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奇聞集  作者: keikato
28/79

28 狐憑き

 この話も前回に続きSさんのもので、今回は彼女の父方の話である。

 父方の実家は、もとをたどれば拝み屋のようなことをやっていたそうで、今でもとある宗教の連絡所になっているという。

 そんな信心深い実家で、彼女の母の身に起きたことである。


 昭和四十年代のこと。

 母は父の実家で催された祈祷に参加させられたのだが、そのときどうしてだか狐憑きの状態になってしまった。意識が飛んで、自分がわからなくなったのである。

 拝み屋をしていた祖父がお祓いをして、このときはすぐに自分を取り戻したという。

 父は祖父とちがって信心深くない。

 いや、狐憑きなど、まったく信じない人である。

 だからこのときのことを、母は催眠状態にあったのだろうと話していた。


 拝み屋。

 Sさんはそのことで別な話もしてくれた。

 彼女が中学一年のときだった。

 父が新築の家を購入したのだが、そのときわざわざ実家から祖父が訪ねてきて、家の中を手かざしでお祓いしてくれた。

 ところが……。

 帰ったあと祖父から電話があって、階段だけお祓いするのを忘れていたという。

 その晩。

 母が階段から転落する。

 幸いたいした怪我はなかったが、母が突き当たった壁に大きな穴があいてしまった。

「お祓いをしなかったからかな?」

 このときばかりは、信心深くない父もこう話していたという。

「母には悪いのですが、丸い穴がきれいにあいていたので、私はおかしくて笑ってしまいました」

 彼女はつい笑ってしまったそうだ。


 この奇聞集、多くを聞き集める過程でわかってきたことがある。

 ある者にはある。

 ない者にはない。

 霊感。

 予知能力。

 これらはある人間に偏って起こるもののようだ。


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