#24
見晴らしのよい暗い夜道をバイデンは車を走らせている。
かつては軽快な音楽が流れ、賑やかだった街は人影は愚か、店舗の照明が落とされているところが多い。
「今、何処にいるんだ? あのロリコンは?」
クロウに聞かれていたら確実に蹴落とされそうな言葉を口にしつつ、バイデンは彼らを見逃さぬよう、徐行運転していく――
◇◆◇
その頃、リルは落ち着いたのか「くしゅんっ!」とくしゃみをした。
クロウはそれに気づき、驚きを隠せずにいる。
「だ、大丈夫か? 落ち着いたか?」
「……はい……」
「ところで、君の名は?」
「わ、わたしですか?」
「他に誰がいる?」
リルはきょとんとした表情で周囲を見回すが、通行人は誰もいない。
街灯のあかりが二人をそっと照らしているだけ。
「本当だ。誰もいないです」
「だろ?」
「す、すみません! わたしはリルです。リル・オルガントと申します」
「緊張しなくていい。私まで緊張してしまう……まぁ、見ず知らずの人間に話しかけられたら緊張するのは仕方ないよな。私は――」
クロウが名乗ろうとした時、車のエンジン音が止まり、バイデンが降りてきた。
「おやおや。こんなところでどうしたんですか?」
「バイデン、お前って奴は……」
「なかなか戻られないので、心配して迎えにきたんですよー」
「一応、電話したのだが……」
「言われてみればそうでしたねぇ……って、オルガント家のお嬢様ではありませんか!? 何故、こんなところに!?」
「わたしのこと、ご存知なんですか?」
「ええ、存じておりますよ。ところで、首領は可愛い少女と一緒にいるんですかぁ?」
「こ、これにはいろいろと事情があってな……」
上司をからかう部下を見ていたリルは「……この人は……」と小声で何度か呟く。
彼らは彼女が言いたいことがあると察した。
「この人はわたしを救ってくれたのです! 酷いことを言わないでください!」
バイデンにまっすぐ視線を合わせ、力強く告げるリル。
幼い子供からはっきりと指摘されてしまった彼は帽子を取り、深々と頭を下げた。
「これは失礼いたしました! こちらの車にお乗りください」
「いいのですか?」
「ええ。どうぞ」
彼女はクロウと後部座席に座らされ、シートベルトをつける。
そして、運転席に腰かけているバイデンに「……事情は後で話す……」と耳打ちした。
「分かりました」
三人を乗せた車はブラッティクロムファミリーの本社ビルに向かって走り出す――
2025/12/19 本投稿




