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海の声  作者: まどか
*第一章*
1/2

*1*卒業生

 夏休みで生徒たちは部活や夏期講習に来ている。僕は部活の顧問は特に行っていないため、夏期講習のみこの夏も参加していた。次の時間は空いているため、別の仕事をしようと職員室に戻った。席につこうとすると後輩でもあり、親友の直人先生に呼ばれた。

「祐輔先生、今お時間よろしいです?」

「うん。大丈夫。どうかした?」

「お客様です。田端陵さんという方で」

田端陵?もしかして、卒業生の?

「わかった。今行くよ」

僕は立ち上がり、田端くんのいるところに向かった。


 田端くんは僕を見て、会釈し、にこっと笑った。

「お久しぶりです。田端陵です。覚えていますか?」

「久しぶり。もちろん、あの時はまだ新人で・・・笑そうだ、なんでわざわざ学校に?」

「それはですね・・・・」

話を聞くと彼は今、大学を卒業し、高校時代から好きだった本をきっかけに本屋で正社員で働いているらしい。仕事場はこの近所だったため、寄ったのだとか。

「まじめにやっているんだね」

「はい、ではまた寄らせてもらいます」

「うん。またね」

田端くんは失礼しますと言って学校を後にした。

彼はあの頃と変わっていて、背も高くなり大人になったなと感じた。




その夜家につくと、昼間の田端くんからメールが入っていた。近いうちに卒業生、先生みんなで食事に行こうというもので、僕は了解、楽しみにしてると返信した。

みんな元気にしてるかなー?と独り言をぼやき、ソファーに座り、コーヒーを飲む。


 僕はあのころ、まだ新任で何もできない副担任だった。でも生徒たちからは声をかけてもらったり、親しみをこめてあだ名も付けてくれた。あだ名は言いたくないけど。田端くんも僕のクラスの一人で友達思いのやさしい印象が今も残っている。



 食事会は土曜の夜に行われることになった。卒業生たちの同窓会も兼ねているらしい。あのときのクラスの生徒や、関わりのある先生方が揃っている。直人と一緒に僕も出席した。

「いや、祐輔さん、なんかいいですねー。こういうの」

「そうだね。みんな懐かしいなー」

「俺、知らない子だらけだけど」

「まあ、そうだよね」

そう話していると、幹事の子が音頭をとって、始まった。

「先生、今日はありがとうございます。直人先生も楽しんでください」

「もちろん」


 周りの生徒も他の先生と話してる中、僕らは三人で喋っていた。

「あ、田端くんは彼女いるの?」

「彼女はいませんよ」

「あのころは結構モテてたじゃん」

「いやいや・・・」

テレながらお酒を飲む、田端くん。

「気になってる子は?」

直人は興味津々で聞いている。お酒のせいで、上がってるな。確実に。

すると、田端くんの携帯が光った。

「誰?」

「友達です」

「どんな子?」

「この子は海が好きなんですよ。僕の働いている本屋に来て、海が好きだから関係のある本ない?って聞いてきたのが出会いでした。それからもよく来てくれて、仲良くなったんですよ」

「海すきなんだー!祐輔さんと気が合いそうですね!」

海好きかー。これは合いそうだ。仲良くなってみたいなと僕は思った。


 数時間後、お開きになり、僕は酔った直人を連れ家に向かった。田端くんが言っていた海好きの女の子少し気になる。俺は見てるほうが好きなタイプだけど、その子はどっちなんだろう。

考えてるうちにまた行きたくなった僕は来週の休みに行くことに決めた。

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