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19 ご先祖様
この話は前回、「霊感」の話をしてくれた女性から聞いたものである。
ちなみに彼女の霊感は人並みはずれて強い。
つい最近のこと。
彼女が墓地の草取りをしていると、どこからともなく声が聞こえてきたそうだ。
それは話し声だったり、笑い声だったりと、ずいぶん楽しげであったのだが、そのときは誰かがやってきたのだろうとたいして気にとめることもなかった。
声はそれからも続く。
だが、いつまでも人の気配はしない。
「誰かいるのですか?」
奇妙に思い声をかけてみた。
すると……。
今の今まで聞こえていた声は、そこでピタリとやんでしまった。
あたりを見まわすも、どこにも人はいなかったそうである。
「その声はご先祖様たちだったのでは? お墓をきれいにしもらって喜んでいたのでしょう」
私がそう言うと、
「そうかもしれませんね」
彼女はひかえめにうなずいた。