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10 人魂
この話も、前回に続いて大崎のおじさんから聞いたものである。
上の娘が中学生、下の娘が小学生だったので、およそ四十年前のことだという。
その日は夏だった。
夜の八時過ぎ。
娘二人が二階にある自分たちの部屋から、階段をドタドタと踏み鳴らしてかけ降りてきた。
人魂が部屋に入ってきたのだという。
娘たちの話によると……。
人魂は南側の開いた窓から入ってきて、天上を這うように伝い、北側の開いた窓から出ていった。恐るおそる北側の窓からのぞくと、人魂はまだ窓の真下の地面にいた。
人魂はバレーボールほどあったというから、たいそう大きなものだったらしい。
以来二度と。
娘たちは二階で寝なくなったそうである。
おじさんが言うには……。
その前年の夏。
同居していた父親がこの家で亡くなっていた。
そのオヤジの魂ではなかったのだろうか。
孫に会いに来たのではなかろうかと……。
家の中に入る人魂。
私はこのとき初めて知った。
人魂にもいろいろとあるものである。