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14 屋敷祓い
この話も、某神社の神主をしている知人から聞いたものである。
その神主も母親から聞いたというから、話はずいぶん前のことで昭和三十年代のことになるのだろう。
彼が話すには……。
母も代々の神主であり、神社に奉仕を始めたのは二十代と若かった。そんな若い頃の母が、ある家の屋敷祓いを依頼されときのことである。
そこは代々、不慮の事故死や自殺者があったりと災いの多い家系であったらしく、若い母にとっては負担の大きな儀式となったそうだ。
以下は……。
彼が母親から聞いた言葉である。
夜中に霊たちが、寝ている自分のもとに列をなしてやってきた。霊たちは自分をとりまき、じっと見つめるだけで一言もしゃべらない。
霊に憑りつかれた自分は衰弱してゆき、ついには起き上がることもままならなくなった。
そんなとき。
祖父がただならぬ気配を感じたのだろう、すぐさま身体祓いをして悪霊を追い出してくれた。
これを機として、彼の母親は神社の奉仕からいっさい手を引いたという。
知人はこう言い添えた。
「母は霊感が強すぎて、神主の仕事には不向きだったのでしょう」