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魔法少女執行します2

福坂リッカです。少し前から多少奇妙な二重生活を送ってます。朝目覚めてすぐの洗面台の上に置かれた逆さのコップの側面に偽装した隠し扉が開くと片手ほどの大きさの豆ダヌキが慌ただしく現れて歯を磨いていた私にいつものように声をかけてきました


「やあリッカおはよう」

「おはよう。それどうしたの」

「それ?」

「あなたが出てきたコップ」

「あぁ、ゴミ捨て場のやつを利用して私の宿所に使ってるんだ」


 なるほど、そのサイズのなら道端であふれかえってるし材料が尽きるようなことはなさそうね。

 

 昼は一人の一女子高生として暮らしています。

 

 太陽が西に傾き始めたころ、学校から解き放たれた私はもう一つの顔を出すのです。


 今日も街中の一角で作業を始めます。


 ふとコートを着ぶくれさせたリッカはがばっと前のチャックを引き下ろしてあけっぴろげた。


 コートの裏側には片手に収まるほどの小ダヌキがびっしり詰まっていたのを一斉に前に飛び出して我先にと家の塀に飛びついて登っていきますと反動でつい道路の上に突き飛ばされてしまいました。


「お疲れさまでした」と横から小ダヌキの一匹に声をかけられた。


「今回でこの前絶対王の被害にあった集住施設の避難民は全員ほかの集住施設に分散できた。特に障害が発生しなくて本当によかったよ」


「重かった~」


「命の重みだ。本当にありがとう」


「ところでリッカ、君に見せたいものがある」


「その前にエマ様を洗脳していた輩について教えて」


「奇遇だね、そのエマ様の話だ」


 ならば行かねばなるまい。立ち上がるとリッカは足元の小ダヌキをつかんでコートの内ポケットのうちの一つに突っ込んで何の変哲もない住宅地をめぐりだした。



四方八方を真四角で埋まった無機質な人工的な空間に、照明が一組の机椅子を照らし出した扉を開けて可憐に着飾った和風ゴスロリの肩に三枚おろしを着つけた小さな狸を乗せた少女が入ってきた。椅子の上にお目当ての黒髪の長い小さな少女を認めた少女は飛びついて彼女の両手を握って話し出した。


「あ、初めまして!エマ様!私、福坂リッカと申します!あなたのようなお嬢様?名士の箱入り娘?に憧れてまして!直に話せて至極光栄の至りといいますかなんといいますか!」


 リッカは愛しのエマ様がむすっとした顔に変わったのを見逃しはしなかったがその原因はつかめなかった。続けて


「それで、あの、私が救い出したんですけど、絶対王?の魔の手から。メイドさんだったのを!どうしてメイド服だったんでしょうかね?王の趣味?今もこうしてお召しになられてますけれども」


「知らないわ。何もかも原因はあの男子生徒の持ち物。そうよ!あのアイテム!たぶん猿のミイラ」


「といいますのは」


「私もほかの方もあのミイラの目を見たとたん強くそれが輝いて見えた!洗脳された!召使に!あのミイラに血を与える気に!今もこの右手首に傷がちゃんとある!すべてあのミイラに血を吸わせるため」


「なるほど、なるほど。どう思う?ミティ?」


「やはりというかなんというか…お嬢さん!あなたの推理力は優れています。我々はこの地に根を下ろして今年で五年。ずっとその猿のミイラいや、正確にはそれこそ絶対王なのですが、それを追ってきたのです」


「どゆこと?ミティ?」


「絶対王とは国家に寄生する生命体を指す普通名詞なんだ。われら獣人とこの地球の人間は国家という一つの生命体またの名を「リヴァイアサン」を構成する。絶対王はそれに寄生する生き物なんだ」


「まった。国家公論に私たちを巻き込まないでほしいのだけど」と抑えたのはエマ。


「ちがう。決して私は君たちを丸め込もうとして話をしているんじゃないんだ。単純な脅威。君たち自身にかかわる恐ろしい寄生生命体の話をしているんだ。」


「君が言ったね?サルのミイラと。それは実はサルじゃない。絶対王という生命体の幼虫、または蛹なんだ。」


「なるほど…なるほど」


「わかってる?わかってないでしょ」


「うん…あ、否。いいえ!」


「ミティといったかしらしゃべるネズミさん。あなたの存在自体びっくりもんだけどひとつ聞きたいの。どうしてその絶対王とやらについて詳しいの?あなたたちと絶対王とやらの関係は何?」


 とエマは要領よくアイズチを打つだけのリッカを押しのけてミティに問いただした。

君は利口だねとミティは答えるとミティは話し出した。


 もともとミティら獣人と絶対王は共生の関係だった。主に獣人が肉体労働を、絶対王は頭脳労働を担当して生きてきた。


 そしてそれは極めて成功した関係だった絶対王は最低でも三つの宇宙一つの次元を支配していた。今につながるのは地球の時間で考えて五年前。


 そのときたまたま獣人を搭載していた獣人母艦がブラックホールに飲み込まれこの地球の近くのホワイトホールから吐き出された。獣人たちは自由を手に入れた。

 

