世界
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走った。
ただひたすらに、走った。
逃げて。
逃げて。
逃げて。
たどり着いたのはとても綺麗な花園だった。
嗚呼、どうして世界はこんなにも美しく、残酷なのだろうか。
頬を、涙が伝って地におちた。
母親同士の仲が良い。
それで私と彼は婚約する事となった。
彼の心情などわからないが、きっと嫌だったのだと思う。
私には優しい言葉などかけてくれはしなかった。
10歳になって、私も彼も王立養成学校へ通うことになった。
私は魔法科で、彼は騎士科。
彼はもちろん、私も彼の事など好いてはいなかった。
だから早いうちに婚約破棄をする為に私はそこで努力した。
幸い私は魔法の才能に恵まれていて。
他国のやんごとなきお方から勧誘を受けたので、それを理由に婚約破棄をしようとした。
それなのに。
彼の隣に立つ彼女が、私を悪に仕立て上げた。
それを彼が信じ、彼の取り巻きが信じて。
集団で暴力を振るわれそうになったのを必死で逃げてきた。
これが夢なら良かったのに。
醒めない夢などないのに。
これは現実で。
嗚呼、何故。
私が一体何をしたというのだろうか。
何もしていないのに。
私は、何もしていないのに…。
母に宛てた婚約破棄を頼んだ手紙を抱き締める。
これだけは、これだけは。
私の真実が書いてあるこれだけは。
どうか、どうか母に。
母の元に、届いて欲しいのです。
どうか。
彼女の遺体は無残な姿で見つかった。
彼女の母は憤った。
彼の母は彼が、彼らが犯した罪に涙した。
彼は自分の罪に呆然とした。
彼を手に入れたと思った彼女は捨てられた。
取り巻きたちは彼らに責任を押し付けた。
嗚呼、この世界はこんなにも淀んでいたのだ。