23 蛇
この話は以前、「人面蛙」の奇話を提供してくれた知人女性が、やはり同じくTから聞いた不思議な話である。
そのTだが今は整体の店を開いており、不思議な話というのは患者である客の体験談だという。
話は最近のことだと思われる。
その日。
腰痛を訴える客が店に訪れる。
その客は銀行員で五十代の男性だった。
腰痛になったきっかけを問うに、男性は車で外回りの営業中に自損事故を起こし、今もなおその後遺症に悩まされているのだという。
「それがなんとも不思議でしてね」
男性が事故の様子を振り返る。
山の中を抜けるバイパスを走っているときだった。
前方の路上に細い紐状ものが見え、それが目前になって蛇だとわかる。
蛇が道路を這っていたのだ。
とっさに避けようとしたが、蛇を踏んだ感触がハンドルを握る手に伝わってくる。
イヤなモノをひいたな。
そう思いつつ、男性はそのまま現場を通りすぎたという。
事故を起こしたのは、その数日後。
やはり営業の外商で、先日と同じ経路で車を走らせていたのだが、あの蛇をひいた場所にさしかかったときである。
車の速度が意図せずして上がってきた。
そこは下り坂でもないもないのに、車のスピードはそれからも増すばかりである。
不思議に思いブレーキペダルを踏む。
だが、どうしたことか深く踏み込めない。
なんで?
あわてて足元を見るに、ブレーキペダルに蛇がからみついていた。
そして次の瞬間。
車は反対車線を横断し、そのまま右側にあった林に突っ込んでいった。
覚えているのはそこまで。
気がついたときは病院のベッドだったという。
なんとも不思議な話だが、白蛇などを題材にした作り話はいくつもある。
どう考えても、この話はできすぎの感が否めない。
私は彼女に問うてみた。
「なんかできすぎでは?」
「おっしゃるとおりです。でも話をしてくれた彼女は決してウソをつく人ではないので」
知人女性はきっぱりと答えた。
この話。
男性客が話を盛った可能性も否定できない。
実話なのか?
作り話なのか?
真否はわからない。
だが、いずれにせよ奇異な話であることには違いない。




