74 六本の指
今回の話は前回と同様、「某同人誌の会」の同志であるMさんから聞いたもので、Mさんが三十歳過ぎぐらいのときのことだそうだ。
Mさんの今の年齢からして、それは約四十年近く前のことになると思われる。
その年の正月。
家族そろって主人の実家に帰省した。
それから実家で数日を過ごし、我が家に帰ってから実家で写した写真の一枚を見てひどく驚いた。
それは幼い長男を写したものだった。
このとき長男はまだ三歳前後で、実家の居間のコタツの前で写っていたのだが、何とコタツの台に置かれた手の指が六本になって写っていたという。
「左右どちらの手だったか覚えてますか?」
その私の問いに……。
右手だったか、左手だったか、またどの指のあたりが多かったのか、まったく記憶にない。ただ六本あったことが衝撃過ぎて、そのことだけは今もはっきり覚えている。
Mさんが話を続ける。
その写真をすぐに主人に見せた。
すると主人はそれを見て、何も言わずビリビリと破って捨てた。
主人は心霊とか、そういうものを全く信じない人である。普段の主人なら「何だ、こんなの」と一言ぐらいあるのだが、そのときに限って何も話さず黙ったままだった。何かを感じたのだろうと思う。
その後。
その写真のことについては、なかったことのようにまったく話題にしてないという。
最後にMさんが言う。
ほんと不思議で、主人に意見を聞くつもりだったのに、あっという間に破り捨てられた。
あれは何だったのか。
六本に見えただけなのか。
もう一回見たいという気持ちが今もある。
ちなみに……。
実家で写したほかの写真は何の問題もなかったという。
いったい何だったんだろう。
コタツの台に指が映っていたのだろうか。
でも一本だけというのは違和感がある。
ご主人が破ってなければなあ。
Mさんと同じ不思議な思いが巡る。




