっと、つまんない。私はあなたが好きよ」
陽子の言葉に、僕は自然と涙が出てきた。
僕はポケットからスマホを取り出した。
エデンに追放された日から、今日まで持ち続けてたスマホだ。
僕とエデンの最後の繋がり。
僕は陽子に、スマホを差し出した。
「あげるよ」
陽子の眉が、ピクッと動いた。
「いいの?」
「分解したがってただろ?」
「サンキュー、セティくん!!」
陽子が抱きついてきた。
陽子の柔らかい頬が、僕の頬とくっつく。
すごく良い匂いがした。
「あと」
「何?」
「ずっと前に『陽子』は大昔の人の名前から選んだって言ってただろ?」
「そうよ。昔は、親が子供の名前を付けてたの。私は自分で付けたけど」
「僕にも付けて欲しい」
「え?」
「エデンが僕を要らないなら、僕もエデンの付けた名前なんて要らない」
陽子が頬を離して、僕の顔を間近で見つめた。
「良いアイディアだわ」
陽子が、ニコッと笑った。
それから、僕たちは大昔の、いろんな名前をたくさん調べた。
そして。
「私は『裕人』が良いと思うわ」
「裕人…いいね。気に入った」
「じゃあ、今日からあなたは裕人よ」
「うん」
「ねえ」
「何?」
「好きよ、裕人」
「僕も君が好きだ、陽子」
その日が、僕の新しい誕生日になった。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
大感謝でございます。
面白くなったと思います。←手前味噌(笑)




