#23
「……ん?」
リルが目覚めた時には辺りは暗く、人通りが少なくなり、街灯がつき始めていた。
クロウは誰かとスマートフォンで誰かと連絡を取っている声がする。
「あ、すまない。目覚めてしまったか?」
「すみません。いつの間にか寝てしまいました……」
「そういえば、君は身寄りがないそうではないか?」
「えっ、あっ……はい……」
「私のところに来るといいと思ったのだが……」
「いいのですか?」
「それは構わない。もし、君が娼婦として生活を営みたいのならば私は反対しない。君の人生だ。君が決めるといい」
「あなたはわたしを救ってくれた。わたしはあなたが恩人だと思っていますので、ついていきます」
「よし、いい子だ」
彼の手がのび、リルの頭をそっと撫でる。
久しぶりの温かな手からのぬくもりを感じ、彼女は涙をこぼした。
「な、泣くほど!?」
「ダメですか?」
「ま、まあいい。気が向くまで泣け」
リルは気が済むまで泣きじゃくる。
本当は大好きだったオルガント家に帰りたかった。
ようやくルイーゼと自分の距離が縮まったかと思っていたのに、オークションの商品として出展され、勝手に棄てていった。
素直で健気な感情と実の姉に対する憎しみがまだ幼い彼女の心の中で複雑に混ざっている。
そのような状況にも関わらず、クロウはリルに寄り添い、落ち着かせる父親のように隣にいた。
◇◆◇
彼からの通話を終えたバイデンは受話器を乱暴に置いた。
「ったく、何処をつき歩いているかと思ったら、可愛い少女を見つけて保護したから迎えにこいって……ここは託児所じゃねぇつーの!」
彼が言った通り、ここは託児所ではなく、マフィア本部の建物である。
当然ではあるが、拳銃や刃物などといった危険な武器が収納されている武器倉庫も存在しているため、危険がたくさんある。
「ただいま戻りました……ってなんの話しているんですか?」
「おう、アランか! お疲れ!」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
首領執務室の扉が開き、男性が姿を現した。
バイデンやリスカと同じく幹部のアラン。
彼は他の二人よりも若いため、身体能力は優れており、比較的穏やかな性格の持ち主で、黒背広はきっちり着こなし、眼鏡をかけている。
「話を戻すけど、それで首領はわざわざ此処に連絡してきたの?」
「らしいな。俺達は任務に行ったかと思ったら、電話を受けたから驚いていた。その餓鬼に至っては身寄りがねえって言っていたぜ」
「さすがに呆れました。首領は小さい子供にはあまあまですからね」
「さすが、ロリコン首領ね」
「アラン、途中から話に加わったのに、よく会話についていけるな?」
「バイデンさんの話の内容から察しただけですが……?」
「首領から電話があった時にいてほしかったわね……」
アランは察しがきくため、首領であるクロウはもちろん周囲からの信頼が厚い。
ただし、任務中の彼は普段の穏やかさは影を潜めるという説があるというのは別の話――
「さーて、俺がどんな餓鬼なのか見てきてやろうじゃねぇか!」
「バイデンさん、道中気をつけて」
「気をつけて行ってらっしゃい」
リスカとアランに見送られ、バイデンは首領執務室から出ていき、車でクロウが待つ場所へ向かった。
2025/11/23 本投稿




