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奇聞集  作者: keikato
56/79

56 琴の音

 今回は知人女性から伝え聞いたもので、話は彼女の姉が体験したことである。

 その当時、彼女は二十代になったばかり。

 時は昭和五十年代後半。


 そのころの姉は会社勤めのかたわら、ひととおりの花嫁修業をやらされていた。

 お茶、着付け、料理、お琴など。

 妹の彼女の目からしても、そんな姉の花嫁修業は大変そうに見えた。

 なかでも、お琴。

 毎晩、姉は琴の練習をしていた。

 彼女の実家には古い琴があり、それは母が母の姉より譲り受けたもので、以前は若くして亡くなったそのおばが使っていたらしい。


 ある日の夜。

 その日は仕事で疲れており、姉はいつになく体が重く機嫌も悪かったという。

 琴を弾く気がしない。

 そんなときに、

「お琴の練習はしないの?」

 母からきつい口調で諭された。

 それで、ますますやる気が失せた。

 で、なにかしら言い返したことにより、それからは母との間で口喧嘩となり、それは徐々に険悪なものになっていったそうだ。

 そんなとき、

 シャラン!

 座敷から琴をつまびく音が聞こえてきたという。

 座敷にはだれもいないはずだ。

 台所にいた姉と母はびっくりして、すぐさま一緒に琴の置いてある座敷へと走った。


 琴はいつもどおり座敷の床の間にあった。

「なんで……」

 人が出入りした様子もなく、なぜ琴が鳴ったのかわからない。

「鳴らしたの、たぶん姉さんなのよ」

「おばさんが?」

「そう、琴の音でもって伝えかったのよ。親子なんだから喧嘩せんで、あたしらに仲良くしなさいって」

「でも、おばさんはもう……」

「この琴、姉さんの魂が宿ってるのかも。姉さんが大事に使ってたものだから……」

 二人してしばらく琴の前に座っていたが、それが再び鳴ることはなかった。


 現在、実家に琴はない。

 姉が嫁ぎ、母が亡くなったあと、その琴の行方は誰も知らないという。


 これまでも音に関する不思議な体験談はいくつかあった。

 壊れたオルゴール。

 おもちゃ箱にないはずの鈴。

 目に見えない者が音でもって、近しい者の聴覚に何かしら訴えてくる。

 その音の根源はたいがいが身近なものである。

 そして。

 この琴の話も不思議である。


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― 新着の感想 ―
[一言] 映画『ゴースト』を思わせる話ですね よく似た話を聞きます あまり自分はこの手の作品を書きませんが その類いの事をやると、浮かばれ無い霊などが干渉して来るとも聞きます 生半可な好奇心では、そう…
2020/05/17 18:19 言霊の精錬術師(見習い)
[一言] 琴の音、風流ですね。たまたま、風がはいって鳴っただけかもしれませんが、付喪神つきの琴だったのかもしれませんw
[一言] 拝読いたしました。 ストック。あと3話ですか。 けれども、よくぞこれだけ。世の中、不思議なことは多いのですね。 まさに、琴の音色はおばさんからのメッセージなのでしょう。嫌々ではなく、楽しくひ…
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