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奇聞集  作者: keikato
36/79

36 霊臭

 今回は知り合いの女性から聞いた話で、彼女の義母が亡くなった半月ほどあとにあったことである。

 平成三十年の夏のことだ。


 お盆の前夜。

 夫は先に寝入り、彼女が風呂に入ろうとしたときだった。

 線香の臭いがどこからともなくしてくる。

――どうして?

 彼女は奇妙に思った。

 借家の住まいには仏壇などなく、日頃から線香を焚くようなことがない。なぜ臭うのかわからなかったのである。

――夫の服かな?

 はじめはそう思った。

 その頃の夫は勤め帰りに実家に立ち寄り、仏壇に手を合わせることが日課となっており、ときおり洋服から線香の臭いがしていたからだ。

――でも、こんなに臭うなんて……。

 違和感を感じつつも線香の臭いをやり過ごし、彼女はそのまま浴室に向かった。


 入浴して数分後。

 浴室にまで線香の臭いが漂ってきた。

 ドアは締め切ってある。

――なんで?

 自分の鼻がおかしいのかとも思う。

 それを確かめるように、石鹸やシャンプーを手に取って臭ってみた。石鹸は石鹸の香り、シャンプーはシャンプーの香りがする。

 鼻のせいではなかった。

 線香の臭いはさらにひどくなり、やがて線香の煙が浴室内にたちこめるように臭ってきた。

――おかしい!

 彼女は線香の臭いに耐えきれなくなり、手早くパジャマに着替えて浴室を飛び出したという。


 寝ていた夫をたたき起こした。

「なんか線香臭いな」

 目を覚ました夫が開口一番に言う。

「なんでか、こっちが聞きたいの。お風呂の中まで線香の臭いがするんだから」

「風呂もか」

「そう、これだって洗濯したばかりなのに……」

 そのとき。

 着ていたパジャマからも線香の強い臭いがしたそうである。


 その夜。

 彼女はネットで調べてみたそうだ。

 すると「線香の臭い」から「霊臭」という文字にいき当たったという。

 最後に彼女はこう言った。

「あの線香の臭いは義母の霊の臭いで、亡くなった義母が最期に会いに来ていたのでしょうね」

 線香の臭い。

 それはお盆が終わると消えたそうである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] わかります。 霊臭って言うんですね。 なるほど。
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