16 予知夢
この話は、某神社の神主をしている知人から聞いたものである。
体験をした当事者はこの知人の妹で、彼女が小学六年生のときだそうだから、およそ四十年前の昭和五十年前後のことになる。
その年の大晦日の夜。
妹は祖父の夢を見たそうである。
夢の内容だが……。
得体の知れない者が、祖父のまわりに数え切れぬほどいた。それは絵本などで見る小悪魔のようで、しかもその者たちの手にはナイフが握られていた。
――おじいちゃん、危ない!
と、思った瞬間。
その小さな者たちは祖父に襲いかかった。
そこで夢から醒めた。
不吉な夢ではあったが誰にも話すことなく、彼女はそのときはそのまま忘れていたそうだ。
ところが、その日の夜。
祖父は浴室で倒れ、意識がもどらぬまま息を引き取ったという。
祖父の話が出ると、
「あれは予知夢だったのかも……」
今も、妹は夢の話をするそうである。
夢が現実のことになる。
私もそうした夢を見たことがある。
それは地震の夢なのだが、立っていられないほど大きな地震の夢だった。
その日。
私が住んでいた県を中心に地震があり、それはやはり立っていられないほどの地震だった。
それが最初で最後。
以来、予知夢のような夢を見たことはない。




