機械的な手記1
新しいお話です。カオスワールドも魔法少女も全然まとまってないのに、何を書いてんだ?オレ…。
「ーーーーー君は、タイムジャンパー、俗に言う、時間漂流者、またはタイムストリッパーと呼ばれる者と会った事があるかね?ーーーーーーそうか、いや、私もそこまでではないよ。だが、彼らと同じ存在でないものとしては、おそらく最も会ったことのある部類であろうがね。まあ、これでも彼らについてはそれなりに語れるつもりだ、君の疑問について、答えられると思う。ーーーーそうだな、まずは、彼…私の友人のタイムジャンパーがどんな存在かというところから始めるとしようか。ベァトリーチェ!お茶と菓子を持ってきてくれたまえ、話が長くなりそうなのでな。ーーーーーーーー私が初めて彼と会ったのは、今から五百年程も昔の事だ。当時は私も若くてね、様々な友人と語りあったものだよ、拳でね。…まあ、そんな話はどうでもいい。彼か?ああ、強かったよ、当時の私は血気盛んだったからね、苦戦したよ、もっとも勝ったがね。なんの対策もしていない人間が、吸血鬼に勝てるはずもない。ーーーーーー彼は、私の友人となった。彼の存在をありがたく思ったのは、それから三百年程たって、孤独にあきあきしてきた頃だ。私の人間観察という趣味は、彼に対する興味が与えたものだからな、もちろん、彼には感謝しているよ。………彼は、少々特殊なタイプのタイムジャンパーでね、自分が生まれた前の時間になら、平行世界にだって跳べるが、自分が生まれた後は駄目だというんだ。面白いだろう?まあ、幸いにも、私が今存在している世界は、彼が元いた世界だったようだがね、少なくとも、同じ系列である事は確かだよ。ーーーー話を変えよう。普通、タイムジャンパーとは、時を超えても自分にその負荷がかからないように……つまりは、時を超えたぶん一気に歳をとらないように、『時間固定法』をその身に宿している。生まれつきにね。タイムジャンパーとなる素質を持った人間は老化が遅いのだが、これは時間固定法を潜在的にその身に保持しているからだ。もっとも時間固定法を生まれつき宿していなくとも、タイムジャンパーになってしまう者もいる。そのような者は自己でコントロールできるタイプならばいいが、問題なのは勝手に跳んでしまうタイプだ。一気に百年跳ぶ事もあるから、人間しかならないタイムジャンパーでは、すぐに寿命が尽きてしまうだろう。まあ、たいていは自分で自分に時間固定法をかけてしまうのが殆どなのだが。ーーーーーしかし、ここで私が疑問に思った事がある。タイムジャンパーは基本、自分と同じ時間軸には存在できない。つまり、自分の元いた時代には帰れないのだがね、私は考えた。もしかして、彼ら…タイムジャンパーは、軽い世界間移動をしているのではないかとね。なぜそう思うのか?それは、彼らの事を記したものが、無くなっていくからだよ。彼は恋人の写真を大事に持っていたが、その写真からは私が初めて会った時には恋人と共に写っていた彼の姿が、次に会う時にはいなくなっていたのだ、当人が持っているのにもかかわらずだ。ーーー本人が持っている、観測しているというのに、写真からその存在を消す事ができる力を、私は『世界の強制力』以外に知らない。ーーーーそれに、だ。タイムジャンパーは『未来』の事を『過去』として知ることができるわけだが、それはなぜだ?それに、タイムジャンパーが歴史を変えた時、選ばれなかった方の歴史はどうなる?つまりは、だ。タイムジャンパーが歴史を変えた時、平行世界が生まれる。そしてタイムジャンパーはその分岐した歴史のうち、自身が選んだ可能性の方に行くというわけだ。彼は時間を跳ぶ時、視界が歪む感覚ような感覚があると言っていたが、それはおそらく世界を跳ぶときの感覚だろう。彼らが世界ではなく時間を超えたと思っているのは、自身が選んだ可能性でできた世界にしか行けないからだ。元の時間に帰れないのではなく、元の世界に帰れないだけということだね。少なくとも私はそう思う。ーーーー私がこんな考えを自身たっぷりに言っているのは、彼も同じ考えだったからだよ。彼は過去限定で他の世界に行けたからね、それでタイムジャンパーの秘密に気がつけたのだろうさ。ーーーー前置きがすっかりと長くなってしまって悪いな、私は話が長い方でね。さて、本題だ。タイムジャンパーが無事時間を超えることができるのは、時間固定法による恩恵を受けているからだという話は、既にしたね?しかし、この時間固定法が彼らを元の世界に戻れなくしているのだよ。まあ、こればっかりはさすがの私でも、誰がなんのためにやったとか、肝心なところは一切わからんのだがね。ーーーー彼は、この時間固定法のかかり方が不安定だったから、過去の時間軸限定で全く別の可能性の世界に跳べれたのだが、もし、もしもだ、全く別の世界に自由自在に跳べる者がいたとしたら?いや、本人の意思で跳ぶ先が指定できないとしても………世界による制限なしで、跳ぶことができる者がいたとしたら?………それは、とても素敵で、同時にとても恐ろしい事だとは思わないかい?なあ、ーーーーーーーー」
〈機械的な手記より〉
いうまでもなく、機械的な手記は私オリジナルです。