61 白蛇
今回の話は、ある男性が提供してくれた、彼の幼少の頃の奇妙な体験談である。
その方の現在の年齢は五十代半ばであるので、そのことを体験したのは、昭和四十年代の中頃であったと思われる。
この情報はメールでいただいたのだが、その時点でほとんど仕上がった状態であったため、原文をほぼそのまま載せることにする。
私が見聞きしたことをお話しします。
場所は札幌の白石という町で、小学生に上がって間もない頃のことだったと記憶しています。
私の父はタクシーの運転手をしておりまして、場所はその社宅の敷地だったように思います。
田舎の社宅のことですから、屋外には各家庭用に物置がありまして、理由はわかりませんがその物置の前で、父の同僚のおじさんがスコップで穴を掘っていました。
そのおじさんには、私より一つか二つ歳下の息子さんがいたのですが、その子が真剣な様子で穴の中をのぞき込んでいました。
私が興味をひかれて穴をのぞくと、白くて長いものが穴の中でトグロを巻いていました。
「よく見ろ、白蛇だ。こいつは悪いものだ、今から殺すからな」
おじさんはそう言って、その白蛇を剣先スコップでもってバラバラに切り刻みました。
そのあと。
白蛇を殺した話は噂となって広まり、近所に住むおばさん達は「蛇なんか殺して……」と、ずいぶん気味悪がっていました。
最初の異変。
それを耳にしたのは、息子さんが重い病気にかかったということでした。
これを機に……。
社宅やその周辺の住人は白蛇の祟りを口にするようになり、その場にいた私にも、何か不吉なことが起きるかもしれないと言いました。
私は見ていただけなのです。
私は怖くなり、そのことを父に話しました。
そのとき。
父は私を厳しく叱り、それから「絶対に蛇は殺すんじやない」と言ったことを覚えています。
数日後。
おじさん宅の引っ越しがありました。
そのことを母にたずねると、おじさんが事故で死んだのだと知らされました。
次は自分の番かも……。
子供心に恐怖を抱いたことを思い出します。
最後になります。
不思議なことにあのとき、私は白蛇の頭を見ていないのです。
ブリーチで色を抜いたように真っ白で、胴体は親指ほどの太さ、長さにしても三十センチから四十センチはあったように思います。
そこまではっきり覚えているというのに、子供の頃の記憶としては、それが蛇というより巨大なミミズのように残っているのです。
もしかすると……。
子供ながらに蛇の祟りを怖れるあまり、それが蛇ではなかったと自分に思い込ませ、記憶をすり替えたのかもしれません。
以上が私が体験した白蛇の話です。
本編に登場した白蛇が、後に起きた祟りと因果関係がはたしてあるのかどうか?
その明確な答えはないように思う。
だが私を含め、多くの読者は耳を傾け、ない答えにうなずくのではなかろうか。
不思議とはそのようなものだと思う。




