28 狐憑き
この話も前回に続きSさんのもので、今回は彼女の父方の話である。
父方の実家は、もとをたどれば拝み屋のようなことをやっていたそうで、今でもとある宗教の連絡所になっているという。
そんな信心深い実家で、彼女の母の身に起きたことである。
昭和四十年代のこと。
母は父の実家で催された祈祷に参加させられたのだが、そのときどうしてだか狐憑きの状態になってしまった。意識が飛んで、自分がわからなくなったのである。
拝み屋をしていた祖父がお祓いをして、このときはすぐに自分を取り戻したという。
父は祖父とちがって信心深くない。
いや、狐憑きなど、まったく信じない人である。
だからこのときのことを、母は催眠状態にあったのだろうと話していた。
拝み屋。
Sさんはそのことで別な話もしてくれた。
彼女が中学一年のときだった。
父が新築の家を購入したのだが、そのときわざわざ実家から祖父が訪ねてきて、家の中を手かざしでお祓いしてくれた。
ところが……。
帰ったあと祖父から電話があって、階段だけお祓いするのを忘れていたという。
その晩。
母が階段から転落する。
幸いたいした怪我はなかったが、母が突き当たった壁に大きな穴があいてしまった。
「お祓いをしなかったからかな?」
このときばかりは、信心深くない父もこう話していたという。
「母には悪いのですが、丸い穴がきれいにあいていたので、私はおかしくて笑ってしまいました」
彼女はつい笑ってしまったそうだ。
この奇聞集、多くを聞き集める過程でわかってきたことがある。
ある者にはある。
ない者にはない。
霊感。
予知能力。
これらはある人間に偏って起こるもののようだ。




