37 指輪
この話は知人女性から聞いたことである。
彼女の年齢から察するに、昭和四十年頃のできごとだと思われる。
まず背景から説明する。
彼女の母の実母、すなわち彼女と血のつながる祖母は早くに亡くなり、この話に登場する祖母は晩年になって祖父の元に後妻として嫁いできた人である。
そのとき。
彼女の母はすでに結婚していたのだが、亡き実母の指輪(形見として持っていたもの)をこの祖母(新しい母)に贈ったそうだ。
それがのちに……。
その指輪が行方不明になった。
どこをどう探しても見つからない。
祖母は大切な指輪を失くし、そのことをおおいに悔やんでいたという。
ところがである。
それから数年後、彼女が生まれて間もないときのことだった。
ベビーベッドに寝ている新生児(彼女)が片手を握りしめたままなので、そのことを奇妙に思った母がその手を開かせてみた。
すると何としたことか。
彼女の手の平から、ずいぶん前に失くなったはずの指輪が出てきたという。
理由はわからない。
なにしろ這うこともできない新生児であり、しかもそのときはベビーベッドで寝ていたのだから。
後年。
その指輪は常に祖母の指にはめられており、母にはよくこう言われていたという。
あなたはお母さん(母の実母)の生まれ変わりなんだね、と……。
彼女は最後にこう言い添えた。
「これは我が家の歴史の七不思議なんです」
この話。
指輪は部屋のどこかにあったのだろう。
そして。
それを彼女が、どこかのタイミングで手にしたのだと考えられる。
ただ……。
たとえそれが偶然のことであったとしても、世の中にはたいそう不思議なことがあるものだ。




