*2*君と出会う
僕は予定していた海に行くため、朝からバタバタと動き回って支度をしていた。泳ぐわけでもないから水着はいらないけど、綺麗な海を撮りたいからカメラを持っていく。そういえば、田端君が言っていた女の子会えるかな。聞いた話によると、その子も僕が行く海によく行くらしい。これは会えるチャンスかもしれないな。期待を膨らませ、僕は車を走らせた。
40分ぐらいかけて、着いたこの海はとても綺麗な海だ。この綺麗さに僕以外にもたくさんの人が来ていて、泳いだり眺めたりしている。僕は特等席に荷物を置き、とっさにカメラを構える。何枚撮ったかわからないくらいここに来ているから馴染みの人もいる。
「あ、佐伯くん、また来てたのか。元気にしていたか?」
「はい。元気にしていましたよ。仕事が休みじゃないとこれないですから」
知り合いのおじさんと話してる最中、ふと横を見ると華奢な女の子が海を眺めていた。なんだかさびしそうな顔をしている。何かあったのかな?僕はおじさんに、では、またと挨拶して、彼女のほうに歩いていった。
彼女は僕に気づいたのか、目を丸くしてこっちを見た。あ、絶対警戒されるなと思っていたら、彼女から僕に話しかけてきた。
「座ります?」
「あ、いいの?」
「どうぞ」
僕は隣に座った。初対面なのに、人懐っこい子だな。
「海好きなの?」
「海は好きですよー。綺麗だし。あなたも好きなの?」
「うん。僕も見るの好きだな。あ、そういえば僕の卒業生がね、友達に海好きな子がいるって言ってたな」
「へえ、その子も好きなんだね。きっと」
僕らはさっき会ったばかりなのに、すぐ仲良くなった。
「ねえ、何してる人?」
「僕?教師だよ」
彼女はすごく驚いて、笑った。まあ、見えないよね。僕、童顔だし、背も低い。
「えー!?笑見えない!なんの科目?」
「知りたい?」
うんと興味津々に聞いてくる。でも、なんだか意地悪したくなり、教えないと言った。
「ケチ!」
「そのうちね、君は何してる人?」
「私はねー、バイトしてる二十歳!あ、見えない?」
「意外だった。もっと年下かなって思ってた」
僕たちは他愛のない話をずっとして、そろそろ帰ると彼女が言ったから分かったと言い、お互いに変える方向を向くと、あ、名前!と言ってこっちにきた彼女。
「名前、聞いてない!教えてよ」
「佐伯祐輔だよ。君は?」
「私は中谷莉緒」
「よろしく、でも会う機会なくない?」
「あるよー!ここがあるじゃん!」
「そうだけどさー」
莉緒ちゃんはにこっとして、あ、車持ってんじゃん!まだ一緒にいようよーと誘った。でも、帰るって言ってなかったっけ?
「帰るんじゃないの?」
「気が変わったの!祐輔、早く!」
なんかいつの間にか呼び捨てだし、いいけど。変わった子だなと感じた。