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奇聞集  作者: keikato
39/79

39 未練

 赤ちゃんが天井などを目で追ったり、または指をさしたり、目に見えぬものに反応するといった話はよく耳にする。

 この話は、見えぬものを見ていたという知人の女性に聞いたものである。

 もちろん彼女はそのときのことを覚えているはずもなく、彼女ものちになって父親から聞いたという。


 知人の場合は特別である。

 なにしろ彼女は言葉をしゃべり始めてもなお、この世の者でないものが見えていたらしい。

 父親の話によると、彼女は亡き母親の姿を見ていたそうだ。

 こう言っていたのだから……。

「お母さんがいる」

 実のところ彼女の母親は、彼女を産んでまもなくこの世を去っていた。


 二歳の頃。

 そうしたことが頻繁に続き、そのうち彼女は高熱を出してしまった。病状はかなりひどく、医者からは覚悟をするようにとまで言われたそうだ。

 だが、彼女は一命をとりとめた。

 以来……。

 目に見えぬものに反応しなくなった。

 これを機に彼女の内部に変化があり、そうしたものが見えなくなったのだと思われる。


 この話には続きがある。

 彼女の一人娘もまた、言葉を覚えてもなお目に見えぬものが見えていたのだ。

 彼女の父親が亡くなり……。

 葬儀が終わった直後から、娘が覚えたての言葉でしきりに言うようになった。

 おじいちゃんがいる、と。


 これより彼女の言葉である。

「娘は父の四十九日が過ぎて、ピタリと言うのをやめましたので、たぶん父の姿が見えなくなったのでしょう。それで、私は父が成仏したのだと……」

 それからこう言い添えた。

「母の場合は、赤子の私に未練が残っていたのでしょう。ですから四十九日を過ぎても、母の魂はなおこの世に残っていたんです。ですがそのことで、私の命に危険がおよぶことを知り、泣く泣く未練を断ち切ったのだと思います」


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