68 もう一人
今回の話は、某神社の神主をしている知人、Aさんから聞いた不思議な体験談である。
「今日、お宮でとても不思議な体験をしました」
こう始まったAさんの話に沿って紹介する。
令和四年二月の某日。
この日の午後四時頃、私が御朱印を拝殿に置きに行くと、ちょうどそこへ大人の女性四人と、子供二人の六人の家族連れらしき参拝客が訪れました。
この六人の参拝客の内訳ですが、六十代ぐらいのおばあちゃんらしき人と、その娘さんもしくは嫁さんの三人、そして子供は兄妹らしい小学生低学年の男の子と三歳ぐらいの女の子でした。
うちの神社では子供さんへのお土産として、風船やシャボン玉などを準備しており、それを子供さんの年齢に合わせてあげているんです。
それで私はいったん社務所に行って、男の子にトランプ、女の子にはシャボン玉のセットを渡そうと、それらを手に取って戻ってきたのですが、拝殿にいる先ほどの家族連れの中に、男の子の姿だけがどこにも見えませんでした。
――トイレに行ったのかな?
などと思いながらしばらく待っていたのですが、男の子がなかなか戻ってこないので、先に女の子にシャボン玉をあげました。それからお参りをしていたおばあちゃんらしき人に「お子さん、お二人でしたよね?」とお尋ねしたら、「いえ、この子だけです」と答えられたんです。
私は唖然としました。
――えっ、いたじゃないの?
そのときまさにそんな感じで、私が見た男の子はいったい何だったのでしょう?
――座敷童子かしらん?
ちなみにAさんは男の子の顔は見ていないそうですが、あのとき男の子の後ろ姿を見て、「小学生の低学年かな」と思い、女の子を見て「3歳くらいかな」と思ったのは鮮明に覚えていて、だから社務所でトランプとシャボン玉を選んだのだといいます。
それに、近くにそのような子供はいないし、お参りに紛れ込むといったこともないそうです。
そして。
Aさんは最後にこう言いました。
見間違い。
そんなふうに一言で片付けられることではありますが、どうにも腑に落ちません。
もう一人はこの世のもの?
見える者にしか見えないもの?
まさか座敷童子?
じきに黄昏時で、場所が神社の境内だけに気になる話でした。




