#16
ルイーゼとリルは横断歩道を使い、周囲の動きに合わせて向かい側に移動する。
「なぜ、あなたはサンドウィッチ店のことに気がつきましたの?」
「あれでしたら、ルイーゼお姉様や小さなわたしでも大きくも重くないので、持てそうだと思います」
「そうね。なくなったら近くのゴミ箱に捨てていいですわね」
それだと小さなリルとルイーゼでも持ち歩いたり、腹を満たすにはちょうどいい量だったのかもしれない。
おまけに、金額は一番安いもので銀貨一枚、高いもので金貨一枚程度であるためリーズナブルである。
「おっ! お嬢ちゃん達、こんにちは!」
「「こんにちは!」」
金髪碧眼で口元にマスクをつけた若そうな男性のサンドウィッチ店の店主がマスクを顎まで下げ、手を振って出迎えた。
おそらく、彼は彼女らが王室出身者であることは知らないと思われるため、どこにでもいるごく普通の少女達のように接する。
「今日のオススメはたまごとツナが入ったサンドウィッチだよ!」
「わぁ! 美味しそうですわね!」
「そうですね!」
「あっ、そうそう! 子供向けにいろんな種類のサンドウィッチを小さく切ってパックに入ったものもあるけど、どうかな?」
店主が何かを持ってキッチンカーから降りてきた。
彼の手には小さな横長の使い捨てのパックに五種類入った通常の三角形のサンドウィッチとは異なり、正方形のサンドウィッチが入っている。
そこに入っていたものはたまご、レタスとチーズが挟まれたもの、トマト、ポテトサラダ、ツナ。
「今、ここに入っているものはサンプルとして用意したものだから、嫌いなものやアレルギーとかで食べられないものがあったら違うものと交換するよ」
「それにしますわ! そのトマトのサンドウィッチの代わりに今日のオススメのサンドウィッチを入れてくださらない?」
「わたしも同じものをください!」
「分かった! 同じもの2個ね。すぐに準備するから待っててね!」
店主が戻り、パックにサンドウィッチを詰めている。
待っている間にバニラ味のソフトクリームをご馳走になった。
「二人ともお待たせ! えーっと、代金は銀貨六枚ね!」
「ソ、ソフトクリームの分は……?」
「「それはおまけだよ(おまけよ)! 代金は取らないよ(取られないわよ)!」」
彼が準備を終え、二人分のサンドウィッチのパックが入った袋を持って出てくる。
これから会計に入ろうとした時にリルはクリームをべっとりついた顔でソフトクリームの料金を気にしていた。
彼女の発言に店主とルイーゼは同じことを同時に笑いながら言われてしまう。
「リルはお顔についたクリームを拭きなさい」
「……はい……」
リルは自分のポシェットからハンカチーフで顔についたクリームを拭き取っている時、ルイーゼは彼から商品が入っている袋を持って受け取り、会計を済ませた。
2021/12/31 本投稿