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奇聞集  作者: keikato
20/79

20 首切り場

 この話は短期間に、しかも狭い範囲でたて続けに発生した六件の事件のことである。偶然の重なりにしてはまことに奇妙なできごとなので、ここに載せることにした。

 話をしてくれたのは、市役所に勤めている旧知の友人である。


 事件があったのは昭和五十年。

 場所は山間部にある、市の清掃工場を中心とした半径一キロほどの限られた範囲である。

 なおゴミ焼却施設は地元住民にとっては迷惑施設であるがため、どの市町村においても人里から離れた場所に建設されるのが一般的である。

 そしてこの清掃工場も、やはり山間部を切り開いて建設されていた。

 この工場は前年に稼働を始めたばかりで、規模としてはかなり大きく、当時としては最新鋭のものであった。同時に、ごみ搬入専用の道路も山の間をぬうようにして造られており、その距離は全長で四キロほどもあった。

 追記するに……。

 専用道路の入り口周辺には鬼崎(おんざき)という地名の集落があり、工場が建てられた先には船平(ふなひら)という名の集落があった。


 発生した順に事件を記す。

 一件目は殺人。

 場所は船平の集落内で、老婆が金を貸していた同集落内の女に殺害された。この事件はテレビで大々的に報じられる。

 犯人の借金の証文が、専用道路の途中にある橋の下で発見された(犯人が証拠隠しに捨てた)ことから、加害者の女は事件直後に逮捕された。


 二件目は事故。

 鬼崎集落の老人男性が、仲間と山菜採りのさなかに谷底に滑落して死亡。場所はやはり、前述の橋のたもと付近であった。


 三件目は自殺。

 近隣の集落に住む老人男性が遺書を残し、船平集落に隣接する山の中で首吊り自殺をした。

 家族から捜索願が出され、本人が運転して出た軽トラックが発見されたことにより、翌日には近くの山中で本人の遺体も発見された。

 なお、軽トラックが止められていた場所は清掃工場と裏山の境にある林道で、工場の敷地から五十メートルと離れていなかった。


 四件目は自殺。

 個人タクシーの運転手が、専用道路の峠の空き地で排ガス自殺をした。前述の橋から百メートルほど清掃工場寄りである。

 発見者は出勤途中の職員で、車の窓に目張りがされていたことにより気がついた。

 自殺の理由は借金苦である。


 五件目は事故。

 現場は清掃工場の敷地内。

 犠牲者は施設見学に来ていた児童で、無人のゴミ搬入車の暴走に巻きこまれての事故だった。

 なぜ無人の車が暴走したのか?

 運転手が事務棟玄関前にあった自動販売機でジュースを買おうと車を離れたのだが、そのときサイドブレーキを引き忘れ、エンジンもニュートラルでかけっぱなしになっていた。しかも運の悪いことに車を止めていた場所がやや下り坂になっていたため、エンジンの振動により走り出してしまったのである。

 暴走した車は倉庫に追突して止まり、被害者の児童は車と倉庫の間にはさまれてしまった。

 ほぼ即死であった。

 この事件もテレビで大きく報じられた。


 六件目は事故。

 これも清掃工場の敷地内で、しかも建物の地下にある汚水ヒットで起きた。犠牲者は工場と取り引きのあった民間会社の従業員で、汚水槽に付属する機器の点検中であった。

 発見したのは職員で、死因はこうした地下でたまにある酸欠死であった。

 この事件もテレビで報道された。


 以上の六件である。

 こうしたことが身のまわりで、しかも短期間に発生すると、職員たちが怖れと不安を抱くようになり、なかには深夜の勤務を嫌がる者まで出てきた。

 当然のことであろう。

 そこで工場長は、神主にお祓いをしてもらったそうである。


 この六件の事件。

 不幸な偶然が、たまたま連続して続いただけだという方もいるだろう。

 山が切り拓かれ、清掃工場ができ、ゴミ搬入道路ができたことでの連鎖だという方もいるだろう。

 ただ……。

 明治時代になるまでの長い間。

 清掃工場の付近に藩の首切り場――罪人の処刑場があったことが確認されている。

 そこで死んだ者たちの霊が目覚めたのだろうか。

 事件が続いた理由はわからない。


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