第11話 問題浮上
たまに出没…
今までの魔物よりも大きな反応が一つ。徐々にこちらに距離を詰めてくる。
これは完全に、獲物認定されてるね…。さてさて、何が来るかな?
木々の影から飛び出してきたのは、目を赤く、爛々と光らせた四つ足の獣型。前足が異常に発達した、生き物として歪な姿。長く、鋭い爪と真っ黒な牙に魔力が集中している。あれが、最大の攻撃手段だろう。おそらく放出系の魔法を使えない個体だ。それだけは救いだろうか。身体から漏れ出している瘴気は、今までの魔物より多く禍々しいが、力を制限している状態でも問題はない…はず。
「B級のアズィーラかっ…。」
B級…?アズィーラ…?
ふと、疑問が頭をよぎったが、今はそれどころではない。後回しだ。
「来ます。」
声を発すると同時に、魔物が飛びかかってきた。一瞬で距離を詰められるが、ブルジスもロウィンもなんとか動きを捉えているようで、剣で攻撃を受け流した。
絶え間なく牙と爪で攻撃を仕掛けてくるため、3人で対応していても、隙を見つけられないどころか疲労が溜まるばかり。
グルルルゥゥーーー
魔物の方も相当苛立っているのか低く唸り声を上げる。
「ちょっ…マジかよ…。」
「ちっ…。まさかB級ではなく、A級だったとはな…。」
おや、まぁ…。
唸り声を上げた魔物は、体をさらに肥大化させ、それ以上に瘴気を溢れさせた。魔物の足下のみならず、周辺の地面や草木が瘴気によって、黒く染まっていく。
どこからこんなにも瘴気を集めたんだか…。呆れを通り越して、もう笑いそうになる。
まぁ、笑わないんだけどね!変な目で見られるから!
このまま時間かけても瘴気が広がるだけだし、あの2人の実力では対応できないから、そろそろ終わらせよう。
一気に加速すると、正面から魔物に突っ込んだ。
「おいっ…!」
後ろで何か言ったようだが、無詠唱で浄化の魔法を纏わせながら、気にせず剣を振るう。下から上へ、首を狙い一閃。だが、魔物は後ろへ下がったため首元を掠めるだけに留まった。
予想より少し速いか。いや、本能的に避けただけかな。
「なら、もう少し速く…だよね。」
先程よりも強く踏み込むと、一瞬にして魔物が目の前に現れる。掠めた傷跡に寸分違わず、剣を差し込む。確かな手応えに一度剣を引くと、さらに切断するように剣を振るった。風を裂き魔物の爪が迫るが、爪が身体に触れる直前で、魔物の生命が尽きた。落ちる首と、一拍後に音を立てながら倒れる魔物を横目に、剣を鞘に収めた。空気を伝い、背後の緊張が緩むのを感じた。
後ろを振り返ると、呆然とした顔のブルジスとロウィンの二人。商人たちは感心した目でこちらを見ていた。
さて、なんて説明しようか。彼らとは長い付き合いになりそうな予感がするし、今の友好な関係を崩したくないんだよね。
頭の中で何パターンも考えを巡らせながら、のんびりと彼らに近づいた。




