第7話 魔王様との出会い
ルヴァイス視点です
皆さま、始めまして。魔王様の忠実な臣下、もとい下僕のルヴァイスと申します。正式名称はもっと長いのですが、魔王様が直々に愛称を付けてくださいました。ですが、憎きことに私以外の三人も愛称を付けておられました。
私含め、その三人は四天王と呼ばれております。誰もかれも曲者なのです。
魔人の長にして宰相である私、風魔の長にして外交官であるシェノウ、水魔の長にして魔具研究所所長であるファティマ、地魔の長にして将軍であるゼクス。
魔王様の側近で実質、魔王様に次ぐ力を持っております。とは言っても魔王様と私たちの差ははるかに開いておりますが。
魔王様は美しく、優しく、礼儀正しく、賢い、そして魔族一、いえこの世界一強い魔力をお持ちでいらしゃいます。一日では語りつくせないほど素晴らしいお方です。
私が魔王様と初めてお会いしたのは、今から58年ほど前のことです。
当時の魔族たちは荒れに荒れていました。人間に対する殺戮、魔族同士の喰らい合い、どこにいても血の匂いが漂っていた状態でした。長として注意しようにも理性のないものに何を言っても意味を成しませんでした。かく言う私も長きにわたる飢えにこの身を焦がす日々でした。
そんな時、私たち長に『王の啓示』が下されました。突然の頭痛と、突如目に飛び込んできた知らない風景に、内心とても焦っておりました。近くには同じように現れたと思われる三人の長達もいました。
知らない場所なのに何故か懐かしく、自然と跪きたくなるほどの神々しさがありました。
記憶になくても、本能がこの場所を知っているようです。
「「「「『王の揺り籠』」」」」
全員がこの場所の名を無意識に呟きました。
その言葉を待っていたかのように、私たちの目の前にある石造りの祭壇の上に、闇よりも尚深く、黒い球体が姿を見せました。それは徐々に人の形を成していき、一人の少女、ではなく幼女と言っていいほどの幼い子供が現れました。
月明かりに照らされて、その情景がよく目に焼き付けられました。
普段本心を見せないようにしている私たちはこれでもか、と言うくらいに目を見開き驚きました。
魔族は総じて美しい容姿をしています。上位になるにつれ、その美しさに磨きがかかってくる傾向にあります。その子供はそんな魔族の中でも飛び抜けていると断言できるほどの美貌でした。
髪は先程の球体のような漆黒の髪。月明かりで艶めいていました。
ですが、私たちが驚いたのはそれではありません。
溢れんばかりの、純粋でいて濃密な魔力…。
歴代最強の長だと言われてきた私たちなど、ちっぽけな魔族に過ぎないのだと言外に告げられた気分でした。
そして気付きました。今までの飢えが幻覚だったかのように消え去り、心と体が満たされていることに。
私たちは思いました。
この方が待ち望んだ魔王様なのだと。
私たち魔族を救って下さるお方なのだと。
歓喜で震えが止まりませんでした。
もう1話くらい続きます