#4
ルイーゼは自ら家族の輪から離れ、静かに自室に戻る。
部屋はすでに薄暗くなっていたので、彼女は電気をつけた。
ルイーゼはそこに置いてある全身鏡の前に立ち、映った今の自分の姿を見ていた。
「わたくしはもういい子ではいられませんわ……」
ルイーゼの小さな両手は力強く握られ、両脇でぷるぷると震わせており、その振動が全身に移る。
彼女はフィンとイリア、ゼウス、使用人達に愛されている実の妹であるリルに強く嫉妬心を強めているのだ。
「わたくしはお父様やお母様、ゼウスお兄様を奪ったリルのことが憎い……憎くて仕方がありませんわ!」
ルイーゼは彼女のことを殺してしまいたいほど「憎い」と思っている。
その時、彼女は今まで演じてきた「公爵令嬢」から冷酷非情な「悪役令嬢」になってしまおうかと――。
「リルは施設や娼館とかに行かせて……いえ、わたくしの手によって殺めてもしまってもいいかもしれませんね。最終的には家族は今まで通り。お父様やお母様、ゼウスお兄様、わたくしが大切にしているものはすべてわたくしのものですわ!」
鏡に映っている今の彼女は悪どい笑みを浮かべながら、今現在のルイーゼの思っていることを感情のまま口にし、高笑いをしている姿だ。
彼女はイリアのお腹から生まれた頃は可愛いと感じていたリルだったが、徐々に成長していく彼女を見る度に憎き者だと感じてしまう――。
「リルは我がオルガント家には「出来損ない」であり、「いらない子」でもある……よって、わたくしにとっては彼女は邪魔者なのよ! それを綺麗に始末しなければ、わたくしの気が済みませんわ!」
ルイーゼはリルがある程度の年齢に達した時、今まで我慢を積み重ねてきた嫉妬心を一気に彼女にぶつけようと決意した。
そして、オルガント家の関係とリルの人生の歯車が狂い始める瞬間を告げるカウントダウンが始まろうとしている――。
2017/11/28 本投稿