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奇聞集  作者: keikato
60/79

60 光の玉

 この話は知人女性Mさんの体験談である。

 Mさんは一昨年、実家のある町に帰った五十代半ばの女性である。

 光りの玉を見たのはつい最近のことで、令和元年十二月の暮れだったいう。


 彼女は奇妙な光の玉を二日続けて見ている。

 一回目は薄暗くなりかけた夕方で、買い物からアパートへの帰り道でのことだった。

 光の玉は八幡様の木立の上あたりから遠く民家が並ぶ方角へと飛んでいった。屋根伝いにフワフワと漂うように移動したという。

 色は黄色ぽく、大きさは風船ぐらい。輪郭はわりとはっきりとしているが光そのものは弱々しい。彼女には火の玉というより光の玉に見えたそうだ。

――なにかなあ?

 彼女が不思議に思って見ていると、光の玉は突然にして消えた。

 時間にして一、二分のことだったという。


 次の日。

 この日は夫と実家を訪れていたのだが、その帰りぎわで夜の九時を過ぎていた。

 駐車場で車に乗り込もうとして、実家の前に広がる田んぼと農道の堺あたりに、フワフワと漂っている光の玉が見えた。このときは腰の高さぐらいを浮遊しており、色や形状は前日に見たものとよく似ていた。

 駐車場からの距離は五十メートルほど。

 彼女は光の玉を指さして聞いた。

「ねえ、あの光の玉はなに?」

「光の玉?」

「見えないの?」

「そんなのどこにあるんだ?」

「ほら、見えるじゃない」

 彼女はもう一度その場所を指し示した。

「あっ、消えたわ」

 光の玉はまたしてもいきなり消えてしまう。

「車のライトだったんだろ」

 夫はさっさと車に乗り込んだ。

 彼女もつられるよう乗って、光の玉の話はそれで終わりとなった。

 見た時間は一回目より短かった。

 光の玉は彼女だけに見えて、夫の目にはなぜか見えなかったのである。

 彼女が言う。

「それも不思議だったんです」


 彼女は最後にこう言い添えた。

「あとになってわかったことですが、ほかにも光の玉を見た人がいたんです。その人は祭りの夜、光の玉が神社から氏子の家へと飛ぶのを見たそうで、神社と氏子は光で結ばれているからだと。実際、一度目は近くに八幡様が、二度目はすぐそばに地元の神社があったんです」

 光の玉。

 それからは見ていないという。

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