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奇聞集  作者: keikato
2/77

2 墓参り

 これは祖母アキから聞いた、アキの祖父、やはり仲作にまつわる話である。

 それがあったのはアキが尋常小学校に入学した頃だというので、大正の初めだと思われる。


 仲作は信心深い男で、妻の死後、毎晩のように妻の墓参りをしていた。

 墓は村の共同墓地にあり、そこは裏山のかなり奥まった場所なため、家からは山道を歩いて片道二十分ほどかかる。

 それでも仲作は、その日の農作業を終えると、晩飯の前に墓参りを続けていたそうだ。


 ある晩。

 仲作が血相を変えて帰ってきた。

 子供のアキがそのときに見た記憶によると、ずいぶん息を切らしていたという。

 家人が訳をたずねるも……。

 仲作は決して口を開かなかった。なにもしゃべらなかったそうである。

 そして……。

 翌日からピタリと墓参りをやめ、仏壇の前で長い間お経を唱えるようになった。

 その数年後。

 仲作はなにも話すことなく、自分もその共同墓地に埋葬された。


 あの晩、仲作は墓地で何かを見たにちがいない。

 しかし……。

 それが妻の霊であったのか、それともほかのものであったのかはわからない。

 ただ、祖母はいつも話していた。

 あの晩の仲作の怯えた顔は、今もはっきり覚えていると……。


 子供の頃。

 私もその共同墓地に参ったことがある。

 そこはずいぶんと山奥にあり、墓とは呼べないような丸っこい石などを含めると、大小さまざまな墓が百基以上あった。

 明治の頃は土葬も行われており、それで狐などに骨が掘り返されることもあったと、そんな話を父に聞かされたことがある。

 現在、我がご先祖はその墓地に眠っていない。

 今は実家近くのお寺の納骨堂にいる。

 山奥で管理ができないため、父が墓を掘り上げて骨をお寺に移したのである。

 さらに。

 その一部は分骨され、それらは京都の西本願寺の納骨堂にも納められている。

 ご先祖様もあちこちを転々として大変である。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本古来の雰囲気を残す、 この話の独特の世界観が、 とても良いと思います。 [一言] 本来日本では当たり前であったはずの、 こういった話が、幻想的に思えるのは、 都会では失われつつあるもの…
2020/07/01 07:10 退会済み
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