閑話 あなたの名前、教えて
クロウはリスカとリルがいる部屋に向かう。
彼女らは互いに打ち解けており、同性同士の会話を楽しんでいるようだ。
そのような状況ではあるが、彼はリルに用事があるため、仕方なく扉を叩く。
「リスカ、いるか?」
「はい。首領どうしたんですか?」
「リルに話があるんだが……」
「少々お待ちを……」
リスカがリルを呼び出すと、ぴょこんと彼女が出てきた。
「どうしたのですか?」
「リル、ちょっと話があるんだが……」
「なんでしょう?」
「実はリル……私の名を言うのを忘れてしまって……」
「首領、ずっとリルちゃんと一緒にいたのに、名前を言い忘れるって……」
「名乗ろうとした時にバイデンがしゃしゃり出てきやがったからタイミングを逃しただけだ!」
「へぇー……そのタイミングでバイデンの車が到着して、ここにリルちゃんと一緒に戻ってきたということですね」
「そ、その通りだ……」
「わたしはあなたの名前が知りたいです! 今すぐにも教えていただきたいです!」
リルはまっすぐクロウを見る。
彼女のきらきらした純粋な視線からは「早く知りたい!」と訴えかけているようだった。
「わ、私の名はクロウ。本名で通り名ではない」
「クロウさん……格好よいお名前ですね」
「そ、そうか……」
「はい。とても」
「そういえば、いつもあたしたちは首領って呼んでいるから、なかなか本名で呼ぶ機会がないですよね」
「リスカ、ご名答……」
彼は照れくさそうに名乗る。
しかし、リスカやバイデンといった幹部や構成員からは本名で呼ばれることは滅多にない。
そのため、クロウのことは「首領」と呼ばれることが多く、彼の名前すら知らないという構成員も少なくないのだ。
「お名前を教えていただき、ありがとうございます。クロウさん!」
「いいえ。「リル」という名前も、す……素敵な名前だそ……」
「ありがとうございます!」
「失礼する。今日はゆっくり休め」
「はい!」
クロウはリスカの部屋を出ると、任務から戻ってきた構成員が「お疲れ様です!」と声をかけられる。
彼らは彼の表情を見て引いていた。
「……ぼ、首領……な、何かいいことでもあったんですか……?」
「そう見えるか?」
「ええ……とっても……」
「……嬉しそうに見えますよ……とても……」
クロウはリルを引き取ることになってからかなり機嫌よくなっている。
しかし、今の彼の表情はかなり硬く、ぎこちないため、構成員から分からない不思議な表情だった。
2026/02/23 本投稿




