40 お地蔵様
この話は、父の弟嫁になるおばさんから聞いたもので、おばさんの生家で起きたことである。
戦後すぐの秋だったという。
台風の大雨により、お地蔵様を祀っていた木造の祠の屋根が壊れた。祠は敷地内にあったのだが、すぐそばまで裏山が迫っており、そこから握りこぶし大の石が転がり落ちてきて屋根を直撃したのである。
信心深かったおばさんの父は、それを見て不吉な前兆と感じたのか、すぐに家族を連れ裏山から離れた位置にあった土蔵に避難した。
すると深夜。
裏山の一部が崩れ落ち、母屋の大半が土砂によって押しつぶされたそうである。
その後。
家は建て直され、お地蔵様も掘り出されて敷地内の別の場所に祀られた。
以来……。
裏山は崩れたことがないという。
この話は、「山から小石が落ちてきたときは山崩れの前兆だから注意しろ」という先人の知恵だったともいえる。
いずれにしろ……。
常日頃からお地蔵さまを大切にしていたからこそ早めに気がついたことであり、信心深かったことが幸いしたことにはちがいない。
おばさんは最後にこう話した。
「祠の屋根が壊れてなければ、山から石が落ちてきたことにも気がつかなかったはず。あのときお地蔵様が教えてくれなければ、いったいどうなっていたことか……」
そのお地蔵様は、今も長兄家族によって大切に祀られているという。
ちなみに。
私は小学校低学年の頃、おばさんの生家には何度か遊びに行ったことがある。
ただ残念ながら、そこにお地蔵様があったかどうかの記憶がない。