 しかしいきなりもたらされたこの自由はある意味彼らにとって毒にも薬にもなった。この五年で生き残った獣人が全体の二割にも満たなかったことが間接的に自由の授業料の高さを物語っていた。しかし彼らの頭はここでついえるほど劣ってはいなかった。彼らの元主。絶対王を模した彼らの国家の力「リヴァイアサン」の擬人化、魔法少女を作り上げたのだった。そして福坂リッカは魔法少女である。


「あなたの事情は分かりました。でも私はもうかかわりたくない学校に戻らせていただきます」とエマは答えるとたった一つの出口に向かった。するとリッカが立ちふさがった。「エマ様、あなたと一緒でしたらわたくし百人力の気分でございます」


「リッカといったかしら、さっきからあなたのセリフが鼻についていけないわ」


「はい?」


「あなた!私は一人の人間なのよ!あなたが憧れるような存在じゃない!いい加減目を覚ましなさい!あなたは物事の表面しか見ていない!あなたが憧れているのは私の設定!あなたにとって私は私じゃなくていい!だから私はあなたが嫌いよ!」


と言ってしまうと扉を開けてエマは外へ行ってしまった。

リッカは口をつぐんだ。リッカは自分の本心を疑った。自分の過去を見直した。すると自然と目から涙が称え始めた。エマはあの短時間でリッカのすべてを理解しきっていたのだった。


しばらく呆然と暮らして、ぼそぼそしゃべり始めた。


「私はただ、名士のお嬢様というエマ様の…いやエマちゃんの身の上にあこがれていただけで、エマちゃんの人間を見ていなかったのか…悪いことしちゃった…」


「なら胸を張れ!リッカ!」


肩には三枚おろしを着た狸がいた。


「確かに君の思いはエマの求める感情とは異なるものだった。だが君は立派な行動をちゃんとしたじゃないか!その過去にした行いはどんな未来が、運命が待っていたとしても変わりはしない君はちゃんとエマを救ったんだ。さぁ追いかけるぞ!」


エマは飛び出したら見慣れた校舎を目指して歩き出した。ふと用水路で水遊びする子供らが見えた。あっと子供のうち一人がつぶやくとネズミのしっぽをつまんで釣り上げたそのネズミは服を着て何かわからんことを叫んでいた。


「こら!ネズミを放しなさい!」


エマが子供らに突っかかっていくとクモの子を散らすように子供たちは去っていった。エマは学校を目指す。見慣れぬ道を巡りに巡り、ちょうどふもとの十字路の、一二回車で通った記憶がかすかに残るところで強く人と衝突した。

 

「誰よ」「俺だ!」何とぶつかったのは解き放たれて久しいばかりの絶対王(正確には宿主)だった。周りには義手と車いすのメイドと気の強そうなメイドがいた。思えば彼の主な拠点も学校。出会うのも道理である。


「エマよ!今一度俺のメイドになれ!格好もそのままだし!」


「何を言うか!」


「行け!スケバンのいおり!」


はっと答えたが早いか洗脳さえなければこんな男とは付き合わないであろうしっかりした美人のメイドが立ちふさがった。両者見合って位置を探る。虚ろなメイドの目が底の見えない恐ろしさを秘めていた。


「待った!その勝負待った!」割って入ったのは福坂リッカ。すでに変身は解いている。


「エマ様、いや、エマちゃん!」


「何よ!」


「さきほどは無礼を働き申し訳ござ…いや!違うの!私が言いたいのはそんなつまらない言葉じゃない!エマちゃん!私とお友達になってください!お嬢様属性とか、名士の娘じゃなくて一人の人としてあなたと仲良くなりたいの!福坂リッカのお友達になってください!」


「今だ!行けいおり!」


 無粋にも絶対王が叫ぶが、しかしその言葉に答えたいおりはばったり倒れただけだった。


「なんだ!どうして!」


「こういうことです旦那様」

 

 倒れたいおりのもとの後ろには義手のメイドが主の手をつかんでいた。「離せ!そうか、お前は奴らの手先だったのか!だがまだだ!例のミイラは私がまだ持っている覚えていろ!」と手を振り切ると絶対王は走って逃げていった。腐っても男の子。女子しかいないこの場のものでは走っても追いつかないし追いかけるより急ぐ用があった。


「エマちゃん」


「…さっきはごめんなさい。私こそこれから仲良くしましょう」


「やったぁ!」


「メイドさん?あなたは一体」


「真田。真田八重」


 というと義手のメイドはリッカと向き合った。エマや倒れているいおりとは違う全体的にふっくらと柔らかな女性らしい体つきをしていた。メイドは懐からヒスイの印鑑を取り出した。「あっ魔法少女の」とリッカは言うと


「そう、あなたの先輩。いわば魔法少女のプロトタイプ。いつもは獣人と人間の関わり合いを助ける役目をしています」


八重はエマに近づくと、


「さっきは子供たちからうちの住人を救っていただきありがとう。感謝します」


「ああ、やっぱり」


「何?何の話」


「あなたには関係ないわ!」


「え~友達じゃないですか!」


「誰と誰が!」


「ええっ!」


「冗談よ」


「やったぁ!」

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