#6
彼女の硝子の心にピキッと音を立てて皹が入り、次第に大きくなっていく――。
それと同時にゼウスとルイーゼの言い争いはまだ続いていた。
「……は……離し……なさいよ……」
「離すものか!」
彼は彼女の首をさらに締める。
「…………」
「ははは……父様も母様もルイーゼのことは今でも好きだと思うよ? しかし、俺の天秤は好きから嫌いに傾いたがな!」
「…………」
「よって、貴様は最低……いや、最悪な妹だ! まぁ、リルからすると姉ではあるが!」
「きゃっ!」
ゼウスはルイーゼの首から両手を離し、彼女を軽く突き飛ばした。
ルイーゼはようやく気道が確保され、呼吸を整えようとしている時、彼はリルの方に視線を向け、いつも彼女に見せている穏やかな笑みを作り、「リル、僕は恐くないからなー」と近づこうとしている。
しかし、今のリルにとってはゼウスのその笑みを見ることが恐怖にすぎず、後退りをしようとした。
「けほっ……ならば……お兄様はわたくしと出来損ない、どちらがお好きですの?」
呼吸が落ち着いたルイーゼは彼にこう問いかける。
「いい子的な答えを言わせていただくと、二人とも好きさ。でも、俺の本心はルイーゼよりリルの方が確実に好きだ」
「あなたはわたくしではなく、リルの方が溺愛するくらい可愛いからでしょう!?」
「ああ。それは言えているな」
彼は先ほどの穏やかな笑みの欠片はなく、彼女を見下すような冷笑を浮かべていた。
ゼウスはルイーゼの首ではなく、今度は胸ぐらを掴み、殴りかけようとする。
リルはこの光景とやり取りを見ていられず、勇気を振り絞って「……止めてください……」と目に涙を浮かべながら彼らに言った。
それを聞いた二人は「え?」「何?」と周囲を見回し、視線を彼女に向ける。
「止めてください……! わたしはお父様やお母様、ゼウスお兄様に可愛がられていて、ルイーゼお姉様はたとえ、わたしのことを憎くて嫌っていたとしてもたった一人のお姉様です……!」
「「……リル……」」
彼女はゼウスとルイーゼに自分の言葉で必死で訴えると、リルは泣きながらその部屋から速やかに姿を消すのであった。
2017/12/03 本投稿